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第1話 ドラゴン脱走

 異世界のとある山中の浅そうな洞窟。

 その中から男の震える笑い声がこだました。


「ふっふぉふぉふぉっふぉ!出来た出来た出来た!遂に出来たぞ!実験は大成功だ!」


 声の主は初老で禿げかかった背の低い白髪頭で、紫のローブを身に纏った胡散臭い恰好をしている。


 両手には紫の靄のような揺らめきがある・・・いわゆる魔法の類だろうか?


 男の目の前にはドラゴンがうずくまっていた。

 頭は1つで、翼が付いているタイプだ。

 男の手の紫の靄みたいなものと同じものが、このドラゴンの全身をオーラのように包み込んでいる。

 ドラゴンはすやすやと機嫌よく眠っているように見えた。


「さあ、我がしもべよ。起きるのだ!」


 男が右の掌を向けると、ドラゴンの瞼が眠そうに開き、辺りをのろのろと見回して男に気付いた。

 それからおもむろに身を起こし、洞窟の低い天井に頭をぶつけた。

 その衝撃で洞窟内が揺れ、一瞬男は身を縮めたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。


「我がしもべよ。私の言う事が分かるか?」


 ドラゴンは黙って男を見つめるばかりで、言語を理解したと言う素振りは見せない。

 まだ眠たいのか目をぱちぱちさせ、鋸のような牙が生え揃った口を大きく開いて長い欠伸をした。


「なぬ・・・」


 男の笑みが焦りで引きつる。

 訴えかけるように、両手をドラゴンの前に差し出した。


「あり?手順間違えたかの?いやいや、そのような事があろう筈は無い!やい、こら!私の言葉が分かるかと聞いておるのだ!」


 するとドラゴンは、男の呼びかけに応じるようにくぐもった唸り声を上げた。

 男に笑顔が戻る。


「うんうん。こうでなくっちゃのう」


 男は満足げに頷いて手を後ろに組んで背中を反らすと、鯱張った姿勢でドラゴンを見上げながら、


「よろしい我がしもべよ。これから我が授けし無限無敵のパワーで・・・」


 ドラゴンは話を最後まで聞かずに頭からガブリを食い付くと、そのまま頭を持ち上げて、何度かの恐ろしい咀嚼音の後にかつて男だったものを飲み下した。


 その後、ドラゴンは洞窟の出口へのっしのっしと歩き出したのであった。



 続く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 科学者と共に旅立つのかと思いきや、速攻で喰われてしまったので笑いが止まりませんでした! この先、ドラゴンがどのような旅をしていくのか期待感が高まりますね! [一言] これからも頑張ってくだ…
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