第10話 フレンド
あけましておめでとうございます。年明けはじめての最新話です。
新たにワンリス仲間の日本人ができますね。ここから、ハシルが変わっていくかも?!
ワンリス内で時間を確認すると、既に二十三時を過ぎていた…私はパソコンをシャットダウンさせて洗面所で歯を磨き、布団にもぐる。廃人生活はもうおしまい。明日から学校だから、早めに寝なくちゃいけない…なんて思い目を閉じてみたものの、ワンリスをプレイしたい欲が強くなっていく。早くワンリスやりたい。蒼を操作して、レベリングしたい。PvEをやりこみたい、消費していないクエストの消費をしたい。それでも我慢しなくちゃ。ちゃんと学校行って、授業受けないといけないんだから。
それでもワンリスがやりたいからか、目を瞑って寝ていたら不思議な夢をみてしまった。
それは、花雲夏実使いの人と、チャットをしながら一緒にワンリスをする夢だった。日本語で入力していたから、きっと日本人の方と一緒にプレイしているに違いない。なんだか、私が知っているかもしれない人とプレイしていた気がするけれど、SNSで知り合った同じワンリス好きの方なのかな。そこまでは、あまり覚えていなかった。
スマホから、アラーム音が鳴り始めた。もう、朝か。私は、目を覚ましてアラームを止め、ベッドから降りた。楽しかった廃人生活こと、夏休みは昨日で終わり。今日から学校だ…しばらくの時間はワンリスできないと考えると、寂しいなぁ。まぁ、学校から帰宅してすぐワンリスをプレイすればいいか。そうして私は、ワンリスのプレイを生き甲斐に、学校の支度をした。
外を出ると、太陽が眩しくて気温も高く、溶けてしまいそうなほどの暑さだった。ずっとカーテンを閉め切った状態だったから、外の眩しさに慣れてない目が痛みを感じている。それでも少しくらい歩いていれば慣れるだろう。…とは言え、やはりこの暑さには慣れない。なんなんだこの暑さは。外ってこんなにも暑いのだろうか。なんだか、私が見ない間に世界が変わったような、そんな気がするな。
そんなこんなで無事学校に到着。学校の中はクーラーが効いててとても涼しい…生き返るような涼しさだ。涼しさに慣れてる私にとって、この涼しさこそ最適な温度なのだから、このくらいの温度で授業を受けれるのが不幸中の幸いといった感じだろうか。私は、教室に入っては自分の席について、授業が始まるまでスマホを眺めていた。
私が布教がてら執筆して投稿した夢小説、私が書いたブログとかよりも多くみられているのがよくわかる。私に似たオリキャラと、蒼の物語がみんなに見られているなんてこと考えると…恥ずかしすぎるな。なんでみんな、私の夢小説ばかり読むんだよ…別に読んでほしくないわけではない。ワンリス界隈は夢創作を公に出すことが許されていることを知っているけど、それでもどうせみんな私の夢小説を読むなんてことしないだろうと思っていたから、ちょっとどころかかなり意外。そもそもワンリスの小説自体珍しいからというのもあるかもしれないけれど…
ブログや紹介動画は…うーん、あんまりパッとしない数字だなぁ。まぁ、名前の認知度もあんまりないから仕方が無いか。とはいえ、私の、蒼との夢小説を機に名前を知った何人かの人が見てくれたと考えればいいだろう。閲覧数的にも、他の数値的にも夢小説の方がなんか一番多いし、これからももっと夢小説をあげていけばワンリスの名前の認知度も上がったりするのかな。まぁ夢小説を執筆する時間なんてあんまりないだろうけど。
なんて思いながら自分が書いたブログや作った紹介動画などを見ていたらチャイムが鳴った。授業が始まる…私は、スマホを機内モードに設定して音もミュート状態にさせて鞄にしまった。
夏休み明け最初の授業はだるいものではないものの、どうもやる気が起きない。多分だけど、ただ勉強がしたくないからだけでは説明しきれないだろう。ワンリスをやりたい気持ちがすごく高い。海外の人たちはきっと、今頃ワンリスをやっているんだろうなぁと考えると、私も早くワンリスやりたいという気持ちが強くなって…昨日ようやくレベル百まで行けて、だんだんと他の人たちに追い付いている気がするのだから。ワンリスをプレイしていない間に、また他の人たちに追い抜かれたりしたら嫌だな…別に、PvPはあんまりやらないんだけどさ。だとしても、レベルが高ければ高いほど強さを感じれるんだから、私もみんなと肩を並べられるくらい強くなりたい!
あぁ、早く授業終わらないかな。早く授業終わって、家に帰ってワンリスやりたい…ワンリスやってダンジョン攻略して、レベリングして、できれば他の人たちと対戦もして…そんな、ワンリスをやりたい気持ちが、毎秒強くなっていく。そんな気持ちで待ちきれない故か、授業が、学校にいる時間が長く感じてしまう。
やっとこさ昼休み。あと一回、授業を受ければ帰れるなと思いつつ、私はスマホでワンリスのプレイ動画を見ながら弁当を食べ始めた。相変わらず、みんなゲーム上手だなぁ。何をどうしたらそんな上手になれるんだろう。ただ単にゲームを楽しんでるだけじゃ、きっとそんなに上手にはなれないだろうし…何かしら研究はしていることはわかるけれど、一体どこでそんな時間を確保しているのだろうか。やはり廃人故のものなのだろうか?
なんてことを思いながらスマホを見ていたら、後ろから声が聞こえてきた。
「ハシル~~~っ! なーにしてるのっ?!」
咲の声だ。私は、後ろを振り返っては咲の問いに答えた。
「別に…あなたには関係ないことよ」
「え~いいじゃん関係なくたって。興味あるんだもーん」
「どうせすぐ飽きるでしょ。咲ゲームやらないし」
「失礼な。私だってゲームやるよー、それこそ今はやりのチュムチュムとか!!」
「チュムチュム、まだ流行ってるの…? まぁとにかく…流行ってるやつでもなんでもないから、これ」
そう言って私は、スマホに目線を向けて動画の続きを見た。こうなることくらい、私でも知っている。いくら仲の良い咲に、ワンリスについて話したってどうせ興味を失うだろう。そもそもあんな陽キャにゲームなんて似合わないよ。似合うとしても、さっき咲が言ってたチュムチュムとかそこらへんがお似合いでしょうね。もしワンリスが少しでも流行ってたら…咲におすすめできたのかもだろうな。陽キャとかギャルって、流行に敏感なイメージあるし。
…ワンリスの流行かぁ。確かに、今私は日本人プレイヤーを増やしたいがために布教活動を行っている。多くの日本人にプレイしてもらいたいから、ああして動画を作ったりブログを書いたり、執筆した夢小説をアップロードしたりしている。これでワンリスが流行し始めたら私としてはうれしいものだ。流行ってくれないかなぁ…
「…それ、なんて名前のゲーム?」
突然、咲が私にそう言ってきた。珍しい、いつもなら私があんなこと言ったら寂しそうに私のもとを去って友達のところに行くのに、今回はなんだか興味ありそうに話しかけてきた。何故だろうか…それこそ、彼女にとって興味なさそうなゲームだと思っていたのに。私は、そんな咲に、ワンリスのタイトルを教えた。
「WonderRisk Adventure。「ワンダーリスク」って調べると出てくる。…たぶん、私が作ったものも出てくると思う」
「ワンダーリスクね、ありがとう~!」
そういって、彼女は私のもとを去っていった。まさか、ワンリスに興味を持ったのか?
…いやまさか。咲のことだからそんなはずがない。そう思いながら、私は授業が始まるまでまたスマホでワンリスのプレイ動画を見つめていた。
長かった授業もやっと終わり、帰宅後すぐにワンリスを起動。蒼でPvEを攻略してレベリングしながらクエスト消費作業する毎日だけれども、PvEをやりすぎて気が付いたころにはほとんどのダンジョンを最高ランクでクリアしてしまった。これからはどのダンジョン攻略をすればいいのだろう。…まぁ、メインダンジョンの他にも、戦士ダンジョンだとか、曜日ごとに攻略できるダンジョンが変わるイベントダンジョンとかがあるし、それらでPvEをすればいいか。レベル的にも、戦士ダンジョンやイベントダンジョンの攻略をするにはちょうどよさそうし。
そんなわけで、この日からワンリスをするときは、戦士ダンジョンやイベントダンジョンを進めることにした。一部のダンジョンは、最初こそ攻略方法やボス撃破に苦戦はしたものの、何度か他プレイヤーたちとPvEしていくうちに理解できるようになってきて段々と一人でダンジョン攻略できるようになってきた。
そうして学校から帰ってダンジョン攻略をすることを繰り返していた日々の中、ある日ワンリス内でとある人物からフレンド申請が来た。ワンリスでフレンド申請する時は、一言二言くらいのメッセージを添えて申請することができるのだが、今回来たフレンド申請にはメッセージが添えられていた。
「初めまして、VTuberの紅鶴美鴇です。日本人プレイヤーと聞いて、申請してみました」
フレンド申請してくれた人は、「Mitoki」という名前のプレイヤー。メッセージは、珍しく日本語で書かれており、「紅鶴美鴇」という文字列から美鴇さんという日本人の方からの申請だろうな。ワンリスアドベンチャーの日本人プレイヤーが増えてうれしさを感じた私は、思わずその申請に許可をして美鴇さんとフレンドになった。
しかし、この美鴇さん…私と会ったことないはずなのに、なぜいきなりフレンド申請したのだろうか。日本人プレイヤーと聞いて申請してみたってあるけれど、何故私のことを知っているんだろう。日本人プレイヤーなら、SNS上を探せば私以外のヒトもいるはずなんだけれど…なんて思っていたら、ゲーム内のメニューアイコンにお知らせが表示された。メニューを開いてみると、何やら未読メッセージがあるらしい。メッセージ画面に移動してみると…
「こんにちは、ハシルさん。フレンドになってくれてありがとうございます!」
美鴇さんからのメッセージが来た。こっちも、何か返信しておこうと思いメッセージを入力する。
「こちらこそ、フレンドになってくれてありがとうございます。まさか日本人プレイヤーの方とフレンドになれるなんて思いもしませんでした!」
「紅鶴美鴇と言います。VTuberをやっているので、検索すれば出てくると思いますが…」
そういえば、申請時のメッセージでも、VTuberやってるみたいなこと言っていたような気がするな。美鴇さんってVTuberだったのか…ということは、配信でワンリスの実況とかしていたりするのかな。少し興味を持った私は、色々と聞いてみることにした。
「VTuberさんでしたか。ワンリスやってるってことは、配信でワンリスの実況もしていたりするんですか?」
「していますよ~。最近始めたばかりなのですけどね」
「おお~~! まさかワンリス好きのVTuberさんがいたなんて…」
「ハシルさんの動画でワンリス好きになったんです。まさかそんなハシルさんとフレンドになれるなんて思いもしなかったです!!」
布教活動もやってみるもんなんだな…私が作った動画がVTuberの目に留まり、VTuberが実際に配信で実況プレイするとは思いもしなかったけれど、でもうれしいな。美鴇さんの配信を機にワンリスをプレイする日本人が増えたらいいな。そう思いながら、私はワンリスで美鴇さんとチャットをしていた。




