お茶
私の大好きなおちゃ、緑茶。
はなやかないいにおいがするけど渋くて、スッキリしない割には口の中がさっぱりする。
砂糖の入った、甘いのもある。
泡立てて飲む、苦いのもある。
緑色のお茶だから、緑茶。
うす透明色でも、濃い濁った色でも、緑茶。
…緑茶、おいしい。
グビリと飲み干し、立ち上がった。
私の大好きなおちゃ、紅茶。
上品ないいにおいがするけど舌の上に残る感じで、かしこまった飲み物の割には気軽に飲める。
レモンの入った、色の薄いのもある。
牛乳を入れて飲む、しつこい味のやつもある。
茶色のお茶だけど、紅茶。
うす透明色でも、白く濁った色でも、紅茶。
…紅茶、おいしい。
ゴクリと飲み干し、立ち上がった。
私の大好きなおちゃ、お茶の間。
平凡でありきたりだけど落ち着いた雰囲気があって、たまに緊張感が走る割には後腐れがない。
年季の入った、味わい深いのもある。
きれいだけど味気ない、くつろげないやつもある。
ただの部屋だけど、お茶の間。
うすら寒くても、暑苦しくても、お茶の間。
…お茶の間、キライじゃない。
ニッコリ笑って、立ち上がった。
私の大好きなおちゃ、みさおちゃん。
たまにお線香のにおいがするけど心地のいいあたたかさで、小ぶりな割には大きな声を出せる。
はしゃぐことが多いけど、落ち込んで動かない時もある。
しおれた人間と一緒に来ることもあれば、背中にいっぱい背負ってくることもある。
おちゃだけど、飲み物じゃない。
お茶っぽい名前だけど、飲めない事もないけど、ただの人間。
…みさお茶ん、おいしいのかな。
ゴクリとのどを鳴らして、つばを飲み込んだ。
私の得意なお茶…、めちゃめちゃ。
爽快感があるけどとっ散らかって、行き当たりばったりの割にはサクッと終われる。
大騒ぎになって、我を失うことがある。
闇に紛れて、静かに破壊することもある。
ちゃは、お茶じゃない。
めちゃめちゃにするたびに、お茶を思い浮かべる。
…お茶、飲みたい。
モグモグしていたものを飲み下し、振り返った。
私のまえにいる、ちゃ…、おっちゃん。
ありふれた姿形をしているけど変なニオイがして、へらへらしている割には堂々としている。
イマイチ気に入らない、見た目の凡庸。
ぜんぜん面白くない、ありふれた展開。
ただの茶のくせに、めっぽう強い。
キモくて、憎たらしい、茶、チャ、ちゃ…。
おっちゃん、いい仕事…、するね。
バタリと地に伏し、目を……閉じた。