78話「ノーヴェンのデート!(前半)」
ここは大阪駅近くの梅田シネマズとかいう映画館があるビル前の、待ち合わせになりそうな場所だ。向こうで観覧車が見える。
オレとヤマミは建物の影からキョロキョロ見渡す。
すると遠目で、膝まで高い円形の花壇にノーヴェンがやって来るのが見えた。
メガネが顔面に一つで、立派な白いスーツを着ていて花束を抱えている。
「かなり目立ってない?」「目立たない方がおかしいわ……」
なんかザワザワしてて視線がノーヴェンの方へ集まっているのが分かる。
当の本人は緊張しているのかしてないのか平然と突っ立っている。
……早くも帰りたくなってきたぞ。
────昨日、メンバー選定のリーグ戦が全て終わった時の事だった。
地区予選開始までしばらく猶予がある。そんな折、放課後にノーヴェンがオレたちに頼み込んできたのだった。
「ナッセサン、ミスヤマミ、二人ともお願いがありマース! ミーは明日の土曜日で、お見合い相手とデートする予定なので警備して欲しいデース!」
「はぁ? なんかあんのかよ?」
「……なんでなの?」
フクダリウスでも、チームメイトのコマエモンとミコトでもなく、何故かオレとヤマミへ頼み込んできたのには驚かされた。
「ミーは用意周到にデートのプランはできてマスが、万が一の事が起きるかもしれまセーン!」
「どういうこと?」
ヤマミは怪訝に眉を顰める。
「何しろ、お見合い相手はミス乙牌々ご令嬢……それを狙う悪徳の刺客が狙って来るかもしれまセン!」
「オッパ……? ってか自分で警備員用意すりゃいいじゃねぇか?」
「さすがにメガネ黒服たちで囲んでたら、デートの雰囲気ブチ壊しデース!」
確かに言えてるわな……。
黒服たちが数人囲んでいたら、何事かと周囲の人々が驚くわ。映画を観に行っても黒服たちも一緒に座るから周囲に緊張走る。ショッピングするにしても黒服たちに囲まれて歩いてたら物々しいしな。
「できるだけ一般人のような服装で、お見合い相手と楽しくデートしたいのデース!」
「……それはいいけど、なんでオレたちだよ?」
するとズイッと前屈みに迫ってくる。
「ヤマミはもうユーのもの。寝取った責任取って引き受けて欲しいのデース! さすればミーは未練なく諦めれマース」
「わ、分かったぞ……」
「そう言うなら引き受けるわ」
って事で、止むなく引き受けたのだぞ……。
でもまさか、あんな目立つようなスーツに花束で現れるとは思わなかったぞ。
「アイツの一般人認識どうなってんだよ?」
「でもメガネ装備アーマーよりはマシでしょ」
「確かになぁ……」
いつものノーヴェンは半裸に透明レンズが特徴の大小様々なメガネで包んでいる。
頭上に被せるティアラみたいなメガネ、両目に掛ける通常のインテリ眼鏡、蝶ネクタイみたいな首のメガネ、胸を覆う大きなメガネ、前腕に取り付ける三つ連ねのメガネ手甲、ベルトのように腰に巻くメガネ、脛に三つ連ねのメガネ、と他に類を見ない装備だ。
それに比べれば白いスーツなど普通に見えるくらいだ。
「来たわよ?」「ん?」
ヤマミにクイクイ裾を引っ張られて見てみると、お見合い相手である女性っぽい人が歩いてきた。
どうやら乙牌々ってご令嬢っぽいな。いつも思うが名前ェ……。
「な、なんなのだ? アレ? つーか……」
「サイボーグっぽいわね」
ジト目で汗を垂らすしかない。
なんとロボットっぽい胴体とスカート、顔の下半分と手足は人間で、ほとんどは機械の部分。特記すべきは頭半分上は鼻上から覆うようなカブトぽい感じで両目はスコープみたい。そしてパーツのような膨らんだ胸。
なんか歩き方もスーッと滑るような感じでノーヴェンへ近づいていく。
「待機させた。ミスターノーヴェン視認した。デート開始しますか?」
「イエス! ではミス乙牌々行きまショウ」
「デート通りに腕を組み合うオーケー?」
「イエス」
なんかプログラムされたみたいな動きと問答でノーヴェンへ最接近。なんとヒジからニューと出てきた拘束具がガシーンとノーヴェンの腕に組み付いてシッカリ固定してきたぞ。
「ではファーストに映画館へ行きまショウ!」
「了解! では近いルートを検索ピピピ……完了。ではレッツゴー」
乙牌々はシュンッと突然速く移動する。ノーヴェンはズルッとコケて引きずられていく。ズザザザザ……早くも白いスーツが汚れていく。
なんかロボットとデートしてるみたいだぞ。ってかアイツ人間か?
「う、ウェイト!! ウェイトデース!!」
するとピタリと乙牌々が止まった。なんか顔をグルリと一八〇度回転してから、こちらへピタッと定めてきてギクッとした。
「敵性感知!! トドメ指砲発射!!」
突然、指差してきて指の一部を撃ちだしたぞ。バキュンッ!
それはオレたちの頭上を通り過ぎた。ヒエッ!
振り向けば、向こうの建物の影からスナイパーっぽい刺客がドサッと沈んだ。即死? 怖っ……!
それに留まらず、あちこち指差して指の弾丸をバキュンバキュン撃ち刺客を次々と撃ち貫いていく。
「アイツ警護必要ねーんじゃんか」
「それはそうね……」
「刺客始末完了! デートを再開します!」
ノーヴェンは汚れた白いスーツをバサッと宙に舞わせ、いつものメガネ装備アーマーで現れたぞ!
やっぱりいつものだった!!
みんなザワザワしだして不審者を見るような目で注視してる!
いつも思うが捕まらねーかな?
「オー! ワンダフル!」
「嬉しい感情機能を作動ピピピ……、ウフッ」
作動……?
そのままビルの中へ入ってエレベーターで上へ上がっていく。
こっちはヤマミの時空間魔法の花吹雪の渦にズズズッと呑まれ、即座に映画館となるフロアへカッコよくザッと降り立った。
時空間魔法で出る時はしゃがんだままのポーズでキメてるぞ。←こだわり!
「どの映画を視聴しますか?」
「ラブロマンスの『レンズの向こうに!』で」
「ピピピッ! データ送信中……購買完了! 開幕時間は三二分後です」
なんか口から券みたいなの出てきたぞ。カタカタカタ……!
「サンキューデース!」
……これデートかな?
ロボットでテストとかじゃないのかぞ?
つかアイツ一人で何でもこなすから、ノーヴェンのリードいらねぇじゃん!
「むしろアイツの存在がデートブチ壊してねーか?」
「こっちも買ったから行くわよ!」
「へいへい」
一緒に入っていって、長々と映画を視聴。
なんつーか、つまんねーな……。眠くなってくるなぞ……。
「ヤマミさぁ……これ面白いか?」
「え? 面白いんじゃないかしら?」
「つまんねーんだな」
ヤマミはゲンナリした様子で頷く。
この映画、双眼鏡で色んな景色ばっか見てデートしてるみたい。山場もなければオチもなし。
何を表現したかったのか、景色を眺めるだけで終わってしまった。ラストにキスをしたぐらいでエンディングロールへ移行して終わり。
何を描写したかったんだぞ? この映画……。
「感動しましター! 双眼鏡を通して静寂の心境推移と山場となるドキドキな雰囲気が山の景色で表現されてマース」
「感動したという感情機能作動します。涙液を分泌します」
一緒に涙を流してジーンとした感じになっている。一ミリたりとも理解できねぇ。
「今すぐ帰りたくなってきたんだが?」
「私も……」
なんか突然、乙牌々が「ツイントドメ乳砲」と胸のパーツを二発同時発砲して映画のモニターを爆破ドカーン!!
爆破炎上して人々がワーッて騒ぎ出して逃げ出していく。
モニター裏からワラワラと刺客が数人出てきたぞ。それを一匹ずつ指の弾丸で次々と撃ち殺していく。死屍累々と転がる死体を後にノーヴェンと乙牌々はなに食わぬ顔で退場していった。おい!
何事もなかったかのように普通にエレベーターで降りていった。
慌てて追いかけようとヤマミの時空間魔法の花吹雪舞う渦に呑まれる。ズズズズ……!
花吹雪散らす渦からザッと歩道にカッコよく降り立つと、ノーヴェンらがレストランへ入っていくのが見えた。
「入るわよ!」「ああ!」
けっこー入ってる人が多いが、遠くでノーヴェンと乙牌々が二人で向き合う形でテーブルについている。
オレたちも自然を装って入ったぞ。
昼飯って事で、オムライスやカレーを頼んだぞ。
「ミーはエレガントパスタにしマース!」
「注文検索ピピピ……該当するガソリン無し! 待機へ移行します。節電モードで待機中」
「後でガソリンスタンドへ寄りまショー」
ガソリンって……。アイツ人間かよ……?
完全ロボットのように沈黙した後は全く動かない。
オムライスとカレーをオレたちも食べて腹を満たし、ヤマミは追加でパフェを頼んだ。
ドン! なんか壁が爆発し、刺客が数人飛び出してきたぞ!
人々が「うわああああ!!」と逃げ出し、オレたちとノーヴェンと乙牌々は立ち上がった。
「ミス乙牌々の命を頂く!! 死ね!!」
忍者みたいな動きで素早く襲いかかっていく。
すると乙牌々はウィーンと起動し、目を赤く光らす。
「迎撃モード移行! トド目砲!!」
首を一八〇度回りながら目ビームを放つ。一斉に刺客と一緒に関係ない一般人まで「グエー!」と上下を両断した。
おい一般人まで巻き込んでるぞ!
うわぁ……また死屍累々と血溜まり。もうデートどころじゃねーな。
つか一般人まで巻き込んでるし擁護できねーな……。
「パフェ食べられないじゃない! あいつッ……」
「お、抑えてくれ! ってか、いっちまうぞ!!」
何事もなかったかのように出て行くのだけは止めてくれ……。
とりあえず携帯で警察に電話しといた。後は任す。外を出ると、いつの間にかたくさん行き交いしてた人々はいなくなっていた。
キュラキュラ……、なんか戦車が数両やってきているんですが!?




