二 一旦の休息
翌朝。青年はカーテンがそよぎ、柔らかい日差しが差し込む部屋に寝かされていた。
「はっ、あいつは?」
青年は勢いよく起き上がったかと思うと、
「うぐっ……」
とまた倒れ込んだ。かなりの大怪我だ。無理も無い。
「あまり動かないで下さい。治りが遅くなりますよ」
すると、部屋に一人の女性が入って来た。
「すまん、コナ」
コナは光の無い両目を持ち、口は一文字である。常に真顔である事が彼女の特徴であった。
「あいつは大丈夫なのか?」
「まぁ、死んではいませんね」
(この人に聞いたのが間違いだった)
コナが無表情なのは、おそらく感情があまり無いからだと、青年は勝手に思っていた。だが、それはあながち間違ってはいない様に思える。
「とにかく早く治して下さい、セイ。二人では大変なんですよ」
「……はい」
青年の名はセイである。そのまま、コナは去って行った。
「大丈夫か?」
丁度リーダーがやって来た。ガタイが良く強面の為怖がられる事が多いが、性格は穏やかな方である。そして、その足元には幼い男の子が。
「あ、リーダー。忙しくないのか?」
「もちろん忙しい。だから、ドラセナを置いておく。お前なら脱出しかねん」
「はい……」
ドラセナはその男の子の事である。
「おるすばん?」
「そうだ。こいつが脱走しようとしたら?」
「こうげきする!」
「完璧だ」
「おい!」
セイのツッコミも虚しく、リーダーも去って行った。ドラセナはセイを見つめていた。
「あいつが今どんな感じか、分かるか?」
「あいつ?」
「俺が連れて来た奴だ」
「そのひと、いまおいしゃさんとこ。にゅういん?だって」
「……そうか」
セイはドラセナをじっと見る。ドラセナは首を傾げた。
「実際に見たのか?」
「うん」
「どんな顔だった?」
「……うーんと、かぜひいてたからあんまりちかくでみてない」
「すまん、変な事聞いたな」
「へんなの?」
ドラセナがそう尋ねた時、セイは眠っていた。
一方その頃、その不思議な者は……点滴から逃れようと暴れていた。
「別に武器じゃないから!痛いのは一瞬だからー!」
起き上がる事が出来ないので、寝転んでいるが、腕を動かされてはたまったものではない。しかし、流石に腕が痛くなって来た様で、腕の動きが止まった。その隙に手早く済ませる。
「……足の傷が多いし、逃げて来たのかな?」
話す様子はない。咳だけが部屋に響く。
「ま、それなら人間不審になるのも共感出来るよ。今はゆっくり休んどきな」
医者は頭を撫でた。その者は眠り始めた。