表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ&書籍化 企画進行中】捨てられ聖女は契約結婚を満喫中。後悔してる?だから何?  作者: miniko


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/80

14 天国には天使がいた!

 その日は、朝早くから邸全体がソワソワと浮き足立っていて、いつもよりも明るい雰囲気だった。


「なんだか皆んな嬉しそうだけど、今日は何かあるの?」


 庭園のガゼボでバラを眺めながら問うと、護衛についてくれていた騎士のレオが答えてくれた。


「ご存知なかったっすか? 今日はお坊っちゃまがご帰還なさるんです」


「ああ、ジェレミー様?」


「そうです! ジェレミー坊っちゃまは、皆んなのアイドルなのですよ」


 お茶を運んで来たチェルシーも、にこやかにそう言った。

 彼はここの人達にとても愛されているらしい。


「それは、お会いするのが楽しみね。

 何時頃到着なさるの?」


「夕刻頃と伺っております。

 旦那様も、それまでにはご帰宅なさると思いますよ」


「分かったわ」


 侯爵様は領地内の視察に出ているが、ご帰宅なさったら、ジェレミー様に挨拶をする機会を作って下さるだろう。


 そう思いつつ、カップを手にしたその時、門の方から馬車が入って来る音がした。

 まだ昼過ぎ。お二人がご帰宅するには早い時間なのだが……。

 私達は顔を見合わせて、首を傾げた。


「お客様かしら?」


「さあ? 本日は来客の予定は無かったはずなのですが……。

 ちょっと様子を見て参りましょう」


 チェルシーが玄関へ向かって暫くすると、邸の中が少し騒がしくなった。



「……坊っちゃま、そちらに行ってはいけませんっっ」


 微かに聞こえて来た声に、ジェレミー様が早めに帰宅したのだと知った。


 挨拶をしに行こうかと、一瞬だけ考えたが、形ばかりの母が侯爵様の許可も取らずに、後継者であるご子息に勝手に会うのは憚られた。

 ここは侯爵様がご帰宅なさって、きちんと紹介して下さるのを待った方が得策だろう。


 再びカップを手に取り、紅茶を一口飲んだのだが……。


(……何か、めっちゃ見られている)


 視線を感じて顔を上げた。

 だが、視線の主は、私と目が合う前にサッと建物の影に隠れてしまう。

 と、言っても、隠れた場所から、フワフワの焦茶色の髪がはみ出して見えてしまっているのだが……。


「フッ……」


 なんとも微笑ましい。

 隣に立っているレオも、笑いを堪えている。


「ご挨拶なさったらいかがっすか?」


「勝手にお会いしても良いのかしら?」


「問題ないと思いますよ。坊っちゃまは人懐っこいんで、お喜びになられるかと」


「そう?」


 ジェレミー様が喜んでくださるかどうかは定かでは無いが、レオの言葉に背中を押され、私は立ち上がった。


 足音を忍ばせて、建物の影へと近付く。

 その場で暫し立ち止まっていると、ジェレミー様は再び私の様子を窺う為、ソロリソロリと顔を出した。


「……ぅわぁっっ!!!」


 いつの間にか近付いていた私に、彼は驚きの声を上げる。



「ふふっ。初めまして、私はミシェル・シャヴァリエと申します」


 悪戯が成功して上機嫌の私は、微笑みながら彼に挨拶をした。

 目の前には、焦茶色の艶やかな巻き毛に、青い大きな瞳のとても可愛らしい小さな男の子。


(わあぁぁ……可愛いぃ~~。

 まつ毛長ぁい。お肌も白くてモチモチしてそうだわ~……)


 まさに、天使っっ!!


「ジェレミー・デュドヴァンです。

 あ、あの……、えっと……、」


 天使こと、ジェレミー様は、頬を染めながらモジモジし始めた。


「はい?」


「新しい、母様ですか?」


「…………え?」


 期待を込めた純粋な視線を向けられた事に驚いた。

 拒絶される事なら想定していたのだが……。


 しかし、改めて考えてみると、二年でここを去る予定の私が母と名乗って良いのだろうか? という疑問が再び湧いて来る。

 深い関わりを持てば、きっと別れる時に互いに辛くなってしまう。

『新しい母に捨てられた』なんて思わせてしまうくらいならば、最初から距離を置いた方が……。


 それに、私は子を産んだ事も無い。それどころか、実の母親の顔さえも知らないのだ。

 そんな私が、果たして良い母親になれるのだろうか?

 正直言って、全然自信が無い。


「父様と結婚するのなら、僕の母様でしょう?」


「……え…、あ、いや、その……」


「…………違うの?」


 少し悲しそうな顔で首を傾げる姿を見たら、もうダメだった。


「そうっっ! そうよ。

 私が貴方の新しい母様です!!」


 あんなウルウルした大きな瞳で見つめられて、『違う』と答える事が出来るだろうか? いや、出来ない!!(反語!)



 侯爵様、ごめんなさい。

 後でちゃんとお叱りは受けます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ