66話「デスゲームに参加しちゃった!⑤」
とりあえず着る物ないからフルチンのままで行くか……。
ガチャリと扉を開けると、なんと沸騰している大きな風呂があるではないか!
凄まじい蒸気が濛々と立ち上っていて熱気がここまで伝わって来る……。
「これは……!」
息を飲んだ。恐らく数百度の五右衛門風呂といった所か。
実は四回目のクエスト。渡る為には誰か一人先に入って犠牲にならないといけない仕組み。もちろん超高熱の風呂なんかに入ったら絶叫を上げて死ぬ。
その悲鳴がトリガーとなって、風呂はスライドされて普通の床に切り替わる仕組み。
つまり犠牲の押し付け合いが始まってケンカに発展する。それで負けた人が恐怖のままに風呂へ投げ出されて、三人だけが渡れるという意地の悪い目論見。
「まぁへーき!」
いい湯加減で浸かった。ふー疲れ取れそう。
一〇分ゆっくりしてから上がって軽めの火魔法を自ら浴びて乾燥させてスッキリ。
血行が良くなった気がするな。うん、気分爽快だ。
すると五右衛門風呂が唐突にドカーン爆発した。な、なんぞっ??
次は真っ白な四角い部屋。
「今度はなんだ?」
すると真っ暗で見えない上から変な形のブロックが落ちてきた。ドスンと床にくっつく。
次々とそれらが落ちてきて途中で方向転換や回転などして、他のブロックと上手い具合に組み付く。
ひょいひょい避けていくと、どんどんパズルのように下から組み立てられていって必然的に床が上昇する形になる。
そうすると上の方にある壁に穴が見えた。
実は生き残った約三人が挑む五回目のクエスト。
もちろんブロックに押し潰されないように避け続ける必要がある。
かなり重いので隙間なくペッチャコンにされる。
そして意地の悪い事に、出口の穴は二人までが定員で扉は閉じてしまう。
つまり一人だけが取り残されてミンチにされる運命。
そんな事など知らないナッセは普通に穴へ脱出して終わった。
「なんだかイージーだったなぞ……」
するとテト○ス部屋が唐突にドカーン!! ……何故に?
途中でスタッフ用かなんかの部屋があって、堅いドアをこじ開けて作業服っぽいのを着た。
ふー、良かった良かった。
今度はコロシアムだ!
観戦席は無人で静まり返っている。すると反対側の出入り口から普通の数十倍の大きさのライオンっぽいのが出てきたぞ。
なんか両肩にヤギや牛の頭があって、尻尾が蛇だ。
「ぐるるあああああああ!!!!」
実は六回目のクエスト。
約二人がキマイラと言う違法合成獣に挑む。もちろんここではヤクザに手懐けられているキマイラは平等に狙うフリして片方を追い詰めていく。
そしてヤクザが一人生き残るという筋書き……。
もしヤクザだけの場合は、切羽詰まった駆け引きをしばらく演じて、逃げ切る予定。
全身に血糊を隠していて、甘噛みされた時に血塗れの演出する。
もちろん瀕死のていで逃げ切るスリルを閲覧者に提供する。……そのはずだった。
そのヤクザはとうにガス爆発で逝った。
想定外が起こりすぎて準備できずに無人だが、本来ならVIPで招待される閲覧者が観戦席で賑わっているはずなのだ。
悪徳と欲にまみれた資産家たちの道楽だったのにな。
「ど~~け~~!!」
グーでキマイラを殴り飛ばし観戦席にめりこませた。ピクピクと足が痙攣。
本来なら誰も太刀打ちできない威力値一五〇〇〇ものキマイラなのだが……。
「確かこれで最後なら、三億円がもらえるんだっけ?」
足を歩もうとした瞬間、不穏な殺気を感じ一歩サッと横に退く。そこを何かが通り過ぎて闘技場と観戦席を境にする壁を破砕した。バゴッ!
ただの銃弾じゃない事は察し取れた。何らかの方法で小石を超高速で撃ちだしている。
やはり……これは…………、オレと同様創作士っ!!
バッと振り返ると、地味っ子が不敵な笑みでオレを指差すポーズをしていた。
「へぇ~只者じゃないって思ってたけど、こんな不意打ちもかわすなんてね」
なんと白田マモだ!! こもれでる威圧はただの人間ではない!
今まで気付かなかったけど、オレと同じ創作士として紛れていたのかぞ……!
「なんで肩から狙ったんだ?」
「あら? 狙いも見切ってた? ……そう急所を狙わなかったのは、あなたの絶望した顔を見たかったからぁ~」
にんまりと悪女っぽく下卑た笑みを見せてくる。
小部屋に閉じ込められた時もゲスい仕打ちをして、バカ笑いしてたっけな。
「先に急所狙わねーのは悪手だろ?」
「一言うざ~」
ついさっき網目レーザーで細切れにされて死んだはずなのに、こうして五体満足ってのも不可解だ。
だが『創作士』なら、そう見せかけても不思議じゃない。
例えば『分霊』させて自分そっくりの分身を先行させるとか、幻惑術でその場にいるかのように見せかけるとか、細切れになっても生きてさえいれば超回復で復元できるとか、もしくは…………!
「フフフ……! なぜ私が生きているのか不思議で仕方ないわね?」
「なぜ?」
「あら? 気になるのぉ~? 聞いたら死刑宣告を受けるようなものだけど??」
余裕ぶって首を傾けてクスクス笑う。
こうした悪意みなぎる黒い感情まみれの人間は、オレが元いた世界の人間そっくりだ。どうしようもないクズ気質で自分の欲の為になら他人など踏みにじる事さえ喜びにする。
こうして危険なオレを初見殺しでさっさとやらないのは、いたぶるのが趣味だからだと思う。
「死刑宣告か? まぁ間違ってないかな?」
「あら? 素直ね……小部屋に閉じ込められたマヌケなだけあるわね」
「閉じ込めの内にも入らんしなー」
ピクッと眉をはねる。お、気に入らない答えらしいな。
「オレの力は見たろ? キマイラを一撃だぞ?」
「フィジカルがとてつもなく高いのはレーザーを弾いてた時から知ってる。でもね私の能力は関係ないの」
見ていないワケじゃなかった。キマイラを一撃で倒してるにも関わらず、あの余裕だしな。
そもそもレーザー弾いてたの見てたワケだし、絶対負けないからこそ、こうしてオレに対して余裕ぶってるって事か。
「冥土の土産に教えてあげる……。私のクラスは『暗殺者』。そして……」
口元が三日月に裂き始め、次第に下半身から溶け出していく。
腰も腕も、そして髪の毛も粘着性のある触手みたいな質感になっていく。
「スライム化っ!?」
既に下半身はタコのようにウネウネ触手を蠢かせ、半透明の青いゼリー色に染まった上半身、悪魔みたいな薄ら笑みを覗かせるスライム女……。
やはり体そのものがスライムだから、細切れされようとも関係なかった。
死んだフリして、オレもレーザーで死んでたら復活しようと思ったけど、そうじゃなかったからしばらく機会を窺う事にしたっぽいな。
「……で、三億円を目前に本性をあらわしたって事か?」
「そう……」
呆れた。肩を竦めて首を振る。
「バカだなー! その体を活かしてオレより先回りして、賞金を奪ってさっさと居なくなれば良かったのになー。それをノコノコ現れて逐一説明してくれるんだもんなー」
笑っていた顔が止まる。殺意をあらわに不機嫌そうになっていく。
ネタばらししてもなお、オレが余裕なのが気に食わないのだろう。弱い者イジメをモットーにしているならなおさら。
「オレもお前と同じだ!」
「なんですって??」
「いつでも勝てるから、こうして余裕ぶってんのさ!」
不敵に笑んでみせる。
「ほざけぇ!! あたしに溺れなっ!!!」
癇癪を起こしたスライム女はドバーッと触手を広げてオレに覆いかぶさっていく。
キマイラ瞬殺するヤツ初めて見たwwwwwwwwwwwwwwwwww
マジかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
つっよwwwwwwwwwwwwwwww
ギャル男の次はスライム女かwwwwww今回マニアックすぎるwwwwww
これは急展開wwwwwwwwおねショタバトルwwwwwwww
TUEEEEEEEショタvsスライム女wwwwwファイッwwwwwww
触手プレイ待ったなしwwwwwwwwwwwwwwwww
どうせ英雄様の凌辱タイムっしょwwwwwwwwwwwwwww
いやスライムに取り込まれるっしょwwwww脳筋じゃ無理だろwwwwww
ナッセそこ代われwwwwwwww取り込まれたいwwwwwwww
おれもwwwwwwwwwwwwww
いいぞwwwwwwwwwwもっとやれwwwwwwwwwwwww
仮面のヤツどこいったんだよwwwwwwwwwww