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7話「地元のクラスメイトと冒険だぞ!」

 城路(ジョウジ)家総出での宴会も無事に終わり、平穏な夏休みがやってきたぞ……。



 ヤマミと一緒に氷で冷えた素麺(そうめん)をすすってる昼頃に、ブロロロロ……と走行音が聞こえた。

 つい「また本家かな?」とジト目していたが、気配が違う事にハッとした。


 ピンポーンと呼ばれてオレは玄関のドアを開けると、なんと爽やかな好青年で、スポーツ刈りのイケメンと、おっとり系で黒ロングそばかす巨乳魔法使いと、太ったロン毛の老けた高身長の青年の三人が来ていたぞ。

「よっ! 元気かー!」と笑顔で手を挙げてきた。


 しばしの沈黙…………。そっ閉じでオレはドアを閉めた。パタン。


「久しぶりのダチに塩対応とか、酷いじゃねーかー!」

「ええ! スルーなんて鬼畜過ぎますわっ!」


「……今更? つーか、あんま絡んでなかったかつてのクラスメイトじゃないか!」


 そう、こいつらは中学、高校で一緒のクラスだった人。

 他に疎遠してしまった人もいるが、卒業まで一緒だったぞ。だが、内気なオレはあんまり絡まなかった。リア充のあいつらが勝手に騒いでいただけぞ。



 クーラーが効いたダイニングテーブルで三人は和気藹々とオレとヤマミに馴れ馴れしく口を聞いていた。


「へっへー! まさか彼女作って帰ってくるとはなー」


 スポーツ刈りの爽やかな好青年は真琴(マコト)ミッカ。実は既婚者。

 学力はザコいが運動神経が抜群でクラスの中で一番だったぞ。

 剣の腕前は学校の中では最強だった。



「ええ。すごく綺麗な人だね……」チッ!


 表面ニコニコしているが、舌打ちが聞こえたよーな……。


 ともかく彼女は志乃舞(シノブ)ナカシ改め、真琴(マコト)ナカシ。ミッカの妻。ぼいーんと巨乳が揺れている。

 運動神経はザコいが学力が抜群でクラスの中で一番だったぞ。

 防御系、補助系、回復系の魔法が得意。短剣を護身用にしている。



「で、ヤッたでふ? ヤッたでふ??」


 いやらしいグヘヘ顔の友哲(トモテツ)チキク。ロン毛で高身長の老けたデブ。かつては痩せぎすだったぞ。お調子者。見境もなくナンパする。クラスメイトの女子全員に告白して全て振られた伝説を持つ。未だに独身。

 地味にいやらしい補助魔法が豊富。



「……地元の友達?」

「クラスメイトってだけで、正直友達とは……」


 キョトンと首を傾げるヤマミに、オレは困惑顔を向けて首を振る。



「今日誘ったのは、庄川付近に『洞窟(ダンジョン)』があるからだよ。久しぶりにおめぇと冒険したいなって思ってたんだ」


 リア充よろしくさっぱり笑顔だ。

 そんな彼と一緒でナカシはニッコリ微笑んでいて幸せそうだ。何を隠そうナカシはオレの初恋だったのだぞ。元いた世界で高校卒業するまでズルズル片想いをこじらせて、社会人の時に告白して玉砕した苦い思い出があるぞ……。ぐうっ!



「だから俺たちの代わりにこれ持っててくれ」

「ちょっと長く潜るから重くて……ね」


 ドッサリ……、テントやらバーベキューやら食物やら大荷物が下ろされた。

 オレは引いた目で「これ……?」と指差す。ミッカはパンと合掌して「頼む! 引き受けてくれる人がいないんだ!」と頭を下げてきた。ナカシはニコニコと「お願いします」と首を傾げた。

 でもチキクは「戦わなくて済むから楽な役割でふねー」と皮肉(ひに)った笑みを見せた。


 つまり運び屋をやれと…………?


 オレとヤマミはジト目で見合って、呆れ返ったぞ。

 仕方なく「引き受けるよ」と答え、ミッカは「ありがてぇ! さすが下ぼ……ダチだぜ!」とゲスい事をポロッとこぼした。


 だがあまーいっ! そんなん時代遅れー!


 オレは収納本を開いてギュオオオオオっと渦潮のように大荷物を全て吸い込んで収納。

 唖然としたミッカ、ナカシ、チキク。ぽかーん!




 庄川。富山県の流れる大きな川の一つ。

 大きな川に沿うように砂利に草むらがぼうぼうと生えている河原(かわはら)。そこに一際大きな大岩が目立っていて、真っ黒な大きな穴が空いていた。

 これは『洞窟(ダンジョン)』と言って、漆黒の魔女アリエルが作り出したシステム。

 世界と世界の循環を良くするための通気路兼、ゲームのような複雑怪奇なダンジョン。箱型のフロアが重なって、空洞が迷路のように入り組んでいるんだぞ。

 なお、この情報源(ソース)はヤマミ……。


「行くぞぉー!!」


 勇ましくミッカが踏み入れ、ナカシとチキクが後に続いた。そして最後に「へいへい」とオレとヤマミ。

 真っ暗な境界を越えて、視界に現れたフロアにオレは見開いた。


 箱型のフロアで、片隅に透き通った川がザーザー流れている。それに沿う河原に砂利(じゃり)(みち)が続いている。しかし、箱同士で継ぎ足しされているかのようにフロアごとに壁や床の角度がズレていた。

 向こうのフロアへ踏み入れると、角度に従って重力の向きが変わる。カクッとした感覚は未だ慣れないぞ。


「……川辺(かわべ)沿いの『洞窟(ダンジョン)』って事ね」

「ああ。前のと違うなぞ。てぇっとモンスターは……?」


 なんと川から飛沫が上がって、数十匹ものピラニアっぽい群れが「ギシャー」と飛んできた。やっぱ水棲系だなぞ。

 ゲーム的に「牙魚の群れがあらわれた!」だろうか?


牙魚(きばぎょ)】(水族)

 威力値:550

 必ず群れて襲いかかる。魚の癖に飛行して鋭い牙で肉を食いちぎっていくぞ。下級下位種。


「へっ! 牙魚など雑魚中の雑魚!」


 ミッカは身を屈めて剣を引き抜く。ナカシも短剣を手に、チキクもラブレター数枚を手にした。

 牙魚は「ギシャアアア」と鋭い牙を剥いて、ビュンビュン飛びかかってくる。チキクはラブレターを手裏剣のようにシュパパパッと投げ、数匹をザクザク斬り落としていく。


「ラブレター手裏剣! オデの愛は重いでふ!」フッ!


 ミッカは「みあああああ!!」と剣を振るって牙魚をスパスパ斬り裂いていった。しかし牙魚は数に物言わせてなだれ込んでくる。


「……閃月(せんげつ)ッ!」


 ミッカは輝かせた剣を振るい、斬撃が広々と拡大して無数の牙魚をスパパーンと両断していった。

 ……オーラを剣に乗せて斬撃を拡大する基本技か。しかしあれほどの範囲は相当手練されてこそのものだ。普通は三,五メートル位だが、ミッカのは一〇メートルなんじゃないかな?



「最初の頃を思い出すわね……」

「ああ! あん頃はオレもヤマミもそれくらい弱かったなー」

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