表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/300

9話「ゴールデンボール破壊!!」

 時間と連動して内部の明るさが変化する安全地帯(セーフティゾーン)となるフロアが『洞窟(ダンジョン)』にいくつか存在する。

 そこではモンスターが一切出没せず、飲料となる湖を始め、果実がなる草木が備えられている。なので休むに最適だぞ。全くもってゲームだなぞ。


 ここは川辺風の『洞窟(ダンジョン)』なので、中心を大きな川瀬(かわせ)が流れている。その河原は砂利(じゃり)一帯、そこから離れるほど草の密度が増えていく。あちこち果実の木も点在。

 もう夜なのか暗くなっていて、遥か高い天井に点々としたヒカリゴケが星々のようにキラキラしていた。



漆黒の魔女(アリエル)ってそういう趣味かなぞ」

「……かもね」


 薄暗くなっているフロアでヤマミと並んで焚き火の前で石に腰掛けてカレーを美味しく召し上がっていた。

 その反対側でミッカ、ナカシ、チキクが納得いかない顔で自前のカレーを黙々食っていた。その後方には三人で寝られるくらい大きなテントが張られている。


「なんだよ。オレたち誘っておいて辛気臭いなぞ」


「うっせー!! 何なんだよ!! あの半漁人を素振りで倒せるとかドラゴンオーブのキャラかよ!」

「そうよ! アンタらレベルおかしいわ!! ムキー」


 立ち上がるミッカ。それに巨乳をボヨヨン揺らしてナカシがキーキー喚く。

 しかしチキクは静か神妙にカレーを食べていた。


「チキクー、オメーもなんか言ってやれよ!」

「楽でいいでふ。あいつらに任せとけば簡単にレベルアップできるでふふ」


 ナカシが「ちょっと!」と巨乳をブルンと揺らす。……ってか揺らしてばっかだなぞ。



「レベルアップした実感あった? つまりそう言う事よ……」


 ヤマミの指摘に、チキクが「何でぶっ!!?」と身を乗り出す。

 ミッカたちは悶えるように「そんなぁ~!」と頭を抱えた。まさかここまで力の差があるとは思っていなかったのだろう。それに加えて、全然経験が積めないのだから踏んだり蹴ったりだろう。

 まぁ、運び屋としてこき使おうとした報いといえば……。



「そろそろ時間よ」


 ヤマミは収納本から小さな家の模型を取り出す。スイッチを押したそれを地面に置く。

 するとボンと煙を噴き上げて二階建ての家がでっかく現れた。


「ゲェ──ッ! な、なんだこれはーッ!?」

「なに──これ──!?」

「でぶあ──ッ!!?」


 ビックリしてミッカたちは揃って目を飛び出させた。


「オレたちはコテージ(これ)で寝るよ。そのテント三人分しかないし……」

「「「あーそうでしたー!!」」」


 ミッカたちは揃って額に手を当てて後ろへ仰け反った。



 …………その深夜。焚き火は消されていて、明かりは天井のヒカリゴケのみになっていた。

 その下でちょっと大きいテントと、二階建てのデカいコテージが建っていた。その間をコソコソ一人の人影が忍んでいた。


「デュフフ……。こんな立派なコテージ建てやがってぶ! しかし……あの美人(ヤマミ)放っておくものかでぶ」


 げへへ、だらしない顔でチキクがコテージの外壁をコソコソ這っていた。

 寝室らしき位置の窓を静かに開けてカーテンを少しどけると、なんとナッセとヤマミが並んで添い寝していた。チキクは見開いた。


 な、なんだでぶ~~!? ヤツらデキてんのかでぶ~~~~!?


 カッとしたが、よく見れば二人ともパジャマだ。今はヤッてないのだろう。

 落ち着いたチキクは「へっへっへ」とソロリと床に足を下ろす。まだ二人は気付いていないようだ。


 ヤマミた~ん! 今から夜這いしてメロメロにしてあげるでふ!

 今晩から身も心もオデのもの! 忘れられなくしてやるでふ!


 げっへっへと下心を丸出しに、ヤマミへコソコソ近付いて布団に手を……!

 するとヤマミはカッと見開き、目にも映らぬほどの超神速の軽いキックでビシッ。それはチキクの股間を痛烈に強打!


「いぎゃぴぃ────────────ッ!!!」


 グシャア!! ナニが無残に砕けた。



「……寝込みを襲うなんて愚かね」

「なんだなんだ?」


 ナッセことオレは眠い目をこすり、ヤマミの向こうで床に倒れているチキクを目にした。

 股を抱えてピクンピクン悶え苦しんでいた。泡も吹いてて白目だ。


「しょうがねーなー治すぞ。ナース」


 チキクへ歩み寄って簡単な回復魔法をかけた。これで傷は塞ぐはず。



 朝に連動するように徐々に明るくなっていく安全地帯(セーフティゾーン)

 朝霧立ち込める川辺のフロアは時間と共に明るみを帯びていった。そして午前七時────。


「な、何があった!?」

「どういう事!?」


 朝飯の準備の時、ミッカとナカシが驚き戸惑う。

 なんとチキクがクネクネ太った体をくねらして「うふーん」と片目ウィンクして唇を窄めた。


「おはようでぶわー! でゅふほほほー」


 唖然とミッカは口を開け、ナカシは巨乳をブルブルと揺らし絶句した顔を両手で挟む。


「「オカマになってる────────ッ!!!」」


 オレは苦笑い。ヤマミは頬を膨らまして「フン」と腕組み。

 夜這いしてきたチキクのナニを潰して、それを半端に治療したせいで玉ナシになってしまったぞ。その影響でオカマになったらしい……。

 これで不貞(ふてい)に寝取る事もできないだろう。


 めでたしめでたしぞ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ