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チュカロスの激戦  作者: 旦児
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決着-チュカロサウルス・ディリピエンダVSプロタスリティス・シンクトレンシス-

『先輩!現場にチュカロスが飛んで行ったので退避を・・・え?だから!アドバイザーの指示で・・・』

 通信の向こう側で混乱しているストロさんの声が聞こえる。

『到着まであと5秒。』

 オペレートしてくれるのはココア。冷静な声が今は頼もしい。

「ぐっ!」

 目の前にはいつの間にやら上陸したらしいワニのような口と、恐竜らしい体をしている恐竜型怪獣プロタスリティスが見える。

 このままではぶつかる。だがこちらにやれる事は・・・ない。

 なぜなら慣性で飛んでいるだけだから。チュカロスに翼はないから。

「すまん!」

 着地しようと伸ばした前足がクリティカルヒット。

 プロタスリティスは吹き飛んで海へと帰っていった。

 丁度よいブレーキを利用して、スピードが落ちたところで、レバーとペダルを操作して地面をつかむ。

 ズガガガガガガと地面が削れる衝撃を感じながらもどうにか無事に着陸した。

「ノリで行けるもんだな。」

 ココアとジイさんのいう事は正しかったようだ。

『あー!道路が!水道が!』

 着地で破壊された道路、水道管も傷ついたのか、地面から水が噴き出し、スピーカーからはストロさんの声が割れる。

『壊しても構わんと言ったではないか。』

『それはプロタスリティスの事で・・・』

『大丈夫です。ストロベリーさんが許可をくれた音声は残してあります。あとで一緒に聞きましょうね!』

『あー!』

「うるせえ!」

 スピーカーから聞こえてくる声を一喝する。

 まだ相手を倒せたわけではない。プロタスリティスが飛んで行った海を見る。

 そこには吹き飛んだ衝撃を吹き飛ばすように首を振っているプロタスリティスがいた。

「ココア、まだ敵が動いてる。」

『そのようですね。』

「何か武器はないのか?」

『あるわけないじゃないですか。』

「いや普通バスターキャノンとか」

 でかい恐竜型ロボットには付きがちだ。

『ないです。』

「レーザーブレードとか。」

 ロボットと言えばブレードだろう。ソードでも良いが恐竜にはブレードか、なんならカッターでも構わない。

『ないです。』

「ビームとか。」

 やっぱりロボットにビームは欠かせない。

 ビームのないロボットはロボットとは呼べない。

『銃刀法って知ってます?』

「お前のリコーダーはどうなんだよ!」

 ビームリコーダーを持つようなガイノイドに、そんな常識を問われるとは思っていなかった。

『ストロベリーです。リコーダーは楽器であり、銃でも刃物でもないので銃刀法違反にはならないと思われます。』

「うるせえ!」

 事情が分かってないやつは黙ってろ。

「じゃあどうするんだよ!」

『ココアです。確かにチュカロスに武装はされていません。』

 じゃあ戦いようがない。

『でも重いです。』

「うん?」

『重いんですよ。チュカロスは。生物なら・・・耐えられないんじゃないでしょうか?』

「・・・」

 近づいてくるプロタスリティスを見る。

 大きさは20メートルほどだろうか?でかい事は間違いないが、チュカロスほどのものではない。

 レバーを思い切り引くと、ぐぅっと浮遊感がある。

 チュカロスが後ろ足で立ち上がったのだ。

 視線を下に向けると、目を丸くしているプロタスリティスが見える。

 おそらく俺は世界で初めて「え?」ってなっている恐竜を見た人間だろう。

「おりゃああ!」

 そのまま下に前足をたたきつける。

「ぎゃああお!」

 本気で焦って逃げるプロタスリティス、砕ける地面。

「外したか!もう一丁!」

 また立ち上がって、叩きつける。

 当たらない。大雑把な攻撃なので仕方ないが。

「ぎゃあああおっ!」

 またプロタスリティスが逃げる。砕け散る地面、吹き出す水、

『あー!うぁぁぁぁぁぁぁあ!水道がああああああああ!』

 叫ぶストロ。

「逃がすか!」

 しかし、三度目の正直と叩きつけた前足は、プロタスリティスもよけ切れなかった。

「ぎゃあああああ!」

 チュカロスの前足がプロタスリティスの薬指を踏みつけた。

 小指が退化しているので、一番端の指は薬指だ。

 これにはたまらずプロタスリティスが叫び声をあげる。

「あ、ごめん。」

 あれは痛い。下手したら骨折している可能性もある。

「ぐぅぅぅぅぅ・・・」

 プロタスリティスは警戒しながら、徐々に後ろに下がっていく。

「ぐぅぇあ!」

 負けプロタスリティスが吠えると海へと帰っていく。

「とりあえず撃退成功って事で良いのか?」

『プロタスリティス・シンクトレンシス型怪獣の撤退を確認。作戦は成功です。』

「なんかゲームっぽいなあ・・・」

 言い方がなんだかゲームのようだが、まあ気にしても仕方ない。

「とりあえず、終わったんだな・・・」

 シートに背中を預けて軽く目を閉じる。

「これで・・・」

 世界は救われた。

 一人の英雄と一体の巨竜の手によって。

 だがこれは大いなる戦いの序章に過ぎなかったのだ。

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