94話「秋季大会編 ~決勝戦だぞ!④」
────リョーコの戦い!
カラー付きの水墨画で描かれた山、岩山、木々、川が古風な雰囲気を醸し出す風景。
リョーコは「いっせーの!」とオーラを溜め込み、スラッシュスレイヤーを放って寿絵ヌリエを狙うが巻物による座標転移でかわされる。
連なる巻物で遠のいていくヌリエ。クスクスとせせら笑う。
「お馬鹿な脳筋ちゃん! そんなんじゃ絶対私に勝てないわ!」
ヌリエにとってリョーコの単調な攻撃は無駄そのもの。
バカみたいに斧を振るって勝手に力尽きて、これまで努力してきた事が無駄だと愕然していくのだ。これまで散った対戦相手のように……。
だから、これからどう絶望に歪んでいくか胸が躍る思いだ。
「そら! 大百足の画、お行き!!」
ヌリエが扇子をかざすと、水墨画の山の背後から這い出てきた巨大な黒ムカデが「キシャキシャー」と飛びかかってくるが、リョーコは「せいやっ!」と斧で長身を長々と斬り裂いていって、真っ二つにすると共に墨汁の飛沫をぶちまけた。
まさか大物を真っ二つとは、さすがに予想だにしなかった。
「ならば質より量かえ! 魑魅魍魎の画!!」
ヌリエは水墨画の小鬼たちを地面から数百匹創作して、一斉に襲いかからせる。
「せいやっ! せいっ! せいっ! せいやーっ!!」
それでもリョーコは振るい続ける斧で数十匹ドッカンドッカン吹き飛ばしていく。
ヌリエは怪訝な顔をする。普通ならとっくに息を切らしてもおかしくないのに、この体力とパワーは異常だ。
まだ余裕があるのか……? 一体どこまでスタミナが続く?
「今度はこれでどうだい? 大津波の画!!」
扇子を手に、縦に振るうと水墨画の大津波がドバ────ッとリョーコへなだれ込む!
地を揺らしながら怒涛の勢いで飛沫を散らしながら迫ってくる莫大な水流は正に自然の脅威そのもの!
「いっせーのォ……」
斧を引いてオーラを溜め込み、地響きを引き起こしていく。そして跳躍!
ヌリエは目を細め「斧一本でどうにかなると思うか?」と蔑む。
「ローリング・デストロイヤ────ッ!!」
まるで水車のように前転宙返りで斧を振り続けるリョーコは、見事に津波を裂きながら突破していく。
「な、何ッ!?」
縦回転によって、横に広がる津波を切り開きながら乗り越えたんだ。
その事に驚いているヌリエを、斧が裂く!!
ドゴオオオォォォン!!
リョーコの斧が大地を縦に割る!!
が、しかし惜しくも巻物に切り替わっていた!?
後方で縦に広げられた巻物からヌリエが浮かび上がってくる。焦燥が滲む。
苛立ちを隠せず爪をガリガリ齧る。
もうとっくに他で決着はついているかもしれない……。
「なんで、こうも粘ってくるのかしら? お行き!! 百鬼夜行の画!」
数百もの大軍の鬼や火車など色んな妖怪たちをけしかけても、リョーコはことごとく断ち割っていく。以前余裕と見えてしまう。遊ばれているんじゃないかとムカムカが溜まってくる。
他のメンバーに「おっそいな!」「無敵の空間使いでこれかよ?」と失望されるのもヌリエのプライドとしては許せない。
だが、それぞれ空間結界と繋がらず、自分の状況しか分からないのが地味に辛い。
もうとっくに他は終わってるかもしれないと疑心に駆られていて、焦りと苛立ちを募らしていく。
はやくさっさと殺してしまわないと……!!
「ああ、もう!! さっさと死んでよ!!」
「やなこった!」
リョーコは三日月の刃を飛ばし、水墨画の妖怪を斬り裂きながらヌリエへ向かう。本来なら巻物で座標転移をする所だが、余裕のなくなっていたヌリエは扇子を投げ捨て、大きな筆を描いて手にする。
縦一線に墨を塗ると、三日月の刃を裂いて後方で爆ぜた!
「……塗り潰してやるんだからッ!! 黒墨の斬画ッ!!」
ブンブン振るうと、黒墨の軌跡が飛んできてあらゆるものを裂いていく。
リョーコは慌てて避けに徹してかわしていく。
巻物による座標転移でヌリエは背後へ回り込み「死ね!!」と筆を振るう!
ガシッ!!
なんとリョーコが左手で、筆を握っている方の手を掴んだッ!
「なっ!?」
グイグイもがくが微動だにしない。焦りが一気に募る。
「短気おこしちゃったねー!」
「は、離せッ!!」
「これなら座標転移もできないでしょ? しても一緒に移転するだけだし」
「なっ!?」
ヌリエは絶句した! ま、まさか、これを狙って!?
リョーコは「いっせーのォ……」と右手で握った斧に凄まじいエーテルを溜め込んでいく。稲光を迸らせ、地響きしていく。
ヌリエは「離せ! 離せ!! このォォォ離せったら!!」とリョーコの握る左手を開かせようと必死に殴ったり引いたりするが、怪力な上に頑丈なのでウンともスンともしない。
やがて溜まっていくエネルギーによるゴゴゴゴゴ……と鳴り響く音に、ただただ恐怖が胸中を圧迫するかのように膨れ上がってくる!
冷や汗がブツブツ浮かぶ!
「や、止めてくれ!! 降参するから! 降参するから離して────!」
甘っちょろい考えで一瞬でも離してくれれば、二度と近寄らない! 近寄るものか!
思いっきり間合い外から攻撃を延々と繰り返して嬲ってやる!! こっちは空間結界使いなんだ!!
「無限の体力と魔法力でじわじわいたぶってやる!! そして最後に思いっきりぶっ殺してやる!! ぶっ殺してぶっ殺してぶっ殺してぇぇ────……!!」
歯軋りし、恨みがましくリョーコを睨む!
「あんた思ってる事、顔と口に出てるわよー」
「あっ!」
しまった! と青ざめるも遅い!
「待て待て!! 待ってくれ!! 頼む!! 離して離して離してぇぇぇ────」と見苦しく絶叫近い命乞いを繰り返すが!
「クラッシュバスタ────ッ!!」
構わずリョーコはヌリエの腹にズゴンと渾身の一撃!! ヌリエ堪らず大きく口を開けておびただしい吐血をぶちまけた!! ギハアアァッ!!
哀れヌリエは爆破四散して棺桶化────……!
「っても試合だからね? 命乞い自体意味ないからー」
斧を肩に乗せて清涼な笑みでウィンク! うふっ!
「「「ドワアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」」
闘技場の観戦客は歓声の大音響を沸かせた!
そんな折、ひっそり観戦していたマミエは微かに微笑んでグッとガッツポーズをした。
モニターに映っているリョーコの大きな胸が魅惑的に揺れる。
大の字で壁にめり込んでいる変態オオガは血眼でガバッと顔を上げた!
「そのおっぱい揉ませろ────ッ!!」くわわっ!
「寝言さ、寝てから言うだ────────ッッ!!!」
「てめーは一生寝てやがれ────────ァ!!」
すかさずチササとカレンのダブル飛び蹴りでドガンッ!! 更に壁にめり込み破片が飛び散った!
ぎはぁ……、オオガは再び意識を失った……。
今回のキャラ紹介!
『寿絵ヌリエ(魔道士)』
タラコ唇で据わった目をしていて小太りの典型的なオタク女子だが、空間内では水墨画調の流れるような緑色のロングのお嬢様で超絶美人。
水墨画が得意。様々な水墨画のキャラを生み出して攻撃できる。
ややサディストなので、無駄にあがく対戦相手を見るのが愉しい。そしてプライドも高く、自分の思い通りにならないとイライラする。苛立つと爪を噛む。
墨画監獄(『空間結界』で水墨画の世界を展開)
龍巻の画(水墨画の竜巻で体当りさせる)
大百足の画(巨大なムカデの妖怪)
魑魅魍魎の画(何百匹もの子鬼たち)
大津波の画(水墨画の大津波で敵を押し流す)
百鬼夜行の画(色んな妖怪の大軍)
黒墨の斬画(槍のような大きな筆で墨の軌跡による斬撃)
威力値:21600