第3話 おい坊っちゃま、お見舞いのお時間ですよ。
前回のあらすじ
クタバレブルルルルルンッッッ!!
「おい坊っちゃま、てなわけで私はチョコに投げ飛ばされたせいで入院することになりましたよ。ドンドンパフパフ! あっ間違えたシクシクメソメソ……」
「とんでもない間違え方!! つられて拍手しかけちゃったじゃないか!! まあでも、上空100メートルくらい吹っ飛ばされたのに右足の骨折だけで済んだのは奇跡すぎるよ」
「しかし、わざわざ坊っちゃまにお見舞いに来ていただいて申し訳ない限りです。ドドドドド暇とはいえ」
「ドドドドド暇じゃないよ失礼な……気にしないで、元はと言えばボクが乗馬をやりたいなんて言ったせいだから。お手本見せようとしてくれてありがとうイキシア。あと、ケガさせちゃって本当にごめん」
「っ…………あー……もう…………」
「イキシア?」
「……気にしないでください、先生も全治1日と仰ってたので」
「骨が折れたのに翌日退院!? 主成分がカルシウムなのかキミの身体!?」
「毎日ジャンプ体操してるんで。努力の賜物ですよ。あらいけない、今日の分がまだでした……それピョーンピョーイタタタタッ!!」
「賜物のせいで大ダメージ受けてる!! 今日は体操おやすみして大人しくしてようよお願いだから……」
「はぁ、イタタのタ……それで、カッコ良い人間になるため、次にやることは決まったのですか?」
「うーん……乗馬はやっぱり危ないし……」
「…………あ」
「えっ、どしたのイキシア?」
「いえ、あの……」
「もしかして傷が痛むの? 先生呼ぶ?」
「えと……そのぉ……」
「イキシア、痛かったら遠慮なく言っ」
「じ、実はこれも、イキシアちゃんの計画通りなのでしたぁ~」
「…………えっ、どういうこと?」
「坊っちゃまは強さとかたくましさとか、そういった事にばかり目が行きがちみたいですが……ここは一つ、坊っちゃまの『優しさ』というものをチェックしようと思いまして」
「話が見えてこないんだけど……」
「今から入院中の私をできるだけ優しく、手厚く、温かく看病してください。イキシアちゃんの『満たされゲージ』が100になったら合格です」
「み、満たされゲージ……?」
「私が坊っちゃまの心の温かさを感じれば感じるほど増えていくゲージです。たとえばリンゴを1コ剥いてくれれば満たされゲージは10上昇しますが、反対に私を病室から突き落としてもゲージは1しか上がりません」
「なんで後者も加算されるの!? 傷害事件の被害者なのに心がほんの少し満たされてるの頭おかしすぎる!!」
「ちなみに100いかなくてもイキシアちゃんの心がある程度満たされてお腹いっぱいになったらその時点で終了です」
「ルールの糖度が高い!! 難易度設定が甘すぎてノド渇いてきたんだけど!!」
「あと病室から百回突き落としてもルール上はクリアですけど、もし途中で私が死んだらその時点で心が満たされるもクソもなくなるので、問答無用で不合格になりますからくれぐれもご注意を」
「いいよそんな切ない説明を懇切丁寧にしてくれなくたって!! 絶対やらないからそんな地道で残酷なゲージ上げ作業! そんなことするくらいなら普通にリンゴ10コ剥いてあげてクリアするから!」
「じゃあゲームスタートです。ゴホッゴホッ……あの木の枯れ葉が全て落ちたら私は死んでしまうんですね……」
「キミ骨折だろ!! しかも明日退院だろ!! 不治の病の感じ出すなよ白々しいな!」
「ああ寒い……優しさが……人肌程度に温められた優しさが欲しいですわ……チラッチラッ」
「これボク何させられてんの? はあ……まあいいや。まずは……そんなに寒いなら体温を測るために、おでこ同士を……」
「ふぇっ!?」
「どしたのイキシア? 人肌が良いって言ったから」
「いや、あの、そこまでは…………」
「動いちゃだめだよ、骨折してるんだから」
「ひゃ、ひゃいっ……あ、いえ、でも…………」
「どれどれ……」
「ぁ……ぁぅ…………」
「えっ、キミ骨折なのに何でこんなに熱」
「うぴゃああああああああハピネスの踊り食いッッッッ!!!」
『8兆』
「ぎゃあああああイキシアの頭から満たされゲージ飛び出てきた!! なんか『8兆』って書いてあるんだけど! そもそも目に見えるものなんだ満たされゲージって!」
「や……やだやだっ、もうやめて……こんな、こんなのわたし、がまんできないいいいぃぃぃぃぃ!!」
「おぎゃあああああああイキシアが病室から飛び下りたあああ!!」
「ただいま戻りました」
「と思ったらなんか光の速度で帰ってきた!! あっ……満たされゲージが………」
『8兆とんで1』
「いやぶっとびすぎだろ!! 数字もイキシアも!!」