護国-防人達の歌-
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
プロタスリティスが撤退してすぐ、ジイさんとココア、ストロさんは現場にやってきた。
そして、すぐに新たな戦いが始まったのだ。
大木家と向き合うのはストロさんと男性。
「貴様らは!何を考えているんだ!プロタスリティスの被害より、チュカロスの被害の方が甚大なんだぞ!」
「お前んとこの小娘が金はいくらでも出すし、いくらでも破壊してよいと言ったんじゃ。」
「証拠もあります。」
真っ当な事を叫び散らしているのは、ストロさんの先輩にあたる人物。
それに対してジイさんとココアは自らの正当性を主張している。
「言ったのか!」
「言ってません!・・・そこまでは言ってないですよね?」
「聞きますか?」
ココアは胸ポケットから小さなスマホを取り出す。
『んはぁぁぁぁ!』
「それ号泣の時のだろう!」
ココアが流したのは証拠ではなく、号泣した時の音声だ。
その声で周りで撤収作業や調査をしていた人達が一斉にこちらを向いた。
「・・・そう取れるニュアンスで言ってしまったかもしれません。」
それ以上の再生を阻止したいのか、ストロさんが折れた。
「そういえば他にも面白い音声があったのう。」
ジイさんに言われてココアがスマホを操作する。
「これですか?」
『最悪誘拐しても構わん!あのジジイ一人ならお前でも無力化できるだろう!』
大音量で流された声に周りがこちらを見てくる。
「・・・」
その声は目の前の男、ストロさんの先輩の声に似ている。
「似ておるのう。」
「・・・」
「政府特務室による誘拐の指示の証拠ですね。」
「・・・記憶にございません。」
そう言いながら男は耳に手を当てる。よく見ると無線のイヤホンがついてた。
「あの時は私も焦っていて頭が真っ白に・・・」
「ピピッぅ」
ココアが唐突にリコーダーを吹き始めた。
「電波を受信・・・そこです!」
ココアが何かを投げる。
「目が!目があ!」
投げた先に人の影、そして投げたものを手で払うと粉末が噴出した。
「耳が!鼻!!」
もがき苦しむ男性。
「博士が作りだした特製唐辛子粉です。触れたら最後、その身すべてを焼き払うまで痛みが収まる事はありません。」
「それは本当に唐辛子か?暗黒魔法の一種じゃないのか?」
「魔法なんて信じてるんですか?可愛いところあるんですね。」
イラっとする。唐辛子の説明の基本は「辛い」だろう。身を焼き払うではないはずだ。
「じゃあどんな唐辛子なんだよ。」
「護身用に決まっておるじゃろ。」
「食い物を護身用にするな!食え!」
「辛いの得意なやつなら食えると思うぞ、知らんけど。」
試した事はないらしい。
「ああああああああああああああああ!」
こちらが唐辛子の認識について、すり合わせをしている間も叫ぶ室長。
「室長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!・・・いやこれはチャンスなのか?俺が・・・この俺が新たな室長に・・・」
迷いを抱く男。
「ウミツキ室長!大丈夫ですか!?大丈夫なんですか!?」
うろうろするストロさん。
「大丈夫じゃ。水で流せば死にはせん。」
ジイさんの言葉を聞いて、ストロさんはキョロキョロと周りを見渡す。
「で、でも水なんて・・・」
混乱している様子のストロさん。慌てすぎて、ここがどこなのかわかっていないらしい。
「彼を・・・助けてあげてくれませんか?」
「やったのお前だろ。」
助けるように言ったのはココア。しかし犯人もココアである。
「はあ・・・」
迷う男やストロさんの横を抜けて、唐辛子粉まみれの男性へと近づく、ストロさんの発言からするにウミツキという名前の室長のようだ。
「おらあっ!」
もがき、苦しむ男性にやくざキックを決める。
「うあわああああああああっ!」
後ろへと倒れる男性。それを受け止めるガイアはいない。
彼を受け止めるのは、
「ウミツキ室長!」
プロタスリティスが帰っていったオケアノスである。
「ウミツキ室長ぉぉぉぉぉぉぉ!」
「特務室長に俺はなる!」
ストロさんの室長の名前の連呼、何かの覚悟を決めた特務室の男の声を、海へと消えていったウミツキ室長はどう思うのだろうか?