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第8話 おい坊っちゃま、念願のご対面のお時間ですよ。

キャロ前回のあらすじ

キャロおばはんがいい人


「おい坊っちゃま、広場が見えてきましたよ」


「はあ……いよいよカヘナ先生に会えるんだ……ドキドキするなぁ……」


「肺が耳から飛び出そうになってますね」


「臓器も出口も違う!! い、言っとくけどイキシア! 先生の前で変なこと言ったら許さないからね!」


「やれやれ分かってますよ……イーヒッヒッヒッヒッ……」


「毒スープを作る魔女じゃないか……」


「そんな酷いこと言わないでくださいよ……イーヒッヒッヒッヒッ……ワタシは毒スープを作る魔女だよォ……」


「毒スープを作る魔女じゃないかっ!! 自分でそうやって紹介してるんだから!!」


「それより、そんなに大きな声を出していいんですか? さっきからカヘナ先生がこちらをジッと見てますけど」


「えっ?」


「君、私に何か用があるのかい?」


「あっ、えっ、あのっ、すみません! ボク、えっと……先生の作品が昔から大好きで、そのことを伝えたいということで!! えっと、それで、先生がこの街にいらっしゃるということを聞いたことで、えっとえっと……」


「ははっ、落ち着きたまえ。動揺しすぎだよ」


「そうだそうだー、ことこと言いすぎだぞー、煮込まれてんのかー」


「で、でも……子どもの頃から愛読している作品の作者の方が目の前にいるなんて……うっ、夢みたいで……ぐすん……」


「おやおや、ファンを一人泣かせてしまったよ。私も罪な男だな。はっはっは」


「メソメソするな坊っちゃまー、軽蔑しちゃうぞー、今なら特別サービスで幻滅もお付けしちゃうぞー」


「ひぐっ……それでボク、先生の作品、全部大切に保管してるんです……絶対に汚しちゃいけないって……」


「それは有難い。いやはや、君みたいに私の作品を宝物のように扱ってくれる子に出会えて本当に良かった。誇りに思うよ」


「まあ最新刊はブッサイクなナンパ大男の後頭部に投げつけられた後に地面に落ちて『ホコリ』まみれですがねオピョピョピョピョ」


「イキシアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」


「なんですか、せっかく一対一で話すの緊張するかと思って助け難破船を出したのに」


「助け船が難破してるっ!! じゃあ助けが必要なの船の方じゃないか!!」


「はっはっは……面白い彼女さんだね」


「ちがっ、イキシアは彼女じゃないです! ボクにはちゃんと好きな人がいますから! ねっ、イキシア?」


「……そ、そうですよ、この勘違い文豪め。やーいやーいお前の母ちゃんの息子、勘違い文豪~」


「や、やめなってばイキシア!! それもうターゲットが本人になってるから!!」


「おや、そうなのかい? 私にはとても良き恋仲に見えたがね。まあ第三者が口を出すのも野暮というものか……ほら、サインだ。これからも応援よろしく頼むよ」


「あっ、ありがとうございます! 失礼します、カヘナ先生! ほらイキシア、行くよ!」


「……はい」


「いやあ、カヘナ先生からサイン貰っちゃったよ! 今日からこれを枕元に置いて寝よう! 教えてくれてありがとねイキシア! ポニー(チョコ)にもよろしく言っておい」


「ねえ坊っちゃま」


「ど、どしたのイキシア、そんな真面目な顔で……。いつもみたいに『おい』じゃないし……」


「坊っちゃまは、私のことが好きですか」


「え? う……うん、大好きだよ」


「そうですか……私に対しては『大好き」と言えてしまうんですね。『シャイで軟弱な』坊っちゃまが」


「イキシア……?」


「私には言えませんよ……そんな言葉、坊っちゃまにだけは、絶対に」


「えと、それはどういう……」


「失礼、少し道を開けてくださるかしら」


「あっ、ごめんなさ…………えっ!?」


「坊っちゃま……?」


「あら? どうしましたの? わたくしの顔に、何か付いていますの?」


「あ……リ、リンセ……姫……」


「リンセ姫……そうですか、彼女が坊っちゃまの……」


「どこかでお会いしましたかしら? すみません、覚えがありませんので……では」


「う……ぐっ……」


「……坊っちゃま、今こそ想いを伝える時です」


「えっ……イキシア、でも……」


「そもそも坊っちゃまを今より立派な人間にするということ自体、おかしな話だったのです。だって坊っちゃまは最初から、とっても強くてとっても優しくて……最高に素晴らしい御方だったのですから。坊っちゃまの姿を誰よりも近くで見てきた私が言うのですから、間違いありません」


「……イキシア……」


「馬になんて乗れなくていい。大好きな小説家の前で号泣してしまってもいい。不器用だって、涙脆くたって、シャイで軟弱だっていいんです。それ以上に坊っちゃまには素敵な所がたくさんあります。坊っちゃま以上に魅力的な人間など、この世界のどこにも存在しません。坊っちゃまは私の自慢の坊っちゃまです。坊っちゃまにお仕えできて……イキシアは幸せです」


「…………うん、ありがとう。行ってくるよ……イキシア」


「お酒には朝まで付き合ってあげますよ。成功しても失敗してもね」


「あはは、イキシアとお酒なんて飲んだことないから楽しみだな……できれば、一緒に笑って飲みたいね!」


「っ……ええ……そう、ですね」


「リ……リンセ姫!」


「はい? あの、まだわたくしに何か……」


「初めてアナタを見たとき、ボクは言葉を失いました」


「え?」


「アナタの美しさに、一瞬で心を奪われました」


「あ、あの……それって……」



「ボクはアナタが好きです──リンセ姫」






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