第7話 おい坊っちゃま、占いのお時間ですよ。
前回のあらすじ
ブス巨木の泣き方がかわいかったですね
「ねえイキシア」
「…………ふぅ……」
「イキシア?」
「あっ、はい。どうしましたか坊っちゃま」
「元気ないね……大丈夫?」
「な……何を言ってるんですか。イキシアちゃんは元気満点ですよ。もうムキムキですよ」
「途方もなく華奢だけど……まあ元気ならいいんだ、ごめんね」
「というわけで、おい坊っちゃま」
「ど、どしたのイキシア?」
「先ほどチョコから聞いたのですが、坊っちゃまが大好きな小説の作者の方が、今日この街に来られるそうですよ」
「うええっ!? そ、それ本当なのイキシア!?」
「はい、間違いありません。今回の新刊は記念すべき10巻目ということで、色々な場所を訪れて読者の方々と交流を深める催しをしているとお話が」
「それで今日、この街に来るってこと!? ボクの大好きなカヘナ先生が!?」
「言っておきますが『催す』といっても下品な方ではなく」
「分かってるよ!! 色々な街を巡って『私には尿意や便意があります!』って言いまくってる文豪とかイヤすぎるだろ! ただの権威ある変態じゃないか!!」
「で、どうします? 行くのか、行かないのか……それとも行かないのか」
「行くよ!! なんで絶対に後悔する方の選択肢が若干優勢なんだよ!! これだけテンション上がってるんだから行く以外ないだろ!」
「では3日程で準備いたしますので」
「いなくなっちゃうよ!! 準備してる間に先生が別の街に尿意や便意を伝えに行っちゃうじゃないか…………伝えに行かないよ!! キミのせいで先生にご対面する前に変なイメージついちゃったよ最悪だ……」
「では準備も終わりましたので出発しますか」
「チョコから聞いたの今のニュースッ!?」
「おわっ、時間差ツッコミ……ええ、この前フラッと遊びに行った時、とんでもなく仲良くなりましてね。今では唯ポニ無二の親友です」
「唯一無二みたいに!! 絶対に『唯一ポニ』の方が良いだろ!!」
「先生がいらっしゃる場所はこの先の広場みたいですよ」
「この前『トマトおっさんのトマトサーカス』がやってた所だね! ああ、早く会いたくてウズウズするよ……握手してもらおっかなぁ……」
「その前にあそこで『キャロットおばはんのキャロット占い』やってるので行ってみましょう」
「だからウズウズしてる相手に野菜をモチーフにした中年達を紹介するのやめてよ!!」
「キャロ今日はどうしたんだい? キャロお前達の相性でも占ってやろうかねぇ……? キャロイーヒッヒッヒッヒ……」
「語尾じゃなくて語頭に『キャロ』ってつけてる!! しかもすごい凶悪そうじゃないかキャロットおばはん!!」
「相性……は、大丈夫です。私の今日の運勢でも占ってください」
「キャロ分かったよ。キャロこの水晶で占ってやる。キエエエエエエエイキャロ!!」
「あっ掛け声の時はキャロが語尾になるんだ。あとキャロット占いなのにキャロット使わないんだ。果てしなくどうでもいいけど」
「……キャロ分かったよ。キャロそっちのメイド服を着たお前」
「呼ばれてますよ坊っちゃま」
「キミだろどう考えても」
「キャロお前、好きな相手がいるね?」
「…………っ!!」
「イキシアの、好きな人……」
「キャロさっさと気持ちを伝えた方がいい。キャロそうじゃないと大変なことになるよ」
「っ……も、もう結構です、ありがとうございました」
「まっ、待ってよイキシア!! あっ、キャロットおばはん! これお金!」
「キャロそんなもんいらないよ。キャロ今のは占いじゃない」
「えっ……それってどういう……」
「キャロお前達がここに来たのは閉店の5秒前。キャロあのメイドが今日の運勢を占ってほしいと言ったときには営業時間は終わってたのさ。キャロだからさっきあたしがしたのは占いじゃなくって、ただのババアからのアドバイスさね。キャロそれより早く彼女を追い掛けてあげな。キャロかわいいお坊っちゃん」
「キャ、キャロットおばはん……ありがとう!」
「……キャロふん。キャロ客から金を取り損ねるなんざ、あたしもヤキが回ったもんだね。キャロただあの二人……このままだと……」
「失礼、占いをお願いできるかしら」
「キャロすまないね。キャロ今の客で今日は本当に店じま……キャロキャロッ!? あ、あんたは……!!」
「そう仰らず、少しだけでいいのでぜひ占ってくださいまし。わたくし……リンセの恋愛運について」