1.プロローグ
「地震だ。」
いきなり足がもつれるような感覚がして、立ち止まる。すると、目の前の電柱がぐらついて見える。
この地方では、地震が頻繁に起きるため珍しくはないが、かなり大きな地震だ。
震度5以上ありそうだ。近くに落下しそうなものがない広い場所がないか見渡すと、
「公園がある。」
小さな公園を見つけ移動した。辺りを眺め回したが、他に人はいないようだ。
そうしていると再度、地面が揺れ始めた。揺れが収まるのを待っているとさらに激しい揺れが起きて、
「あぁ。」
足元にぽっかり穴が開き、その穴に吸い込まれるように落下していった。
浮遊感の中、内心「終わったな。」と思いながら、意外と冷静な自分に新鮮な感じがした。
地面の穴から漏れる光がだんだん小さくなって辺りが暗闇に包まれる。
スローモーションのように遅く流れる時間の中で、その時を待っていると体に急に衝撃が走った。
そのまま意識を手放した。
『人類初のダンジョン入場者を確認、特典を付与。入場者の身体に多大なる損傷を確認、緊急処置として身体の再組成を実施』
「うっ、ここはどこだ。」そうつぶやくと、これまでの記憶が蘇ってきた。
「生きている。体に痛いところはなさそうだ。」手足を動かしながら、異常がないことを確認する。
「ここは穴の中なんだよな。」
スーツの内ポケットからスマートフォンを取り出す。
今は午後6時半、確か地震があったのは、3時過ぎだから3時間ほど経過している。
「あっ、日付が1日経っている。ということは、27時間経過しているのか。電波は当然届いていないよな。」
生きていると分かった途端、会社のことが気になりだした。
もれなく俺、青木大介はブラック会社の社畜であった。