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74話「秋季大会編 ~メンバー選定⑦」

 フクダリウスはズンズンと太い両足で踏みしめ、筋肉隆々で膨れ上がっていて肩幅が広い。そして赤いメイプルリーフを象る仮面。放射状に逆立つ黒髪。

 手には特注で作られたという重厚な戦斧。


 誰もが彼を見れば“戦鬼”とも畏怖してしまいそうな風貌だ。


「ひいっ!!」


 対戦相手であるドラゴリラも大柄な方なのに腰が引けてしまうほどだ。

 彼はゴリラ化する『蛮族(バーバリアン)』で、その膂力は人間を遥かに超える。威力値が四〇〇〇クラスの中堅創作士(クリエイター)だ。


「これで品切れなら……もう行くぞ?」

「ううっ!」


 熱い漢として引かれへん、ドラゴリラは意を決した。

 いつもオカマサと一緒におるから強いと勘違いされては困る。単騎だけでも学院内で一番二番を争うほどの実力者って(オカマサから)認められとるんや……。

 ナッセよりは9999億倍強いんやけど、()()で負けてもうたわ。


 やけどな、結果が全てじゃないねん! 漢は生き様や!


「三大奥義をも遥かに超える最大最強の奥義!! 見せたる!!」


 ほんまは秋季大会で初披露したかったんやけど、連敗続きじゃカッコつかへんから最後の対戦くらい出し惜しみせへんで!

 全身からオーラを激しく噴き上げてキリッと顔を引き締める。


「喰らえ! いや、()()()!! 究極奥義ゴリラのォ~おちんp」


 下半身露呈(ぺろん)して股間から顔面に飛びかかろうとするが、フクダリウスの大きな拳が容赦なくドラゴリラの顔面にブチ込まれて衝撃音を轟かせた!!

「クボオッ!」

 そのまま地面へ叩きつられて、衝撃波の波紋を広げて巨大なクレーターに窪んでゲームセット!



「馬鹿なッ!!」


 オカマサは絶句して椅子から立ち上がった。冷や汗が頬を伝う。

 相棒であるドラゴリラの奥義がどれほどの威力か()()()()()()知ってるからこそ、それを破ったフクダリウスの恐ろしさが際立つ。

 ドラゴリラが編み出した究極奥義『ゴリラのォ~おち○ぽ』は、あの三大奥義をも遥かに凌ぐ。そう(クソ)餓鬼(ガキ)の奥義など児戯に等しいほどだ。

 なぜなら相手の顔に時速9999(けい)(実際は時速九)kmで極太お○○ぽを喰わえさせる、と言う恐ろしい技で威力は太陽系……いや銀河系すら消し飛ばすっ!


 それにドラゴリラの威力値は999999999無量大数(むりょうたいすう)だっ!

 もちろん俺の威力値も999999999無量大数(むりょうたいすう)だああっ!


 それでもっ!!


「学院の中でも最強格が()()とはいえ負けるなんて……!」ゴクッ!

「はぁ? 不運~?? 完璧実力で負けてるじゃないの!?」


 息を呑み込んで深刻な顔のオカマサに、リョーコは呆れた。

 モリッカは「あっはっは~、面白い漫才ですねぇ」とあっけらかんだ。


 ドラゴリラが帰ってきて「すまへんな~もう完全完璧完遂全敗やわ」とガックリ項垂れる。

 しかしオカマサはガシッと肩に腕を回して「ワザと負けたんだね? 君の事だ優しいから本気出せなかったんだろう?」と慰めた。

 それに感激したドラゴリラは目を潤ませた。ウルウル~!


「うほおーっ! オカマサはんっ!」

「ごおおおっ! ドラゴリラよっ!」


 ガシッと熱い友情の涙を流しながら暑苦しい抱き合い。

 ……って言うアホどもはさておき、誰もがフクダリウスの猛威に竦んでいた。




「次はあたしねッ!」


 なんとフクダリウスの次の相手はエレナ!!

 緊張で汗を垂らしながらフクダリウスと並んで仮想世界へ移転していく。


 オレ、なんかハラハラしてきたぞ……。

 側のヤマミも「負けんじゃないわよ……」と曇った顔で呟く。


 オカマサは「メスガキでは話にならないかね。せいぜい三秒持ったらいい方だよ。フッ」と片目瞑って鼻で笑う。ドラゴリラも「ぷくくっ」と小馬鹿にする。


「勝てる可能性あるんはワイとオカマサだけやね」「そうだな!」


 ……としたり顔で意気投合するアホども。

 モリッカが「勝てる可能性高いのに、お二人とも連敗なんですね~」と満面の笑顔。オカマサとドラゴリラは顔を真っ赤にして震えている。


「ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちですか~? あひゃっひゃっひゃ!」


 明るい笑顔で二人の周囲をグルグル踊り回るモリッカ。

 耐えかねたオカマサがキレて「ぶっ殺刺す!!」とナイフの連撃をシュバババッと繰り出すが、モリッカは笑顔でひょいひょい全回避。


 ……こんな時に何してるんだぞ!




 エレナとフクダリウスの舞台は広大なショッピングモールの内部!!


 現実のショッピングモールと違い、真ん中の吹き抜けた空間を始め、何十階層もの底知れない上下空間。多種多様の店が並び、エスカレーターが幾重も折り返しながら上下に連ねる。

 無人ながらもエレベーターが稼働している。


 その真ん中ぐらいの階層でフクダリウスとエレナが向き合っている。


 すかさずエレナが前蹴りでフクダリウスの顎を蹴り上げて先制ッ!

 そのまま「エレナちゃん・ヒールキック!!」と、上を向いたフクダリウスの顔面にカカトをブチ込んで、床をブチ破るほど叩き落とす!!

 落ちていくフクダリウスの巨躯に押し潰されて次々と階層がガラガラと崩れていく。


 しかしエレナも後を追いかけるようにフクダリウスへ落下!!


「エレナちゃん進撃五〇連脚ッ!!!」


 そのまま地団駄踏むみたいに連続蹴りを見舞って、フクダリウスを遥か最下層まで叩き落とす。

 畳み掛けるようにエレナは「エレナちゃん・ニーキックッ!!」とフクダリウスのみぞおちに膝落としを叩き込んで、飛沫を上げながら大きなクレーターに窪んだ。


 しかし間を置かずにフクダリウスはエレナの右足を掴み、平然と立ち上がってブンブン振り回す。

 凄まじい速度で放り投げてエレベーターに衝突して大規模に破壊を撒き散らして破片が飛び散った。ガラガラと周辺が崩れ落ちていく。

 その凄まじいタフネスと膂力に言葉を失ってしまう。


「流石に今のは痛かったぞ……」


 メキメキとオーラが漲って膨れ上がっていく筋肉……。

 更に威圧が増したように感じて、底知れない戦慄に身震いしてしまう。


「うう……」


 エレナは破片を押しのけて立ち上がる。

 金属化できるとは言え、額から血筋が垂れていてダメージは受けている模様。するとフクダリウスが巨体で覆いかぶさるように襲いかかってきて、すかさず横へ飛ぶ。

 通り過ぎたフクダリウスは奥行きの店をブチ破って破片を散らして崩壊。引き返してきたフクダリウスに怯えるかのようにエレナは吹き抜けの方へ駆け出して、上の階へとピョンピョン飛び移っていく。


「逃さんッ! フクダリウス・ハリケーンッ!!」


 扇風機のように戦斧を振り回し、凄まじい竜巻を巻き起こして地響きと共に大半の階層を粉々に打ち砕いていく。

 エレナは無事な方へギリギリ逃れ、広範囲に破壊し尽くされた様子に戦慄する。


「フクダリウス・トマホーク!」 


 豪腕でもって戦斧をエレナの方へ投げつける。それはギュルルルと大気を斬り裂きながら回転し、被弾した階層を広い範囲で木っ端微塵に打ち砕く。

 ブーメランのように戻ってきた戦斧をフクダリウスは受け止めた。


「そら、もう一発だ!」


 再び投げて、大規模破壊! 三度投げて、更に大規模破壊!! 四度投げて、更に更に大規模破壊!!!

 無茶苦茶すぎる破壊でエレナは逃げ場を徐々に失っていく。


 それを見て、ブルッと身震いしたぞ……。


 ただ投げつけるだけでミサイル爆撃と同等の破壊力を、何度も繰り出せるのだ。

 途方もない体力に加え、遠近両方共に隙が見当たらぬ恐るべき男。

 正に小さな怪獣といっても大袈裟ではない。


 すると立ち込めていた煙幕から急降下してきたエレナが「エレナちゃん三連脚ッ!!!」と、フクダリウスの顔面、首、みぞおちに連撃を叩き込むが、少し後方へ後退っただけで、ほぼダメージは与えられていない。ウソッ!?

 逆にフクダリウスが繰り出す戦斧の一閃に、エレナは軽々と吹っ飛ばされて向こう側の階層を破砕。


「がっ!」

「ぬがああああっ!!」


 狂気をあらわにフクダリウスは巨躯を揺らしながら高速でエレナへと駆け出す。図体の割に速い!

 それでもエレナは満身創痍ながら負けじと戦斧を両腕で交差して受け止め、巴投げのようにグルンとフクダリウスと上下の位置を入れ替えて「エレナちゃんハイアングルニーキックゥ!!」と上空へ高らかに振り上げた光り輝く両膝を全体重を乗せて振り下ろす!!

 そのまま相手の攻撃エネルギーを自分の力と上乗せで繰り出したその一撃は、フクダリウスのみぞおちにめり込んで更に下の床も崩壊して、破竹の勢いで落ちていった!


「ぐ、がはっ!」


 なんとフクダリウスは吐血し、最下層まで落ちていった。

 血塗れで息切れしつつもエレナは高々と飛び上がって、軽やかにクルクルと宙返り。


「くらえーッ!! エレナちゃん・ムーンサルトヒールキックッ!!!」


 三日月の如く、孤を描いて光り輝く軌跡とともにフクダリウスへ迫る!

 しかし! フクダリウスの両目がカッと輝き! オーラ纏う戦斧を剛力で振るう!! その超高速で重すぎる一撃がドスンと、エレナの腹に炸裂!!

「がっ!」

 凄まじく高速で吹っ飛ぶエレナは壁を次々と突き破って遥か奥行まで叩きつけられ、ガラガラと大規模に崩壊!!

 奮戦するもエレナは力及ばず、ドンと爆破四散して棺桶化!


「小娘ながら立派な猛者(もさ)だった! なかなか手こずらされたわ……! フフッ!」


 不敵に笑うフクダリウスの圧倒的勝利で、この試合に幕が下りた!

 その様子にオレも流石に言葉を失った……。冷や汗が頬を伝って顎から滴り落ちる。気付けば手が震えていた……。

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