81話「秋季大会編 ~かなりヤバいチーム!?」
十月からは夜が長く涼しくなっているなぞ……。
もうクーラーの世話が完全に途絶えるくらいの境といった所か。
オレはヤマミとフクダリウスの三人で、オカマサとドラゴリラとレストランで会合していた。
「話があるから来てみれば、その様子はただ事ではないな」
テーブルの反対側でオカマサとドラゴリラは俯いたまま身を震わせていた。まるで怖い目にあったかのような雰囲気だ。
ようやくオカマサは口を開く。
──あれは恐ろしい出来事だったよ、と!
マニアミリタリー学院は、自衛隊とも通じている軍事機関であり、軍人養成所でもあった。
戦力としては安定した高評価で政府からの信頼も厚い。
ありとあらゆる銃火器に精通し、その扱いを十二分に熟知していく為のもの。
これは日本に限らず、世界中でも必ずあるであろう養成所である。
もちろん殺傷力の高い銃火器が使えるから強い、というワケではない。
あらゆる情報を収集し、敵の戦力を徹底的に分析し、対抗する戦略と戦術を整え万全に挑む。単純に言えば効率厨とも言える。
勝つ為にはありとあらゆる手段を模索していくのが定石。
勝てれば官軍。負ければ賊軍。それが当たり前の厳しい世界で彼らは奮戦する。
その気迫と気概には他の学院も「戦いたくない」と思わせられるものだ。
────────だが初戦敗退!!
彼らはこれまで全国にも勝ち抜くほど安定した戦力で誇っていた。
学院設立してから初戦敗退など全くなかった。ある意味無敗である。むしろ全国優勝も二回三回あるほどだ。
「常識が通じなかった…………!」「せや…………!」
唇を震わせ顔面蒼白のオカマサとドラゴリラ。
オレもそんな緊迫した雰囲気に戦慄さえ覚える。一体どこの学院────?
「『ギャグマンガー学院』! その名の通り、自らをギャグ時空と化す別次元の住民……」
ベンチ(結局三軍)で間近にその強さを見てきた彼らは語った…………!
仮想戦場は森林地帯。熱帯雨林ジャングルだ。湿気が高く、雨になりやすい。そして生い茂る緑は荒々しい。
足元には木の根っこが絡み合い凸凹している。
ぬかるみもあり、沼もそこかしこにあり、足場も安定しない。
そこを迷彩ヘルメットや軍服を来た五人の軍事創作士は数寸狂いもなく規律よく動き、それぞれ機関銃などを手に安定しない足場をスイスイ進んでいった。
そこが軍人の強み。ゲリラ戦を仕掛けるにあたって、不規則な自然はむしろ味方だ。どんな足場もそれぞれに適した歩き方で乗り越え、行く手を阻む植物は自らを守る天然の盾にもなりうる。
森林の茂みは身を隠すにも最適だし、迷彩服が発揮する。
「一人、標的を視認した」「……了解!」
ただ一人、突っ立っていた金髪の天然パーマの男。
赤い菱形の腹かけを着ている以外は裸の男。どう見ても変態で、正気の沙汰ではない無防備。
「つるかめ波ァァァァァ! つるかめ波ァァァァァ!!!」
なんか必死にアレのモノマネを繰り返しているようだ。
呆れてはいたが、警戒して一人だけかを確認し、隊長は射撃を合図した。二人が最適な位置から機関銃で斉射。その射線が交差する十字砲火だ。
ダダダダダダダダダン!!
あっという間に標的は蜂の巣になって、パタリと倒れた。
あとは四人か、と茂みの中で静かに退いていく。そして新しい標的を探そうとする矢先────!
「何をするんじゃァァァァァ!! ものっそい見られて恥ずかしいんじゃボケェェェェェ!!」
なんとソイツは無傷で復活してて両拳を振り上げて血眼で叫び出してきた。思わずビックリ!
二人の軍人は「こちらで食い止める! 後で合流する!!」と立ち止まり交戦。残りの三人は手際よくこの場を去っていった。
足止めは必要だ。想定外の展開で全滅を避ける為に!
しかし足止めも虚しく、その変態が木刀をガムシャラに振り回してきて二人の軍人は「のァァァァァァァァァ!!!」と涙目で叩きのめされた。
その二人は爆散、棺桶が転がった。
「なんつーかアレだな。わざと某漫画の技を真似事して敵を引き寄せる作戦的な? ウンそれで行こう! めっちゃ恥ずかしいですもんアレ」
『坂田キン太』(侍)
金夜叉と呼ばれているらしい。天然パーマの金髪で赤い腹かけを来たほぼ半裸の男。タレ目でやる気のなくて死んだような目をしている。ほぼアイツではないんですかいィィィィィィ!?
威力値:2300000000000000000000
三人の軍事創作士は二人がやられた事を、途絶えた通信機で察した。
そして誰かに向けて手榴弾を放って、耳に劈く爆音と共に強烈な爆発が爆ぜた。
しかし黒く染まった猫の獣人っぽい何かは素っ頓狂に二つの白い目をパチクリさせた。
ブルブルと身を震わせると依然無傷の青猫の獣人に戻った。
手榴弾さえ効かぬ事象に、三人は戦慄した。すると上空から赤いチビネズミの獣人がでっかいハンマーを振り下ろしてきた。
ドカチ~ン!!!
星々を散らすコミカルな衝撃波が爆ぜて、一人の軍人がペチャコンに……。
ドン、と爆散して棺桶化。
『追掛ニャントム』(蛮族)
青猫の獣人に変身できる爆笑系創作士。いつも赤チビネズミと仲が悪いようで追っかけまわすが、実は仲良し。二人の仲悪いコントは笑いを誘う。
ドジを踏んで色々な目に遭うと、それに応じた形状になる。一切のダメージがない。
威力値:54300000000000000000000
『東望ジェウス』(蛮族)
赤ネズミの獣人に変身できるチビ。いつも青猫に追っかけられているが、反撃もする。仲悪いようで実は仲が良い。チーズが好き。
威力値:32700000000000000000000
「やろう!! ぶっころす!!」
残った二人の軍人を血眼で追っかける、緑タヌキっぽい二頭身創作士は腕にはめ込んだ大砲でドカンと狙い撃つ!!
一人の軍人は風穴を空けて爆破四散して棺桶化。
『タヌえもん』(暗殺者)
容姿がアレと酷似するのでノーコメント。
威力値:99999999999999999999999999999
「おっほほ~!」
今度は桃色セミロングの元気一杯な少女が○ーンで走り抜けて、振り下ろした拳で地面を殴る。
なんとデフォルメされた地球がパカッと割れた!
最後残った軍人はその巻き添えを食らって「そ……そんな……!」と絶句したまま爆散して棺桶化。
『典明アレエちゃん』(格闘僧)
あからさますぎてノーコメントォォォォォォ!!!
威力値:9999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999
オレとヤマミはジト目で最後まで聞いていた。
荒唐無稽すぎて呆れながら聞いてたのが現状だ。かなりふざけた選手で、いかな常識も通じずダメージもまた受けない。そして対戦相手をもギャグ時空に巻き込んで倒してしまう。にわかに信じられない事象だ。
でも確かに聞いた通りなら無敵じゃないかぞ……。
「う、うむ……。それは難儀だったな」
さしものフクダリウスも返答には困った模様。
《えー! 臨時ニュースです!! ただいま創作士専門学院の秋季大会にて、ギャグマンガー学院の参加選手に著作権の問題があり、ただ今を持って大会への参加を剥奪処分となりました。それに伴って存在そのものが消滅し…………。あれ? 私は一体何の放送を……?》
「えっ!? えっえええええっ!?」
思わずヤマミと一緒に絶叫してしまったぞ。
やられ損のマニアミリタリー学院のオカマサとドラゴリラは白目で呆然自失した。
※これ飛ばして読んでもたぶん影響ない。メタァ!
ひっそり紹介……。
『マニアミリタリー学院』
ありとあらゆる銃火器が揃っていて、性能を把握していない生徒はいないほど。
綿密な戦略と戦術で敵を追い詰める攻撃型の軍事系創作士。
全く弱くはないのだが、当たった相手が悪かったので初戦敗退してしまった。
昭和初期、優勝候補として全国大会で三回優勝した経緯がある。