93話「秋季大会編 ~決勝戦だぞ!③」
────フクダリウスの戦い!
デジタルで描かれたデフォルメな城と家の風景、描写のレベルの高さが窺えた。
デフォルメ調の矢が四方八方と襲いかかってくるが、フクダリウスはメキメキと五メートル強の筋肉質に膨れ上がって、鋼鉄よりも硬いその体で弾き返してしまう。
依然と傷すらつかぬ大男に、巨大な王様ロボこと小露戸ロハダは驚き見開いた。
「グフフッ! そのようなモノ刺さらんぞ?」
ズンズン、と太い足を踏み出して地面に足跡を刻みつけていく。
「面白い!! 相手にとって不足はなし────!」
グアッと大きな拳を振るうが、フクダリウスは片手で受け止め、反対側となる足が地面にめり込んだ。
逆に「ぬうん!」と一本背負いで弧を描きながら地面に叩きつけた!
ドォン!!
大地から飛沫を吹き上げ、ロハダは沈んだ!
投げる際に落としていた斧を拾い上げ、オーラを纏わせて「かあっ!!」と振り下ろす!! ザクン!
しかし!!
なんか半透明のウィンドウみたいなものが真っ二つに裂けただけだ?
連なるセル画のように、倒れたままのロハダの絵が後方まで続いていた。そして一番奥で本体のロハダが起き上がっていく。
「今のはレイヤー画面で映し出す事で自分の座標を転移させたのだー! これが空間使いの『座標転移』ッ!!」
「ぬうっ!?」
忍者のように入れ替わるようなレイヤーの術を使っているようだぞ。
ナッセと戦ったイイダロウと同様の事が、ロハダもしてきたのだ。セル画とレイヤーと違いはあるが転移の構造は全く同じだ。
ボコッと巨大なチェスの駒が周囲から浮かび上がってきた……。
兵士、騎士、僧正、城兵、女王と種類が豊富だぞ。
王様であるロハダが「進軍ッ!」と命令すると、フクダリウスへ一斉に襲いかかった!
しかしフクダリウスは斧を豪快に振り回してバガガガッと砕きまくっていた!
「延々とこうしてられるんですぞ────!!」
ボココッと無数の駒が浮き出ては、フクダリウスへ絶えず飛んでいく。
兵士、騎士、僧正、城兵、女王による永久総攻撃だッ!!
破壊しきれず、いくつかフクダリウスに被弾していく!
「ぬおおおッ!! フクダリウス・ハリケーンッ!!」
扇風機のように戦斧を振り回し、凄まじい旋風の光線を放ってことごとく駒を打ち砕きながらロハダへ!! しかしブチ砕いたのはレイヤーだ!!
その側でレイヤーが現れ本体のロハダが余裕綽々で抜け出た。
しかし戦斧が目の前に!? 驚きに見開く! しかし裂いたのはレイヤー! 後方で爆撃のように城がバゴオオォォンッと爆ぜた!!
そして戻ってくる戦斧を受け取るフクダリウス。
「手元に戻ってくる追尾弾かっ……!」
「さっきのがフクダリウス・トマホークだ! そら!!」
再び投擲し、ロハダは「くっ!」とレイヤー化する。それを裂いた戦斧が後方へ飛び去って大規模の爆撃!
戻ってきては投擲し、戻ってきては投擲し、その繰り返し連続爆撃で追い詰めていく。
「無駄だと言ってやるぞ────!! 延々と僕と鬼ごっこでもするか────!?」
「このまま尻尾を巻いて逃げ続けるのか?」
「な! い、言ったな~!」
レイヤーを連ねながら爆撃をかわしながら、ロハダは屈辱だと顔を歪ませる。
確かに秋季大会の規定では対戦時間は六〇分まで。
相性次第で延々と勝負付かない場合は、そこまで打ち切って生き残りの数とダメージ判定により勝敗を決めていくのがある。
それよりも、ロハダにとっては他の仲間が勝ったのに自分だけ逃げ続けて判定勝敗になるのだけは避けたかった。恥とさえ思った。
「よかろう! だが、後悔するなよ!? 接近戦ができぬとは言っておらんからな────ッ!!」
なんと目の前にレイヤーを生み出し、そこへ飛び込んで消えた! その瞬間、フクダリウスの背後にレイヤーが現れロハダが背中を殴りつける! ドゴッ!
「ぬう!!」
振り向きざまに戦斧を振るうが、そこはレイヤー! 逆に死角からロハダが現れて拳の連打を脇に叩き込む! そして即座にレイヤーへ消える!
その連続座標転移によるヒット&アウェイ戦法により、フクダリウスを全方位からボコっていくぞ!!
「これがエターナルキャスリングだ────ッ!!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!
蓄積するダメージにフクダリウスも「ぐわああああッ!!」と叫ぶ!
あの巨大な王様ロボの打撃攻撃は、普通の人ならば一撃で潰れたトマトのよーにペシャコンに潰されるほどの攻撃力があるぞ。
何百発も殴られ続けて右往左往と揺れるフクダリウスの頑丈さが異常なのだ。
「はーっはっはっはっは!! さっきまでの威勢はどうした────ッ!!」
「ぐわああああああああああああああーッ!!」
おまけに向こうは循環し続ける空間結界内での行動故に、無限の体力と魔法力で奮えるのだ。
これでは力尽きるのはフクダリウスのみとなる。
血塗れになってフクダリウスも膝をつく。
「これで終わりだぁぁ────ッ!!」
四方八方にレイヤーが浮かび上がり、どこから来るのかわからない状態でロハダの渾身の攻撃が振るわれる!!
するとフクダリウスは「ぬうう……!」と立ち上がり、戦斧を両手で握り!
「今度は貴殿が受けてみるがいい!! このワシの懸けの攻撃をなッ!!」
「今更何をしても無駄だ────────ッ!!」グワオッ!!
────フクダリウスは想いを馳せる!
準決勝戦でなすすべもなくシスコン変態男にボコボコにされた屈辱は忘れられない。
あの時はナッセが身代わりに大爆裂を撃ってくれたが、今後そうそう都合よく通用するとは限らないだろう。分かっていた。
鳴門大渦があるのは知っているだろう? 鳴門海峡で常時巻き起こっている凄まじい渦潮をなッ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!
家族旅行で通りかかった時に、その自然の凄まじさにフクダリウスも目を奪われたほどだ!!
そこで恐るべき特訓を思いついたぞ!
……例の某漫画を連想してはいけない!! いいなッ! メタァ!
なんとフクダリウス自身が海峡へ沈み、フクダリウスハリケーンを繰り出すというものだ!
水中でそれをやるのは至難の業を極め、最初は無謀かと挫折しそうになった。
ゴボゴボ溺れそう……。
「パパ────負けないで────っ!!」
我がカワイイ娘の応援が海中にも響き、カッと気力を蘇らして鳴門大渦をもう一つ再現してみせた────!
「これが鳴門海峡で編み出した新技……ッ!!」
フクダリウスは戦斧を突き出したまま、キリモミ回転していく! なんと彼自身が竜巻になったかのように全身回転でブンブンブンブン振り回し続けていき更に更に加速を繰り返す!
大自然かと思う規模の旋風が巻き起こっていって、周囲の地面から飛沫を巻き上げて螺旋に流れていく!!
『フクダリウス・サイクロンだぁぁああッ!!!』
ビュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ────────ッッ!!!
それはたちまち台風のような規模に極大化していって空間全域を大渦に巻き込んだ。
さすがにこれではレイヤーによる座標転移など関係なくロハダは「うぎゃああああああああああッ!!!」と巻き込まれて旋風によってグリングリン振り回されていく。
するとフクダリウスは自ら旋風に飛び込んで、そのロハダを捕まえ逆さまにガッキィンと極めた。
「見ているか! 我が妻ミカコ、我が娘リササ! 今まで多忙で見せてやれなかったパパの勇姿をついに見せてやれる日がやってきた────ッ!!」
気合いを入れて、そのまま二人キリモミ回転で急降下────────!
グルグル回転しながらロハダは見開いたまま「うわああああ!!」と絶叫!
「フクダリウス・ツイスタードライバーッ!!」
ズガガァ────ンッッ!!!
超重量のフクダリウスが全体重を乗せたまま、ロハダの脳天を地面に叩きつけた!!
深く地面を穿ち、高々と飛沫を噴き上げて破片が飛び散った!
逆さまで頭上を埋められたロハダは表情を歪めて「ゴガハッ!」と吐血し、そのまま横たわってしばししてドンと爆散して棺桶化!
「勝ったッ!!」
フクダリウスは勝ち誇ったかのように吠えたッ!! ドン!!
……なんか色々とツッコミを禁じえないが、勝ちは勝ちだ────っ!!
「「「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!」」」
歓声湧き上がる観戦席で、フクダリウスの妻ミカコと小学生の娘リササも応援に来ていたのだった。
娘リササはパアッと明るい笑顔で立ち上がって手をブンブン振った!
「やった────っ!! 最強のパパは絶対負けないんだ────!!」
「あなた……」
妻ミカコはクスッと嬉しそうに微笑む。
一方、大の字で壁にめり込んだまま変態オオガはグッタリ……。
今回のキャラ紹介!
『小露戸ロハダ(魔道士)』
猫背で暗く沈んだようなメガネの優男。ロン毛で手入れもされてなくて、無精ヒゲも少々。顔立ちも細々として貧相な印象。空間内ではデジタルでコミカル調のデフォルメ王様ロボ。
王様ロボは元はチェスのキングを模しているデザイン。
コロコロ派。今でも愛読している。毎度の付録にウッキウキ!
玩具監獄(『空間結界』でデジタル調のデフォルメ玩具世界を展開)
オモチャアロー(デフォルメ調の大きな矢で攻撃)
チェスタクティス(チェスの駒を浮かせて、四方八方から敵にぶつける)
エターナルキャスリング(レイヤーによる連続座標転移によるヒット&アウェイ戦法で敵の死角に回り続けボコボコにする)
威力値:15000