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【コミカライズ&書籍化 企画進行中】捨てられ聖女は契約結婚を満喫中。後悔してる?だから何?  作者: miniko


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51 王子様とお姫様?

 義実家からの夜会の招待状は、勿論、私達夫婦を招く為の物。

 開催日は三ヶ月後だった。


 私がカードの内容を確認し終わると、旦那様はそのカードをヒョイと取り上げて、私の目の前でヒラリと振って見せた。


「ミシェルも出たく無いか?

 私と一緒に出席すれば、ご両親を安心させてあげられるだろうし」


「そうかも知れませんが……」


 私の義実家の夜会は、どうしても出なければいけない物とは言えないだろう。

 旦那様の負担を思うと、『出たい』とは言い辛い。


「実はシャヴァリエ辺境伯とは、最近手紙のやり取りを頻繁にしていてね。

 私が女性を苦手だって事も伝えてあるんだ。

 今回の夜会は小規模で、私が特に苦手とするタイプの女性はいないそうだから、夫婦で初めて参加するのには丁度いい練習の機会になるかと思って。

 それに、君の義実家が主催する夜会で、君の夫である私に強引に言い寄る女性なんて、流石に居ないだろ?」


 確かに難易度が低い夜会から挑戦するのは賛成だが、今の旦那様の台詞の中で私が引っ掛かったのは別の部分だった。


「え、ちょっと待って下さい。

 お義父様と連絡を取り合っていらっしゃるんですか?」


『混ぜるな危険』が、いつの間にか勝手に混ざってるではないかっ!?


 ほんのり嫌な予感がし始めた。

 王都で起きてる怪文書事件って、もしかして───。

 いや、ダメダメ。考えるのはやめよう。


「そうだよ。ミシェルが元気にやってるって事を報告したり、互いの領地経営についてアドバイスをし合ったり、他にも色々と」


「そう…ですか」


『色々』の部分に何か妙な含みがある気がするのだが、きっと聞いてはいけないヤツだ。


「で、どうだろう? 行きたくないならば無理にとは言わないが……」


「勿論、行きたいですっ!」


「良かった。実はもう君のドレスを仕立て屋に注文してしまったんだ」


「用意が良いのですね」


「オーダーメイドのドレスは時間が掛かるからね。

 今回の夜会に参加しなかったとしても、いつか一緒に夜会に出る機会があるだろうし。

 初めて君と参加する夜会は、どうしても私が選んだドレスを着て欲しかったんだ」


 そう言った旦那様の顔がなんだか嬉しそうに見えて、ちょっと恥ずかしくなった私は思わず目を逸らした。


「そうですか……。お気遣い頂き、ありがとうございます」


「礼を言わなければならないのは、こちらの方だ。

 ところで、ミシェルはダンスは踊れるのか?」


「得意ではありませんが、一応王太子の婚約者でしたので……」


「そうか……。まあ、そうだよな」


 王太子の話を出したのは失敗だったらしい。

 先程迄の機嫌が良さそうな雰囲気が霧散して、そこはかとなく刺々しい空気が漂い始めた。


「ですが、旦那様はダンスはなさらないですよね?」


「いや、子供の頃は……、事件前迄はちゃんと習っていたんだ。

 それに、ミシェルと夜会に参加するなら必要だろうと思って、フィルマンと密かに特訓を重ねていた」


「えっ?」


 思わず勢い良くフィルマンの方を見ると、彼は気まずそうに眉を下げて微笑んだ。


 旦那様が私と踊る為の特訓なのだから、きっとフィルマンが私の役を演じたという事なのだろう。


 イケオジと美丈夫が眩いスポットライトを浴びながらクルクルと優雅に踊っている姿を、つい想像してしまった。


(……ちょっと見たかったかも)


 一瞬そう思った事は秘密だ。






 グレースが奏でるピアノの旋律に合わせてステップを踏む。


 本番前に、一度は一緒に踊ってみた方が良いという話になって、今日は旦那様と共にダンスのレッスンを受けている。

 勿論、講師はフィルマンだ。


「奥様、もう少し旦那様と視線を合わせて下さい」


「……はい」


 フィルマンの指摘に顔を上げると、幸せそうな青の瞳が私に向けられていて、一気に頬に熱が上がった。


 旦那様との接触にはかなり慣れたとは言え、こんなに至近距離で顔を見る事は無かったので、どうしても照れてしまう。

 緊張が高まってステップが乱れた私を、旦那様が難無く支えてくれた。


 持ち前の運動神経のお陰なのだろうか? 旦那様は今迄ダンスの経験がほぼ無かったとは思えないくらいに、安定感のあるリードを披露した。

 寧ろ私の方が足を引っ張っていて、申し訳ないくらいである。


 曲が終わって、体を離し、お互いに軽く礼をする。

 一曲踊っただけで、体力面より精神面がかなり削られた気がした。


 ───パチパチパチ!!


 突如聞こえた大きな拍手に、部屋の入り口へ目を向けると、いつの間にか見学をしていたジェレミーが瞳を輝かせて手を叩いていた。


「凄く綺麗でしたっ! 父様と母様は、王子様とお姫様みたいですね」


 ジェレミーの言葉に、何故か真剣な顔で悩み始める旦那様。


「残念だが、私達が王子と姫になるのは少し難しいな。

 うーん……、王と王妃ならば、なんとかならない事も無いのだが」


「いや、なんとかしなくて良いですからっ!

 子供の微笑ましい発言に、真面目な顔して不穏な返事をしないで下さいませ!!」


 こういう時の旦那様って、半分本気っぽいから怖いのよっ!!


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