九 触発されてじっとしていられる訳がない
「そうですか」
コナはやはり淡々と答えるだけだった。
「ふふっ、これを返してあげたかったの」
首切り姫は更に鎌を引っ張り、ある所で止めた。
「これこれ。あ、周りのはあの方々のだから」
そこには、二つのナイフがあった。装飾などが無い代わりに、柄と刃の境に一つ輪があった。コナの目が僅かに細められた。
「……ありがとう、ございます」
コナは何の躊躇いもせずそれらを取り出し、投げて宙で一回転させて持ち、頷いた。
「どう?」
「嬉し過ぎて……手の震えが止まりません」
しかし、表情筋は仕事をしていなかった。
「良かったわ。さっきの人には悪い事しちゃったわね。戻って来て貰おうかしら」
リーダーやセイ、ドラセナが瞬間移動でこちらに来た。あの強烈な妖気と気迫はもう無かった。
「ごめんなさいね。いつもの癖で」
リーダーはぽかんとした顔のまま答える。
「え、いや、……別に」
首切り姫は鎖鎌を仕舞うと、
「じゃあ、頑張ってね、コナちゃん」
と立ち去ろうとしたが、コナが
「少しゆっくりしていきませんか?」
と引き留めると立ち止まった。
「まっさかあのコナちゃんがこんな気遣いをしてくれるなんて、思っても見なかったわね。やっぱり私の目に狂いは無かったわ」
首切り姫はリーダーをチラリと見た。
「ど、どーぞ」
セイはドアを開けた。まだ怯えている様だった。
「あら、ありがとう」
首切り姫は中に入ると、すぐにフィラを見つけた。フィラは真っ直ぐに首切り姫を見つめていた。
「あら、綺麗な目。……欲しくなっちゃいそうなくらい」
フィラは本を閉じて立ち上がった。再び、真っ直ぐに首切り姫を見つめる。
「冗談よ。でも、あんまり弱いと、誰かに取られちゃうかもよ?」
首切り姫は、そのまま歩いて行った。フィラは読書を再開した。しかし、眉間に皺が寄っていた。
「美味しかったわ、ありがとう。そろそろ仕事に戻らないと、レイレイ君に怒られちゃいそうだし」
首切り姫は肩をすくめた。
「こちらこそ。ありがとうございます。楽しかったです」
何故か一番クオが満足気だった。首切り姫は去っていった。コナは見送ろうとしたが、既に跡形も無く消え去っていた。フィラ以外の皆は首を傾げた。セイは、ふぅぅぅ、と気の抜けた声を出した。
「ふぅ。びっくりしたぜ。良かった、何も無くて。さてと、勉強再開するか、ドラセナ、フィラ……」
フィラは定位置にいなかった。
「フィラ!?」
セイは慌ててフィラの部屋に入ったが、いなかった。代わりに、置き手紙があった。
『自分を鍛えたい。探さないで』




