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希望の先に

年末に優輝を乾家に迎え入れてから、小学校入学までの3ヶ月はあっという間であった。


優輝の負担にならないように、正月の親戚の集まりに行くのは遠慮をしていたが、数人は挨拶のために顔を出してくれた。


十三が驚いたのは、施設まで優輝の面会に行っていたことに苦言を呈した従兄弟の雅孝が「あの時は悪かった」と謝罪した事である。当時は本人なりに心配をしたつもりで発言をしたつもりだったが、結果としてきつい言い方になってしまった事を気にしていたらしい。


「いいよ、気にしなくても。言っちゃなんだが、むしろあれで覚悟が決まったからよ」


十三がそう答えると、雅孝は安心した顔で康平と優輝のお年玉を渡しで帰っていった。金額は幼稚園児の相場より多めだった。



節分の日には、十三の父、辰馬が赤鬼の顔の被り物をして2人の前に現れた。康平は正体を見破っていて笑いながらマメをぶつけていたが、辰馬の大袈裟な動きに優輝は本気で怖がって「でえぇ〜!!」と泣いてしまい、辰馬は妻のみどりに「いい加減にせんかいっ!!」と、康平のプラスチックのバットで頭を叩かれていた。「ギャハハハ、じいちゃん叩かれてやんのー!」と、康平は辰馬を指差し、大きな声で笑っていた。


「あれじゃどっちが鬼か分からんな」と、十三はみどりの巻き添えを喰らわないよう、珠紀に小声で呟いた。珠紀はクスクスと笑っていた。



--そして、3月1日。


「...はい。そしたら、これで手続きは全て完了です。今日から、優輝くんは正式に乾さんの家族となります。お疲れ様でした。」


担当者のこの言葉で、役所や家庭裁判所養子縁組の手続きは全て完了した。


十三と珠紀は、安堵の表情を浮かべた。


「これで・・・優輝も正式にうちの一員になるな」


「.・・・そうね」


優輝と初めて出会い、養子で迎え入れると決意してから、随分と長い時間がかかっていた。

その間、優輝の産みの母親は相変わらず行方知れずで、警察や親戚、当然十三達も居場所を掴めずにいた。


「あの子の母親、もし連絡がついたらついたで、今後のことはまた考えれるんだがな・・・それまでは俺たちがしっかり優輝を見てやらないとな」


「当たり前よ。ここまで来たら・・・もう赤の他人でもなんでもないんだから」


「そうだな・・・さて。明日にでも昌次郎の墓に報告したやらないとな」


そう言いながら2人は家路を辿る。満州帰りの十三の祖父、昌次郎は前年に肺炎でこの世を去っていた。そして桜並木はまだ、つぼみの一つも開かずに、開花の時を静かに待っていた。


これから、新しい家族と共にどのような歴史を作っていくのか。先の事は誰にも一つも分からないが、後悔はなかった。ただ一心に、希望の花びらが咲くように願うばかりだった。

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