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【コミカライズ&書籍化 企画進行中】捨てられ聖女は契約結婚を満喫中。後悔してる?だから何?  作者: miniko


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23 天使の好きな色

「だいぶ良くなったんじゃないですか?」


 ジャックさんに問いながら、肩に治癒魔法を掛ける。

 今日は三回目。予想ではそろそろ完治するはずだ。


「そうですね。

二度目の時点でも殆ど以前と変わらないくらいに動かせる様になっていました」


「じゃあ、やっぱり今回で完治出来そうですね」


「はい!」


 ジャックさんは満面の笑みで頷く。



「へえ~。私、治癒魔法って初めて見ましたよ。キラキラ光るんですね」


 私の後ろから治癒の様子を覗き込んでいたシルヴィが、感心した様に呟く。


「幻想的ですよね。俺も初めて見た時感動しました」


「ええ、本当に綺麗」


「古傷を治す時は魔力を多めに使うから、特に強く光るのよ」


 そんな風に話をしながら、最後の治療を終えた。


「ありがとうございます。ミシェル様は俺の恩人です。

 何か困った事があったら、仰って下さい。必ず力になりますから」


 真剣な顔でそんな事を言われると、少し面映ゆい。

 感謝される事には、あまり慣れていないのだ。






 午後は予定通りに仕立て屋がやって来た。


 ジェレミーが採寸をされている間に、私は子供服のデザイン画をペラペラと捲る。

『服を選んで欲しい』ってジェレミーに頼まれたから、私も立ち合う事になったのだ。


「こちらなど、如何でしょうか?

 王都で最近流行り始めたデザインですよ」


「そうね、では、これと、こちらも似合いそうね。

 ジェレミーにも聞いてみましょう。

 あと、剣術の訓練用の服も小さくなってきたみたいだから、新調したいわ」


 気に入ったデザインをいくつか選び出してそう告げると、仕立て屋は別のデザイン画を出して来た。


「運動する時の服なら、こちらになります」


「うーん……じゃあ、これと…、それからこれを候補に。

 でも、最終的には本人に決めさせます」


「かしこまりました」


 すると、私達の会話が聞こえたのか、衝立の向こうからジェレミーの声がした。


「僕は母様が選んでくれたのが良いですー」


「そう? でも、好みが合わないかもしれないから、一応確認してね」


「はーい」


 採寸が終わって、ジェレミーは私の元へトコトコやって来た。

 彼は私が差し出したデザイン画を、真剣に眺める。


「うん、良いと思う。

 ねえ、このシャツは水色に出来ない?

 このジャケットの刺繍の部分も」


「勿論、可能です。どの位の濃さの水色がよろしいでしょうか?」


 仕立て屋が取り出した色見本を真剣に眺めるジェレミー。


「これだな。この色にして」


「こちらですね」


 メモを取りながら頷く仕立て屋に、ジェレミーは満足そうに微笑んだ。


「ジェレミーは、水色が好きなの?」


「うんっ、母様の瞳の色ですよ!」


 私の天使が嬉しそうにニッコリ笑う。


 ウチの子、五歳なのにイケメン過ぎる。

 でも、ちょっとマザコン気味で、母様は貴方の将来が心配です。


「ジェレミー様はお可愛らしいですね」


 壁際に控えていたシルヴィが、チェルシーにコソッと話し掛けた。

 うんうん、そうなの。ウチの子可愛いの。天使なの(親バカ)。


「そうね。

 この邸の者は、皆んなジェレミー坊っちゃまが大好きよ」


「旦那様とジェレミー様って似てらっしゃるのですか?」


「そうね。まあ、親子だからね」


 そう言えば、旦那様は『侍女達にはなるべく会わないようにする』って言ってたっけ。

 面接の時とかには会ったのかと思ってたけど……、似てるのかとわざわざ聞いたって事は、顔を知らないって事だ。


 旦那様の女嫌いって、もしかしたら、私が思っているよりも重症なのかも知れないわね。




 翌日は、グレースとペネロープが私の担当をしてくれた。

 ペネロープはとても指先が器用で、鏡の中の私の髪が、見る見るうちに美しく結い上げられていく様は、まるで魔法みたいだった。


「凄いわね、ペネロープ」


「唯一の特技なんです。

 最近の社交界では、この様にハーフアップで複雑に結った髪型が流行りです」


「そうなの。流石、ご実家が商家をしているだけあって、流行に敏感なのね」


「いえ、それ程でも」


 彼女は口数は少なく、あまり雑談は好まないみたい。

 しかし、仕事ぶりは非常に真面目で、特にヘアメイクの腕前は、社交に出る気の無い私に仕えさせるのが勿体無いくらいだった。




 それからも平和な日々は続いた。


 シルヴィは少しそそっかしい部分があるが、今の所大きなミスは無いし、明るくて元気。

 ペネロープはちょっと仕事が遅いが、その分丁寧に作業をしてくれている。

 私はそんな二人を結構気に入っていた。


 一月程すると、新人侍女達もかなり仕事に慣れて来て、もう指導役は必要ないかもと言われ始めていた。




 異変が起き始めたのは、そんな時だった。


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