68話「秋季大会編 ~メンバー選定①」
大阪アニマンガー学院内の『仮想空間』!
広い空間で円陣を組むように等間隔に召喚陣みたいな魔法陣が描かれていて、淡い光を放っていた。
その中心はサーバーを思わせるような円柱の装置があった。
作り出された仮想世界に自分の分身を形成させて意識を移転して実戦の練習などする所だ。
まるで近未来のオンラインゲームっぽいぞ。
って言うか、実際『仮想対戦』とほぼ変わらないのが学院内にあるのだ。
その施設によって作り出された仮想世界の市街地……。
家やらマンションやらビルやらはもちろん、電柱や木々などもあり、空は白い雲がたゆたう青空。
その立ち並ぶ建造物やアスファルト道路など本物と材質は変わらない。だが恐ろしい程に無人。そこに人々が行き交っていれば現実と錯覚するだろう。
ドカンと大地を揺るがし衝撃波が噴き上げられ、周囲の建物が瓦解していく。
なおも激突音がドカンドカン繰り返され、その度に家が次々と崩れ去っていく。吹きすさぶ烈風。流れる破片。その最中でオレはリョーコとぶつかり合っていた。
「おおおおおおおッ!!」「せいやーっ!!!」
オレが振るう太陽の剣とリョーコの斧がガッキィンと強烈に交差し、破裂するように衝撃波が爆ぜて周囲の建物がグワンッと粉々に吹き飛ぶ。
その衝突で互い弾かれたオレとリョーコは、後方の吹き飛んでいる破片を足場に縦横無尽と飛び回って、絶え間のない激戦を繰り広げていった。それだけで市街地は破壊し尽くされていく。
久々に強敵と戦える、そんな喜びを感じていた。
リョーコと対戦するのは初めてだったが、互いに世界大戦を乗り越えた猛者。全力で戦わなければ勝てない相手。だからこそ気兼ねなく全力で剣を振れるのが気持ち良かった。
「いっせーのォ……」
リョーコが斧を後方に構えエーテルを溜めていき、全身から凄まじく迸る稲光と振動。
オレはカッと見開き、超高速で真っ直ぐ駆け出して飛沫を吹き上げながら、抜刀のように剣を振るい「サンライト・スパァークッ!!」と吠えた。
同時にリョーコは「クラッシュバスターッ!!」と全身全霊の一撃を放つ。
ガッッ!!
神速に達した二つの白刃が交差し、共に砕け散って四散!!
その瞬間、天変地異のような衝撃波の噴火が噴き上げられ、市街地が弾け飛ぶ!
「ふうっ! さすがにリョーコつえーな……」
リョーコと共にオレは魔法陣から帰還して、待っていたヤマミと手を叩きあった。
モニターに映っている仮想世界は、坂道が多く階段状に住宅地が並ぶ地形だ。
紅蓮に染まる具現の槍を手にコハクはその高い所から悠然と見下ろしていた。
「へっ! 高く止まってるイケメンなぞ瞬く間に沈めてやるし!」
「おお! それは怖い! 精霊具・九十九紅蓮!!」キリッ!
オーラを纏う九十九紅蓮。それは分裂してコハクの真上で数十本が並んで滞空。
「九十九紅蓮・三十閃槍“爆嵐”!!」
その無数の槍が一斉にマイシへ降り注ぐ。機関銃のように数十本の槍が、辺りの床や建物を穿って爆破の連鎖で覆っていく。
しかし竜を象るエーテルを纏ったマイシが真正面から突進してきて、ことごとく槍を跳ね除けながらコハクへ飛びかかる。まさにドラゴンそのものとも言える剣幕。
「かあああああああああああッ!!!」
コハクは軽やかに飛び去り、通り過ぎたマイシが数軒もの住宅地を粉々に爆砕。
まるでミサイルの爆撃とも思える広大な破壊に、コハクは「やれやれ」と首を振る。正真正銘バケモノ。並の攻撃では通用しない。
「九十九紅蓮・一閃槍“天翔穿”!!」キリッ!
思い切って投げつけ、旋風を纏いながら超高速でマイシへ真っ直ぐ突き進む。その勢いで地面が一直線に飛沫が舞う。即座に迫り来る穂先にマイシは驚愕の顔を浮かべる。
稲光のように一筋の閃光が迸り、地平線向こうまで全てを貫き、駆け抜けていった。
「……あれをかわすとは! 自惚れているワケでもないようですね」キリッ!
マイシは憮然とした顔で、再び地を蹴る。
観念したコハクは自らをノイズで包み、姿を徐々に変えていく。銀色の散乱とした長い髪が舞い、メキメキと一対の角が後ろへ伸びていく。そして破けた黒い衣が身を包む。
そして陽気な笑顔と共に五等身の可愛らしい風貌に変わった。
「この死の皇帝コハク様の力を思い知るがいいのですーっ!!」
まさか開幕『陽快』になるとは思わなかったぞ。
コハクも異世界人。これが本来の姿なのだ。さっきまでのイケメンは仮の姿。まぁ普通にオタクだけど。
ショタっぽくなった銀髪ロングの陽快コハクは「いくなのです!」と精霊具をかざす。
すると一気に数千もの槍がヴィンと複製され、コハクの周囲を広く周回していた。
「万紅蓮・千越閃槍“爆嵐”!!」
一斉にマイシへ矛先を向け、数千もの槍が発砲音を鳴り響かせ超高速で射出されていった。
けたたましく轟音が爆ぜ、衝突の連鎖が数千も重なり、大地の飛沫を天高く巻き上げていく。
「火竜のッ、炸裂焔嵐剣ッッ!!」
マイシも対抗して全身全霊の炸裂剣の嵐を見舞う。
天地揺るがすほど嵐のような爆裂の連鎖が急上昇しながら咲き乱れ続ける。その凄まじい勢いは数千もの槍をもことごとく粉砕しまくっていく。
コハクは一気に掌を突き出す。
「万紅蓮・一閃槍“天翔穿”ッ!!」
巻き起こっている爆風を突き抜ける一条の閃光が、マイシへ一直線と疾走り抜ける。
激突の嵐に隠れて撃ち放つ電光石火の一撃必殺。その速度は正に電速に近しい。
これにはマイシも防ぎきれない! 受ければ即死だ!!
マイシは「かあああああああ!!」と更なる昂ぶりを吠える。
セミロングだったうしろ髪はズズズッと伸び、竜の両翼を象るように広がって白いラインが竜の翼の骨を描くように走る。頭上の二本の逆立った髪の毛は四本に増え、それぞれに尖った角を表すような白いラインが走る。
更に『刻印』のようにマイシの肌にウロコを模したような白いラインが走っていく。そして顔面の頬や顎にも及ぶ。
威風堂々とマイシが立ち聳え、全身を覆うエーテルはついに第三次オーラであるフォースへと昇華され、ウロコを模すスパークが荒々しく迸る。
神々しくて幻獣でも降り立ったかのような神秘的な輝きを纏うマイシが顕現されたのだ。
ナッセの『星天の妖精王』と肩を並べる『灼熱の火竜王』へと変身────!
「火竜王のッ炸裂剣ッ!!」
なんと力任せの振り下ろしで電速の槍すら地面に叩き落とし、大規模の衝撃波の噴火を噴き上げた。土砂と共に巻き込まれた破片が高々と舞う。
大地を揺るがし、住宅地が土砂崩れで流されていく。ゴゴゴゴ!
「へっ! これが火竜王マイシっしょ!!」
最強の変身をしてきたマイシに、コハクは「容赦ないのですー!」と言いながらも上空に数千もの槍が並んでいた。
その数、圧倒的物量! 数万に及ぶかも……!?
「万紅蓮・万越閃槍“爆嵐”なのですッ!!」
「やってくれるじゃないかし! 全力でブチのめすしッ!!」
ドオオオオォォォォ……ンッ!!
最強の変身同士での熾烈を極める激突はこの後もしばらく続いた……。
結果? マイシが辛勝したけどな? やっぱコハクも強ぇー!
ちなみにクラスメイト同士でのリーグ戦形式の対戦は、とある大会のメンバーを決める選定らしい!?
まさか小話編で大会やるなんて思ってもみなかったぞ……!
つか、これ本編でやるべきイベントじゃないのか!? メタァ!