89話「秋季大会編 ~準決勝戦だぞ!⑦」
なんとここまできて巌穴兄妹は、実はマイシやナッセのように人外へ変身するタイプだった!?
巌穴オオガは妖怪では有名な河童!
巌穴チササはこれも妖怪で有名な天狗! しかもロリ巨乳から一気に高身長グラマーへ変貌だぞ!
並々ならぬ威圧が滲み出ていて、気圧されそうだ……!
「むうッ……!」
汗を垂らすフクダリウスは河童となったオオガを見据え、戦斧を突き出して構える。
彼もモリッカと二人で戦うしかない事を悟っていた。
先ほどのナッセは『血脈の覚醒者』のカレンと戦い、恐らく戦えないほど重傷になっているとも……。
「お互い二人同士ですしね~! ここは頑張っていきましょう!」
「ああ! そうだな!! ここらが踏ん張りどころだ!」
大地を揺るがすほどのバケモノ二人を相手にフクダリウスとモリッカは厳しい戦いを覚悟した。
例えれば満身創痍のまま、火竜王マイシや妖精王ナッセ並のバケモノとやり合うようなものだ。もう後はない。
「行くぞォォォッ!! ぬううううんッ!!」
昂ぶったオオガが吠え、力んだ尻からブフオ────ッと水鉄砲を噴いて大地が爆ぜた! その勢いによって猛スピードでフクダリウスへ迫る!! オカマサの比じゃねぇッ!!
大きな張り手が迫り、フクダリウスは憤怒とオーラ纏う戦斧を振るう!!
ズガッ!! ゴゴゴゴゴゴゴゴォン!!
激突の瞬間、周囲に衝撃波が荒れ狂い、岩盤が捲れ上がって粉々と吹き飛ぶ!!
全身を突き抜けるような衝撃がビリビリ響く! まだ拮抗してるッ!
「よし! まだイケるぞッ!!」
しかしオオガは張り手で突き出している側の肘がメキメキと尖っていって銃口を象る。そこからドッと水鉄砲が噴出ッ!!
なんと重量級のフクダリウスをも突き飛ばす!!
それでも「ぬうッ!」と踏ん張って地面に跡を刻みながら数十メートル後方へ滑っていく!
「そうこなくてはなッ! ラッシュ乱嵐ッ!!」
更に両肘の銃口からロケットのように水鉄砲を連射する事で、その超加速された張り手の超絶乱射がフクダリウスの巨躯を完膚なきまで打ちのめし、血飛沫が飛び散った!!
数百発もの超高速張り手が巨躯のフクダリウスをも右往左往と揺らすほどだ!!
「ぐわあああああああああああ!!!!」
「これで終わりだァッ!! ストライク撃嵐ッ!!!」
大きな張り手がフクダリウスの顔面を掴み、肘から水鉄砲を噴出して大地に叩きつけてズガアアァァァンと岩盤を捲れあげて飛沫や粉塵を高々と噴き上げた!!
更に爆心地から放射状の亀裂が全域に広がっていって粉塵が次々と噴き上がっていく!
そんな壮絶な破壊力に、観戦客は「うわあああああああああッ!!」と絶叫!!
オレも慌ててエレナとカレンの棺桶を抱えて、亀裂から飛び退いた。ふう……。
とは言え、正直予想外だぞ。
「こっから本領発揮だべ!! 覚悟してけれ!!」
不敵に笑んだチササは掌を横に差し出すと、ビキビキッとタケノコが急速で成長を遂げて竹に伸びていって穂先が鋭利な刀身を形成して槍を象っていく。
「うわぁ……、竹を生み出したんですか?」
「んだ! これがオラの本来の得物、天狗槍だべ!!」
ヒュンヒュン回転させながら軽やかに振り回していく。
見た目通りのただの竹槍ではない。穂先は完全に鋼鉄のソレと変わらない形状。
ナッセのフォースを結晶化させた花畑から舞う花吹雪を収束させて太陽の剣などを生成するのと同じだとモリッカは察した。
人間時のナッセは『刻印』によって生成しているが、妖精王になった場合はイメージに描いただけでそれ以上の性能を持った武器を生成できるのだ。
前置きしておくが魔法陣など『刻印』に頼らず、自力で具現化できるには途方もない高い魔力が要るのだ。
それは人間が一生かけても届き得ないもの……。
具現化に必要な魔力が五〇〇とするなら、人間は生涯を懸けて鍛えてさえ一五〇で精一杯。だが妖精王は一〇〇〇を超える。余裕だ。片手間で生成できる。
それだけでいかに人智を超えているのかが分かるのだ────っ!!(力説)
「いっくぞ────!! ストーム超破竹────ッ!!」
気合を漲らせて吠えたチササは竹の槍を突き出し、その穂先を突如と伸ばしてきた! モリッカは慌てて横へ身を逸らす!
そのまま伸び続ける穂先は後方の遺跡を貫いてズドドドドドドドと粉塵を巻き起こして崩壊させていく!!
そしてこのまま豪腕でもって槍を横薙ぎへと振り回す!!!
「なっ!!?」
長────────く伸びた穂先が全ての遺跡と瓦礫を斬り裂いて、ことごとく粉々に崩壊させていった!!
まさに大嵐が吹き荒れるが如しの横薙ぎだ!! ズズズズズ!!
しかし間一髪、モリッカは飛び上がってかわしていた! するとチササはシュンッと槍をタケノコに縮ませていた!? 速い!!
誰もが絶句する中、ニヤッと笑うチササ。
「まさか超高速伸縮自在竹ッ!!!?」
「今度は連続で伸び縮みすっぞー!! キツツキ超破竹────ッ!!」
槍を突き出したまま、シュバババッと穂先を超高速伸縮してモリッカに襲いかかる!!
遥か地平線にまで光線のように連射式貫通破壊が突き抜けていって、奥行きの風景が見通せるほどに空いてしまったぞ!
ヒュオオオオオオ……! 奥行きまで烈風が吹き抜けていく!
なんという凄まじい貫通力……ッ!!
モリッカは電撃を纏って地面を滑りながら着地して、ズンと地盤がめり込む。
ギリギリだったようで膝を付いて息を切らしていた。
「想像以上ですねー! まさかここまで強いとは……!」
黒いシルエットのオオガとチササがズンズン歩んできて、戦慄さえ覚えさせた。
マイシとヤマミと万全のナッセがいるなら何とかなったと思う。
「だが…………ッ! マイシが遅刻したせいで…………ッ!!」
今頃、申し訳なさそうにマイシがベンチへ入ってきた。
監督兼校長ヨネは「遅かったですな……」と労う。同じチームのヤマミ、コハク、リョーコ、ミコトは振り向く。
マネージャーのスミレは「あらあら~遅かったですね~」とドリンクを渡す。
「遅れてて悪いし……。電車が人身事故で九件もあってかなり遅延してたし……」
「……九件って多すぎないですか!?」
「な、何があったんだYO!?」
話によると、どうやら九人ぐらい異世界転生したようだ……。
エレナがそうだったように、この世界では死ぬと異世界へ転生されるシステムなのは健在なのだ────っ!(力説)
「異世界転生ブームですか……」ふう、とため息のコハク。
「ってかドラゴンなんだし飛んだらー?」
呆れたリョーコに突っ込まれて、マイシはハッと気付く。おい!