第8話 返り咲く花
お待たせいたしました、夏実復活回の第8話です。
自分の配信のアーカイブのおかげで、何とかあの時の記憶を取り戻すことができて執筆しやすかったですね。まぁ別にアーカイブなくても、彼を操作すること自体はずっと夢見ていたから記憶にもかなーり残っているんですけどね。
ちなみに元ネタのやつは全然転職してません。彼が強い故にレベリングしすぎて逆に転職クエが終わらない…
──五月からだろうか…たまに、ワンリス関連の夢を見る時がある。蒼に恋した五月半ばには、蒼が夢の中によく出てきて、3Dで動きながらいろんな歌を歌ったり、ワンリスのメンバーと一緒に泊まるホテルで蒼と同じ部屋になったり…
あと、個人的に不思議な夢としては初代のワンリスの絵柄に似た巨大なポスターが、かつて通っていた学校の壁に貼られていて、周りの子たちが「あったよね~」と言っていた夢だった。ポスターにかかれている内容的にはなにかとコラボするものだということはわかるけれど、ただポスター内には今よりもだいぶ前の…それこそ、私がまだ小学生だった頃の年が書かれていた。昔のやつだから今はないかと思ってたんだけど、ふと隣のスーパー行ったら、そのポスターが言っていたコラボのやつとは無関係化も知れないけれども、ワンリスのロゴがパッケージにあったパンが…
そんな感じで、ワンリス関連の夢を毎月一~二回見るのだけれど、今日もまた、ワンリス関連の夢を見ているのかもしれない。なんてったって、私の目の前には花雲夏実がいるのだから。
見たことある場所…ここは、私がかつて通っていた学校だ。だからきっと、これも夢に違いない。玄関近くの廊下にいた、夏実。学校にいるのだから彼女の年齢的に転校生としてきたのかな。思わず私は、彼女に話しかけてしまった。仲良くなれたのか、私と一緒に教室へ入って…
それ以来の内容は覚えていない。目が覚めた頃には、時計は十七時半を告げていた。確か私はワンリスやってて、メンテナンスで暇になってしまったから昼寝していたんだっけか。
メンテナンス…さっきまで見た夢……そうだ、夏実だ。今日のメンテナンスが終わった時から、ワンリスで夏実を操作することができるんだった。私は、ベッドから降りてさっそく椅子に座り、シャットダウンしたパソコンの電源を入れてワンリスを起動した。データをインストールしている画面が、私の目に映る。きっと、アップデート内容をインストールしているんだ。インストール画面が消えると、ワンリスの読み込み画面に変わった。そんな、読み込み画面には幼くて可愛い、黒髪で、ピンク色の服を着た夏実の姿があった。私が海外ウィキで見た姿と少し違って、髪はボブカットからロング髪になっている…私が公式アカウント経由で見た公式サイトでは、ボブカットの夏実もいたのでおそらく転職や特別クラスでの夏実だろう。そういえば、特別クラスでの夏実の仕様を見たことないな。ここ最近、ワンリスのプレイばかりしているからそもそもSNSも公式サイトも見る暇がなかったな。寝てる暇があったら見ればよかったかな、と思いながらも私は読み込み画面に映る夏実の姿を見ていた。
読み込み画面が消え、ついにゲームが起動した。タイトル画面の横にあるサーバー一覧を見てみると、既にほとんどのサーバーは人であふれており、特にアジア一のサーバーは満員になっていた。さすがは夏実といったところだろうか。夏実の復活を待ちわびていた人たちがたくさんいる中、私は比較的人数が少ないサーバーに入りキャラの選択画面へ移動した。キャラの一覧画面には、黒いボブカットにピンク色の瞳が特徴的な少女の顔があった。間違いない、夏実だ。夏実のところにカーソルを合わせると、夏実の操作について簡単に書かれた説明文と、夏実の立ち絵があった。説明文ではなんて書かれているのかわからないけれど…とにかく、夏実が復活したんだと思えてしまう。夏実の顔と立ち絵をゲーム内で見た私は、驚きと嬉しさのあまりに声にもならない叫びをあげた。
「な、夏実がいる! 花雲夏実が、ちゃんと…っ!!」
恐る恐る彼女を選択してみると、ダンジョンマップ一覧が表示される。左下に小さく表示されるのは現在使っているキャラとそのレベルであるが、そこにはレベル一の夏実が表示されていた。早速、チュートリアルである試練の森ダンジョンを選択した。このダンジョンを攻略しようとしている人たちが多いのか、比較的人数が少ないサーバーであるのにも関わらず既に作られた部屋数が多かった。もちろん私は、お試しとして操作したいのでまずはパスワード付きの部屋を作ってダンジョン攻略を始める。
操作説明が表示され、初めてWonderRisk Adventureをプレイしたときのように夏実を操作してみる。初めて、蒼以外のキャラを操作してみたものの彼女の操作性はどこか滑らかに感じて、癖になってしまうような気がする。彼女の必殺技も綺麗で魅入られてしまう。そんなこんなで、いつの間にかチュートリアルが終わってしまった。チュートリアルを終わらせた私は、そのまま別のダンジョンの攻略をしに行く。彼女の使い心地がよすぎて、クエストを消費しては次のダンジョンへ、またクエストを消費しては次のダンジョンへ行ってしまう。
声も、かつて動画で聴いた夏実のものだし動きもかつて動画で見た夏実の動きそのものだ。数時間前までいなかったはずの、操作できなかったはずの彼女を、私は今操作している。こうやって見ると、本当に復活したんだな、夏実…
ふと、ピンチになってしまい私は必殺技キーを押した。すると、大きな効果音と共に彼女の声が、私の部屋中に響き渡った。
「スウィートハーモニー」
彼女の司る、音の精霊が甘い音を放ち敵を攻撃した。威力こそ低いものの、MPを消費する代わりにHPを回復することもできる技としては優秀な方だ。…さっきから夏実でプレイしていて思っていたのだが、もしかして夏実って性能いいキャラなのでは?
攻撃しながら回復することができるし、動画内で見た必殺技の中には協力な全体攻撃もあった。性能いいキャラって操作が難しいイメージがあるけれど、夏実の操作性は難しいわけではない。むしろ滑らかに動く印象が強くて、初心者向けである蒼しか使ったことない私でも使いやすく感じてしまう。中級者向けだと聞いたことがあるけれど、案外使いやすく感じるから少なくとも私からすれば使いやすいような感じがするんだよね。少なくとも、夏実で操作したときのリザルト画面を見た感じだと、蒼の時よりもいい感じになっていたし。
なんだか複雑な気分だなぁ。彼女のことが気になって、ずっと彼女のことを考えては彼女の復活、操作することを夢見ていたから、上手く操作することができてうれしい。でも、私にとって一番は蒼。なんてったって、私は彼の夢女子なんだから。彼こそが最推しだから、そんな最推しのキャラを操作するときよりもいい感じになるのが、ちょっとねぇ。まぁでも、レベルでいったら蒼の方が圧倒的に高いし別に問題ないけどね。それに、リザルトでいい成績を出すために何度も蒼を使い続けてきたのだから、そういうところも含めればやっぱり蒼の方がいい感じなんじゃないかな。知らないけど。
そんな感じで、夏実を操作してダンジョン攻略をしていたけれど、流石にずっとプレイしていたら飽きが来る。そろそろ飽きたなぁと多いゲーム画面の時刻を見てみたら、六時になっていた。嘘でしょ…そう思い、私は閉めていたカーテンを開けてみた。外は、夏故にとても明るかった。まぶしすぎてすぐにカーテンを閉じる。確か私がワンリスを始めたのは、メンテナンスが終わった十七時半だったような。だとすれば、大体十三時間もプレイしたってことになるよね?
十三時間って…いやまぁ、休憩時間を除いたら十時間くらいになるだろうけど。だとしてもやばいわね。長期休暇だからまだマシな方だけど、これが学校ある平日だったら完全に終わっていたかも。なんて思いながら、私はワンリスを閉じてパソコンをシャットダウンさせた。さすがに、十時間以上もやっていたのだから目が疲れているはず。少しだけ寝て目を休ませようと思い、また布団の中に入って目を閉じた。
それにしても、飽きっぽい私がこんなに夢中になるほどプレイしちゃうなんてね。恐ろしきワンリス。恐ろしき夏実だ。そんなワンリスを、ソシャゲの方とはいえ布教したあの子も随分とすごいものだよ。ほんと、ワンリスって罪深いゲームだわ。
そうしてまた寝て、起きたらまたワンリスを起動してプレイする。また夏実を選んで、ダンジョン攻略をしよう。そんな感じでワンリスを彼女でプレイする日々が続いた。
夏実でダンジョン攻略を続けていたら夏実の転職クエストも消費されていき、いつの間にか転職できるようになった。彼女の基本職は精霊師…英語ではSpirits Fighterとなっている。けれども、二次職…転職の夏実は精霊を使ったものではなさそうだ。Holly Motherとなっているけれど、これ、直訳すれば聖母だろうか。そういえば海外ウィキでワンリスのストーリーを読んでいる時に、聖母のように優しい少女がいたというアリスの回想の話があったな。その少女は、自分が被害者となったにも関わらず、優しい性格であるが故に加害者にすら優しく接したという。今のところ、夏実自身はワンリスのストーリーに一切出てこないけれど、アリスの回想に出てきた、聖母のように優しい少女が夏実の前世のことなら、彼女の二次職が聖母であることもちょっと納得できるな。
それにしても、聖母か…一体、どのような攻撃方法をするのだろう。私は、スキル画面を開いて彼女のスキル一覧を、翻訳機を使って読んでみた。武器は、精霊師の時とは全く違う感じがする。精霊師の時は、それこそ武器と呼べるのかわからないものだったけれど、聖母の時の武器は、ベールのようなものだった。Holly Veilとある。ベールを使って戦うのかな。気になった私は、さっそくダンジョン攻略で手に入れたベールを装備させて別のダンジョン攻略をすることにした。
「I will save everyone...!」
夏実の、戦闘開始のセリフが聞こえた。普段とは違ったセリフだったから、きっと聖母の時限定のセリフなんだろう。英語なんてわからないから、彼女が何言ってるのかわからなかった。それでも彼女の職は聖母だから、きっと聖母みたいなことを言っているのだろうなぁ。
そんなことはさておき、会話シーンをXキーで飛ばして、早速攻撃キーであるZキーを押してみる。夏実が、敵の頭にベールを被せた。もう一度押してみると、敵の周りに謎のきらきら光る小さな光を振りまいた。何度もZキーを押すと、夏実が敵を優しく包むように抱きしめて敵のHPを徐々に減らしていくのがわかる。モーションとか見てみる限り、どちらかと言えば敵を浄化しているかのような、そんなイメージだ。聖母とある通り、攻撃時の動きも他の子たちや一次職の時と違って優しい感じだし、攻撃するときの声も優しい声で、攻撃しているとは思えない感じ…
そうして二次職の彼女を操作していくうちに、ダンジョンのボスは倒されて攻略完了。勝利時の彼女のセリフがまた、聞こえてきた。
「Did I heal everyone today?」
また、聞いたことのないセリフだ。聖母の時限定のセリフだろう。なんて言っているのかな…海外のwikiに、セリフの情報があったら翻訳してみようかな。
それにしても、これまた面白い操作性ね。もっともっと、彼女でプレイしたくなるわ。まだまだクエストが残っているし、もう何回か二次職の彼女でダンジョン攻略してみよう。私はまた、聖母の夏実の操作に慣れるために、クエスト消費も兼ねて同じダンジョンを攻略していった。




