63話「デスゲームに参加しちゃった!②」
昼なのか夜なのか、密閉されたデスなんとかって所では全く分からない。
誰もいなくなっている広間では、壊してしまったガラクタが転がっていた。警告灯かなんかで赤く照らしてたの今ではもう収まってる。
「プライベートもクソもねーなぁ……」
モニターには広間と廊下を隙間なく映していて死角はない。
トイレだってどこにもないから、オレが最初にいた部屋の開かない扉をこじ開けてトイレを済ませた。おかげで扉はオシャカだぜ。……まぁいいや。
眠くなってきたので、ベッドにゴロンと寝転がった。
そして同じくドアを壊された小部屋からは微かにガスが溢れていた。濛々と廊下の床を煙幕が流れていく。
これは白田マモに騙されて、閉じ込められたナッセが強引に扉こじ開けたからだ。
翌日、その近くの個室からヤクザがのしのしと出て行く。
不穏にガスがもわ~と広がり続けている。
六人がぞろぞろと広場へ集合し、それに合流した。
「……オイ? 全然七人いるじゃねーか??」
「ヤダァ~~☆ なにナゾ☆ 運良く生きてたカンジ☆ キャハ☆」
「なにか裏技でもあるんですかね……?」
オレが健在なのが変なのか、怪訝な視線を送ってくる。
床を転がっているガラクタを見てギョッとする人もいる。
《おはよ~ございまぁ~~す!!》
なんと上部のモニターに仮面の男が陽気に映ってきた。
するとこっちを見るなりギョッと驚いてきた。
《……な、なぜ? なぜ? きさまは生きて……??》
「おはよう。せめて共同トイレくらい用意してくれよー。あと時計もな」
なんか呆然してる?
まぁ、変な機械がうっとおしくて壊しちゃってるからかな?
延々とBB弾撃ちっぱなしだから止める方法分からなくて、天井から引き抜いた。どこをバラしてもスイッチなかった。
その繰り返しでガラクタにしていった。
「高そうなオモチャ壊して悪かったな……。でも罰ゲームやるなら前もって言ってくれねーと」
なんか黙り込んでいる。壊されてショックなのかな?
「おうコラ! なんで死んでないねん!!」
なんかヤクザ君がいちゃもん付けてきて、オレの胸ぐらを掴んで持ち上げてくる。
「『免罪の鍵』も無しに、のうのうと生き延びんなや!! ゲーム進まへんやろ!!」
「えっと? 退場しろって事か? どこへ行けば出れるんだ?」
「あ!? ふざけとんのかワレ!!」
胸ぐらを掴む力が強くなる。
「教えてくれよ。このままじゃ壊してでも出なきゃいけなくなる」
すると成り行きを見守っていた五人はプッと吹き出す。
「ギャーッハッハッハッハッハッハッハ!!」
「バカかぁ!! コイツ!!!!」
「無理ですよ!! 逃げれませんよ!!」
「キャハ☆ ばかわ☆ 出れないジャン☆」
ヤクザは乱暴に突き出すようにオレを放り捨てた。そのまま尻餅をつく。
「…………もういい! こんなバカ死んでも治らねぇ!」
呆れ果てたのかそっぽを向く。
立ち上がり、パンパンとズボンを叩いて埃を払う。
「逃げれないって設定だった?? じゃあどうやって退場すんだ?」
しかし六人は冷めた目でそっぽを向き、モニターへ振り返っていく。仮面の男の話を窺おうと待っているようだ。
これ以上は相手してくれなさそーだな。困った。
なんか不親切なゲームだなぁ。これどういうバラエティ番組だ? クレームつけてやりてぇ!
《気を取り直して二回目のクエストと行きますかー!!》
仕方ないぞ。ゲームに付き合うしかないな。
なーんか次のクエストは『武器を手に入れろ』らしいな。そこらじゅうに隠してあるらしい。
この屋敷もゲームも不親切だが、色々ギミックは凝ってそうだった。
まぁオレは関係ないかな。自前で出せるし。
なんと大柄な男、熊木バシラが拳銃を手に広間へ戻ってきたぞ。
今度は根暗な三峡シクラムがサブマシンガンを持ってきて、バシラはギョッとして「ズルい!」と食ってかかるが銃口を向けられては黙るしかない。
「……早い者勝ち! でしょ?」
「ぐっ!」
物騒だなぁ……。
白田マモが刀を手に戻ってきた。おどおどしているが演技だ。
誰かに助けてもらおうとアピールしている。
「良ければ助けてやろうか?」
「い、いいんですか?」
下心持った根暗なシクラムが下卑た笑みで、マモの揺れるおっぱいを見ながら話しかけてきた。
「ただしヤらせろ」
「……いいんですか? うーん仕方ないかな」
なんとマモの後ろからシクラムが腕を這わせて抱きついて「げへへ」と嬉しそうだ。
更にもみもみしてる。
「武器の偏りヒドくね? キャハ☆」
なんと褐色ギャルの御船アイキが重そうな斧を両手で引きずってる。
リョーコなら軽々と持てるだろうな……。
するとバシラが「助けてやろうか? ただしヤらせろ!」と拳銃を向けて脅しをかけてきた。それを見かねて光の剣で素早く振るう。
斬り飛ばされた拳銃口部分が床に転がった。カラン!
「人に向けるなよ。危ねぇぞ」
バシラは拳銃を取り落としギョッとこちらを振り向く。マモもアイキも目を丸くしている。
シクラムは気付けばサブマシンガンも細切れにパラパラと。
「そいつも斬った」
「う、うぇあああああああっ!!?」
シクラムは驚いて飛び退く。マモは掌を返してパッと離れる。
斧も刀も細切れで床に転がっている。
デブの大輝マロキョがスタンガン持ってきたので、それもついでに斬っておいた。
「のええええええ!!?」
最後にヤクザがアサルトライフルを肩に乗せて現れたので、それも斬った。
あまりにも速く斬りすぎたせいで、本人は気付かずに笑みを浮かべている。しかしヤクザだけは武器がいいな。
《さーて武……》
再び仮面の男が映るが、既に武器が破壊されていて呆然としている。
ヤクザは怪訝に「おい! これからどうするんだ?」と声をかけるが、仮面の男は沈黙している。
他の五人も怪訝そうにヤクザを見ている。
アサルトライフルが使い物にならないのに威張り腐っているのが滑稽だからだろうか?
「どういうこったよ!? コイツだけスゲー武器持たせてよ!」
「光の剣なんて聞いた事ないぞ!! ズルい!!」
「ええ……いつの間にか武器斬られてたんですよぉ~」
「斧使い物にならな☆ キャハ☆」
「……光の剣?」
ヤクザは不審に思って、オレの光の剣を見てから、手に持っているアサルトライフルを見やると、取っ手しかないのに気付いて「うわあっ!」と今更驚いた。
「本物持たせたら危ないだろ? コイツら素人だし」
下手に拳銃なんか持ったら殺人が起きかねない。
武器はいざという時の為であって、自分のワガママを通す便利な道具ではない。
《ねぇ……その光の剣はどこから?》
「『刻印』で具現化した武器。星光の剣……っと言えばいいか?」
五人はビビってオレから遠ざかる。
ヤクザが「あぁ!? テメ……」とドス効かせてきたが、威圧を乗せて軽くキッと睨んでやる。すると蛇に睨まれたカエルのようにヤクザはビクッとおののいた。
きっと得体の知れない恐怖に体を縛り付けられて、ガタガタ震えて動けないのだろう。未知の恐怖に冷や汗をかくしかない。
もう少し威圧を増せば腰を抜かすし、気絶もするかな。
「これからどんなゲームするんだ? サバイバルゲームにすんなら、武器はオモチャにしておいた方がいいぞ?」
なんか仮面の男は次第に苛立ってきて拳をバンバン叩きつけている。
《今日はもういいです! みなさま自分の部屋へ帰りください!》
「じゃあここまでか? 部屋にテレビとかないの? ゲームとか? 無いと退屈すぎっぞ」
《ぐっ!》
部屋へ戻ってベッドに寝転がった。すると机のノートパソコンに仮面の男が映る。
《済みません……、あなた一体何者なんですか?》
あ、そういや名乗ってなかったな。
「オレは城路ナッセ。剣士だぞ」
すると仮面の男は両手で顔を挟み込んで竦み上がったぞ。ひょえ~~!
こちらを恐る恐る指差す。
《ま、まさか!? あの人造人間侵略戦争や世界大戦を潜り抜いた、あの!!?》
「他にいるかよ」
脱力して沈んでいくのが分かる。
オレを映したモニターにコメントが流れている。
マジかよwwwwwwあの英雄かwwwwww
そりゃ余裕だわなwwwwwwwwwww
隕石も大魔王も倒してるんだよなwwwww
てかデスゲームぶち壊しwwwwwwwうけるwwwwwww
マジでコイツ規格外wwwwww
どうりでさっきからおかしかったwwwwwwwwwwwwww
素手で鋼鉄の扉を壊したり天井の警備ロボ引き抜きまくってる時点でおかしいだろwwwww
これは面白くなってきたwwwwwwwwwww
ナッセ様を前に全てが茶番wwwwwwwwwwわらwwwwwwww
ヤクザの個室の近くの小部屋からガスが未だ流れている。ぷしゅー。




