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ネトゲ廃人予備軍  作者: 桃花鴇子
第2章 美しき鴇、食すは夏の果実
9/11

第9話 布教活動~夢小説を添えて~

第9話です。布教回です。

実際の主さんはこんな布教活動しているわけではないのですが、「時間さえあればこんな感じで布教したい」と言ってましたね。

 夏実が復活してから一週間。毎日ワンリスのことばかり考えてはパソコンの目の前に座りワンリスをプレイするようになった。最近は夏実ばかり操作しているけれども、たまには蒼も操作しようと思い、飽きてきたころには蒼に変えてまたpveを始める。指と脳以外動いていないからか、不思議なことに空腹を感じたことがないおかげでご飯を食べようなんて思わない。おかげさまで食費はかなり浮いたんじゃないかなと思っている。その代わり電気代はかなり増えていそうな気がするけど…親が支払ってくれるし、親には申し訳ないけれどそこには目を瞑っておこう。

 それはさておき、夏実が復活したからか各サーバー内にいる人の数がここ最近多い気がする。だからかな、最近よくいろんな人が部屋に入ってはいろんな人とダンジョン攻略していく頻度が増えたのは。もちろん、ネトゲをすることに憧れを抱いていたから、まさにネトゲをしているような感覚になれてとても嬉しく感じるし、他の人とも一緒にダンジョン攻略したくなる。

 とはいえ、やはり部屋に入ってくる人たちはみんな海外の人が多い。日本人の人なんてまったくいないんじゃないかと思うほどなんだよね。一応、ゲーム配信サイトのレビューにはいかにも廃人だと思われるような日本人プレイヤーのレビューがあるし、その人の詳細情報を見てみる限り今でもワンリスをプレイしているらしいから日本人プレイヤーは一応いるらしいんだけれど…だとしてもやはり日本人プレイヤーが少ない故だろうか、この人のような日本人プレイヤーに出会ったことが一度もないんだよね。

 やはり日本での認知度が低い故だろうか。それもそのはず、ネトゲとして存在していたワンリス自体日本に来てから大体二年という短き期間でサービス終了してしまったからなぁ。それ故にワンリスを知っている日本人もそう多くはないかもしれないな。知っていたとしても、ソシャゲ版しか知らない人が多いだろう。

 日本人プレイヤーと遊びたいし、日本人と一緒にワンリスについて語りたい…しかし日本人プレイヤーが少なく、そもそも知っている人すらいないならそれも叶わぬ夢。布教している人も少ないし、そろそろ布教活動を始めてみようかな。ネトゲの方に偏った知識になるだろうけれど、ワンリスの先駆けでもあるから問題ないだろう。

 そういえば、誰かが部屋に入ってきたときはいつも勝手ながら録画しているんだった。どうせなら動画として布教してみよう。そう思い、私はパソコンに標準ソフトとして入っていた編集ソフトを立ち上げて、録画していた動画を使い布教用動画を作り始めた。

 作る動画は簡単なもので、いわゆる紹介動画だ。他の人たちが作った紹介動画のように、好きな曲に合わせてプレイ動画を切り貼りしていくだけ。私は、蒼で操作したときのプレイ動画と夏実で操作したときのプレイ動画を交互に使っていった。録画していた動画が多かったおかげで、紹介動画はすぐに作り終えることができた。早速完成したものを、すぐに動画投稿サイトに投稿する。どうせすぐに再生回数が増えるわけではないだろうけれど、少しだけでもいろんな人に見てもらえたらいいな…

 動画だけじゃだめだ、ブログとか作ってみたりするのもいいかもしれないな。私は、無料でブログを作ることができるサイトを使って、ワンリスについて語るブログを作成することにした。と言っても、ワンリスのプレイ日記みたいなものだけどね。

 ブログに、スクショと共にプレイした感想を乗せて…あぁ、他にもワンリスの知識やキャラについてとか、操作方法とかも書いてみるか。そうすると、このスクショなどで興味もった人がもっと気になったりするだろう。最近夏実も復活したんだし、このネタを使って書くのもちょうどいい。なんか、書きたいことがたくさんあって、ごちゃごちゃするなぁ。まずは一旦、何を書こうか整理してから書こうか。毎日一回ずつの投稿がちょうどいいかな。


 布教活動用のファイルを作成して、そのファイル内に、ブログに書く予定の内容や今後作る予定の動画の内容などを書いていく。そんな中で、私はとあるファイルを見つけて手を止めた。

 私が書いた、蒼の夢小説だった。そうだ、WonderRisk Adventureにハマる前までは、蒼に恋焦がれて、自分のオリキャラと蒼との物語を妄想しては文字にして書いたんだった。改めてそのファイルを開いてみると…これまた恥ずかしい。

「ハシル? どうしたんだ。顔が赤いぞ」

「あっ、その…えっと……蒼が、私の手を握ってる、から…ちょっと……」

「っ…! す、すまない…」

 蒼が、自分のオリキャラ…名前こそ同じハシルと手を繋いでいるシーン。当然、蒼に恋愛感情を抱いている私は正気でいられるわけにはいかず…

「──っあああああああああああああああああ!!!!!! きゃあああああああああああっいやああああああああああっ!!!」

 自分が執筆した小説を読んで勝手に恥ずかしがり叫ぶ私。思わず脚をバタバタさせてしまうほどだった。こんなところで脚をバタバタさせたら、コンセントが引っかかってとんでもないことになっちゃう。それでも恥ずかしさがある故、顔を手で覆ってしまった。

 大好きなかっこよくて素敵な蒼と手を繋ぐなんて普通に恥ずかしい。手を繋ぐこと自体は別に友達同士でもやるから問題ないだろうけれど、でも好きな人の手を触るのって、好きな人の手を握るのって、なんか、こう…ドキドキするし、恥ずかしく思っちゃう。思わない?

 これを書いた私は一体何を思って書いたんだろう。もちろん、そんなの私にしかわからないことだろうけれど、だとしても…普通に読んでて恥ずかしいというかなんというか…別に、黒歴史という意味で恥ずかしがってるわけではない。むしろ、これこそが推しへの愛情表現と思っているから夢小説を書くこと自体に恥ずかしさを感じてはいないよ。だとすれば、なんだろう。小説内に出てくるオリキャラが、私をモチーフにしているからかな。この子の名前もハシルと、私と同じ名前にしているし。きっとそうに違いないんだろうな。

 それにしても、夢小説か…。夢創作は基本、夢絵でも夢小説でも限らず公開してはいけないんだっけか。原作に存在しないようなオリキャラと、原作キャラを並べてはいけないというルールが存在するらしい。

 もちろん私はそんなの知ったこっちゃない。私がネットの世界に初めて来た頃は「○○は俺の嫁」というコメントとかで埋め尽くされていたし、動画投稿サイトには「茶番劇」という形でオリキャラと原作キャラを絡ませている動画がある。それらを見て生きてきた私としてはそんなルールに納得できない。…とはいえ、夢小説を投稿して叩かれたりしたら嫌だなぁ。

 かつての、仲良くしてくれた同担だった子は夢小説や夢絵を出しただけなのに、そのせいで誹謗中傷されて掲示板でも晒されて、そのせいであの子は私から姿を消してしまったんだよね。

 …ほんと、惜しい人を失ってしまったなぁ。あの子と、もっといろんなこと話したかったのにな。最近ハマってるゲームとか、蒼に初恋を奪われたこととか…あの子は今でも元気にやっているだろうか。ミラフラだったか、あの子がハマっていたネトゲは。ミラフラなら今でもサービスが続いているけれど、ミラフラをすれば彼女に会えるかな。

 別に、ミラフラをする暇ないけれどね。私には蒼がいて、ワンリスがある。ワンリスと蒼さえあればもう何もいらないようなものだよ。…というか、そんなこと考えたって無駄だよね。はぁ、なんだかあの頃のことを思いだしたら疲れちゃった。私は息抜きがてらSNSでワンリスの二次創作イラストをぼーっと見つめていた。

 みんな、絵が上手だなぁ。私も、みんなみたいに絵を上手に描けるようになりたい。とは言え、絵の勉強なんて正直言ってやりたくない。やったところでどうせ自分にセンスがないことを思い知らされるだけだから。それならば小説を書いた方が自分に向いている。だから私はあんな感じで夢小説を書いていたんだよね。

 一応、執筆した夢小説は「アナザーコード」っていうコミュニティツールの中にある夢創作専用サーバー内で公開している。そ夢女子たちが集まる少人数のサーバーだから、そこでどれだけ夢創作物を公開しても批判されたりはしない。夢創作をメインにしている私としては快適な場所だ。

 まぁ、そのサーバーを作ったのは私なんだけれどね。元は、別のサーバーのスレッド機能でできた夢女子たちの集いスレにて集まっては夢創作を見せ合ったりネタ提供しあったりしていたんだけれど、機能の都合上できることが限られていたから私が夢創作専用サーバーを作ってみんなを招待した、という感じだろうか。コミュニティツールのサーバー内での公開とはいえ、閉鎖的であることに変わりはないか。


 ただひたすら、SNSのタイムラインを見つめていた時だった。ワンリスのとあるキャラが、見たことないキャラと共に描かれているイラストを見つけた。

 あのキャラは、確か拳銃キャラの雷斗だ。ソシャゲでの情報になるけれど、臆病で怖がりなキャラだったか。怖がり故に戦いには不向きかと思われがちだが、彼は大の拳銃好きで、銃の腕前を上げることに手段を選ばない。彼も、ワンリスのキャラとして不思議な感じなんだよな。そんな雷斗の隣にいるキャラは誰だろう。少なくとも、ソシャゲ版では見たことないキャラだ。PC版でも見たことない…とはいえ、ストーリーモードであるPvEは全部攻略しているわけじゃないから、もしかしたらそのキャラである可能性も無くはないよな…

 そういえば、前に夢創作専用サーバーを作る前に一度だけ聞いたことある。ワンリス界隈にも夢女子さんがいて、その夢女子さんはとても有名だってことを。もしかしたら、このイラストの制作者がそうだったりするのかな。きっとそうに違いない。他にもTLを見つめていたら、先ほどの夢女子さんをはじめとしたワンリスの夢女子さんらしき人の夢絵がいくつか流れてきた。

 …彼女たちは、公に夢絵を公開しているけれど、批判されたりしないのだろうか。それとも、夢絵とかのような夢創作を公開しても許される界隈なのだろうか。そんなことを思いながら、独り言のようにSNSに投稿をした。

「ワンリス夢女子さんの投稿を見ると、意外と夢絵載せてるアカウント多いんだな。基本的に夢絵や夢小説などの夢創作は公に出すべきではないっていう暗黙のルールがあるんですけども」

 そんな投稿への返信はすぐに届いた。私にワンリスを布教してくれた、信頼できる友達からの返信だった。

「そんなルールはないよ。みんな自由に載せたいものを載せているし、見たくないものや地雷なら自分でスルーしたりしているからね。」

「日本でもそういう人はいるけれど、日本での夢界隈は基本的に批判されているような感じで、地雷なら各自で自衛とかそれ以前に「夢は夢として隔離するべき」みたいな雰囲気あるんですよね。その点ワンリスはそんな雰囲気なさそうで意外だと思っただけです。」

「こっちはただ上げたいものを上げるだけで、それを止める権利などない。見たくないならスルーすればいいだけの話だし、その人にこれ以上夢絵上がるなとかの意味を伝えるのもなんだからね。」

 案外、夢女子にも優しい界隈なんだな。私の信頼できる友達がそういっているのだから、きっとそうに違いない。


 布教といえば、ただ作品を紹介するだけでなく二次創作をすることも布教に繋がる。私ができる二次創作と言えば、夢小説の執筆くらいだけれど…夢小説をあげても許せるのならこれも布教の一環として、あげてみようか。

 私は、SNSに自分が執筆した夢小説を画像形式で投稿した。もちろん、一応ワンクッションを付けての投稿ではあるが。まぁ、どうせ見てくれる人のほとんどが海外の人故、読んでくれる人なんてあまりいないだろうけれど。いたとしても、読めるかどうかが怪しいところだ。翻訳機にかけたところで意味が通じるかなんて私にはわかりやしないから。

 そんなこんなで、私はワンリスの布教活動を始めることになった。プレイ動画を投稿して、ブログにはワンリスについての知識やワンリスプレイ日記、SNSにはキャラへの愛や夢小説の投稿などなど。もちろんワンリスをプレイする時間の方が多いけれどね。

 この時の私は、こんな自分の布教活動をきっかけに、ワンリスを始める人気VTuberが現れるなんてことを思いもしなかった…

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