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第6話 おい坊っちゃま、ショッピングのお時間ですよ。

前回のあらすじ

はんばーぐにされなくてよかったね、イキシアちゃん!



「おい坊っちゃ」


「ねえイキシア、これから街に買い物に行くんだけど付き合ってくれない?」


「にゃっ!? お決まりのセリフを遮られたかと思えば、これは完全にデートのお誘……」


「好きな小説の新刊が出たんだよ! 早く読みたくて仕方ないんだ!」


「あっ、はい。いつもの虫モードですか」


「ちゃんと『本の虫』って言ってよ!!『虫モード』だけだといきなり羽が生えたり足が増えたりするみたいじゃないか!」


「分かりましたよ……支度するので5時間くらい待っててください」


「お店が閉まる!! たかだか本一冊買うのに何をそんなに準備することがあるん」


「用意できましたよ、行きましょう」


「5秒!! 突っ込んでる間に5時間経ったのかと思ったじゃないかビックリしたなぁ!!」


「……さて、本屋さんはあちらですか……しかし、毎度の事ながら本当に楽しみにしてますよね」


「子どもの頃から読み続けてる大好きな小説だからね。全巻、折り目の一つもつかないように大切に保管してるんだ! ああ、早く新刊を手に取りたくてウズウズするよ!」


「あそこの広場で『トマトおっさんのトマトサーカス』やってますよ。見ていきましょう」


「ウズウズしてる相手に変なの進めないで!! どんな演目やるにしてもトマトは不向きだろサーカスには!」


「トマト乗りとかならいけるのでは」


「一番ミスマッチ!! トマトおっさんがいくら小柄だったとしても一瞬でグシャリだよ……ってイキシア、どうしたの?」


「じー……」


「なにやらイキシアがサーカスの隣のクレープ屋を凝視している……食べたいの?」


「い、いらないです」


「そっか、じゃあ行こうか」


「この外道!!」


「理不尽ッ!! そこは普通、キミがもう一度『じー』ってクレープを見続けて、それを見たボクが『やれやれ仕方ないな』って微笑みながらサイフを取り出す流れだろ!!」


「どうしてそんな面倒なことをする必要が?」


「そういうものなの! 面倒なのがイヤなら最初から『食べたい』って言えば良いだろもうっ!」


「私、このチョコ味のが食べたいです。ポニー(チョコ)への追悼の意を込めて」


「死んでないよ!! あと一回しか会ってないのに地味にずっと名前出てくるなチョコ!! はぁ……はい、どうぞ」


「あむあむ……うまうま……」


「もうイキシア……ほっぺにチョコついてるよ、ほら」


「ぅぐっ!? げほっごほっ……!! シ、シャイで奥手の癖になんで私には平気でそういうこと……」


「あっ、本屋さん見えてきた! 早く入ろう!」


「いや私クレープ食べてるんで……しかし売ってる本をチョコまみれにしても良いならいざ参らん」


「出禁まっしぐら!!『いざ参らん』じゃないよ!! えっと……じゃあササッと買ってくるから、イキシアはここで待ってて!」


「ご武運を~。ふぅ……もぐもぐうまうま……まったく、坊っちゃまの『虫モード』には参りますね」


「よぉそこの可愛い姉ちゃん、一人かい? オレと一緒にお茶でもどうよ?」


「げっ……イシキアちゃん、なにやら面倒な大男に絡まれてしまいました。いったいその醜い顔のどこに勝算を見出だして、この私に絡んできたのでしょうか……次にこのブス巨木が話し掛けるのは……あなたかもしれません……」


「なに怪談話みてえに人の顔ディスりまくってんだテメエ!!『ブス巨木』ってなんだよせめて人間呼ばわりしてくれや頼むから!!」


「街中でメイドの格好してる女が一人なワケないでしょう。クレープ食べてる時に汚い顔を近付けないでくださいよ落ちたクレープ」


「誰が落ちたクレープだゴラァ!! そこまでグシャグシャではないと信じたい!! ああもう、いいから早く行くぞ!」


「痛っ……ちょっと、腕引っ張らないでください……」


「うるせえな、テメエみたいな生意気な女の相手してやるだけでもありがたく思いやがグヴァァァァァァァ後頭部に何かがッッッ!!!」


「そこでなにやってるんだ、お前」


「ぼ……坊っちゃま……」


「てっ、てめえ小僧この野郎!! なにオレの頭に分厚い小説投げつけてくれてんだゴラァァァ!! あっこの作品知ってる。新刊出たんだ」


「そこでなにやってるんだって聞いてんだよ……クソ男が」


「あぁ? なんだテメエ? あんまりオレの事ナメてたらそのカッコいいお顔、ボコボコにしちゃボブヮアアアアアアアアアアアまさかオレのカッコよくない顔の方がボコボコにされるとは思わなんだ!!」


「その汚い手でイキシアに触るな。ボクの目の届く範囲から……今すぐ消え失せろ!!」


「ぴっ…………ぴいいいいいいいいぃぃぃこわいよおおおおおおおぉぉぉぉぉとても!!!」


「坊っちゃま……」


「……ごめんイキシア。ボクが小説の事ばかり考えていたせいで、キミを危険な目に遭わせてしまった。本当にごめん」


「いえ……それより本が……」


「いいよ、少し折れ曲がったくらい。こうなったのはボクの責任なんだから」


「…………ありがとうございます……坊っちゃま」


「うん、そろそろ帰ろうか」


「あの……坊っちゃま」


「ん、どうしたの?」


「えっと……今更ですけど、坊っちゃまはリンセ姫のことがお好き……なんですよね」


「そうだね……まだまだ彼女には不釣り合いだけどさ」


「……そうですか」


「でも、イキシアの事だって大好きだよ」


「……そう……ですか」


「イキシア……?」


「…………いえ、大丈夫。大丈夫ですよ。イキシアちゃんは元気いっぱいですから。さあ、帰る前に『トマトおっさんの卜マトサーカス』でも見ていきましょうか」


「いやまだやってたのそのサーカス!? どんだけ長いこと……って本当にトマトの上乗ってる!! しかもトマトでお手玉してる!! 何者なの、あのトマトおっさん!?」


「…………ええ、ホントですね……だぁれも見てないのに、変な事ばかり」






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