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61話「裏社会の男シキの体験談」

「フフフ……! やぁ、諸君のみなさん。俺はシキ・キルテーシィオンとでも言っておこうか。裏社会でも名が知られた男だ……」


 不敵な面構えで鋭い笑みをこぼす。額を隠す帽子の影から釣り上がった鋭い三角形の双眸。

 躊躇(ためら)いもなく何人もの人を殺してきた凍えるような顔の男。

 だが、この男は縞々(しましま)模様の囚人服を着ていて、目の前の雑務をこなしていた。


「恥ずかしい話。この通り俺は捕まったんでね……」


 思い返せば────、あの遊園地での夜の話だった────────……。




 ネオン彩る華やかな遊園地にて、俺は黒服の男二人と一緒に遊んでいた。

 いや、取引の為に入園しただけだと付け加えておこうか。


「ぎええええええええ!!!!」


 ジェットコースターで俺は悲鳴をあげまくって楽しんでたのに、黒服の男は「ひょっとして怖いんですか?」と気が利かなくて困るぜ!

 鉛玉ぶち込んでやろうと思ったけど、まぁなんだかんだ楽しめてるから許してやるかな。

 それにしても取引の男はまだかな?

 黒服の野郎が絶叫系ばかりやろうとするもんだから、身が持たねぇぜ……。


 そんな時、ジェットコースター(12回目)でなんか首ナシの殺人事件が起きたもんだからビビったぜ!

 ドバーって鮮血が噴水のように出るもんだからマジ心臓に悪い。

 殺人に慣れている俺もビビるわ! マジで!


「犯人はここにいるようだ! ジッとしてろ!」


 なーんて駆けつけた警察たちにはドキリとしたね。だって不法に銃所持してるもん。一発で免罪なるわ。

 すると銀髪の少年がツカツカしゃりしゃり出てきて何事かと思ったんだぜ?

 見た目バカそうなガキだから侮ってたけどよ。


「オレ、乗ってる時に見たんだ。なんか女性が超高速でワイヤーを仕掛けて、ジェットコースターのパワーに任せて首をはねるの見たぞ」


 とか銀髪のガキが、女性一人に指差して周りを騒然としやがった……。

 動体視力が凄くて推理するまでもなく犯人を見つけちまったのは驚いたぜ。なんせジェットコースターに乗ってる時に犯行だなんて、常人なら自殺行為だ。

 裏社会を生きてきた俺でも絶対やらないね。リスクが過ぎる。


「で、でも! この人たちが怪しいんじゃないの??」


 と、犯人がこちらを指差してきたから冷や汗かいちまったぜ!

 黒服の野郎が「ギクッ」と口に出して肩を竦めるから、肘鉄食らわしたぜ。そしたらよぉ「あんっ!」と甲高い喘ぎ声漏らしたから、ついキレて拳銃を手に取ってしまいそうだったぜ。

 自分から自首したんじゃあ世話ねーよな、自制心大事大事。ヒヤッとしたぜ。


「スリルたまんねー格別だぜ! ふひっ!」


 おちょくってくる黒服の野郎ムカつく!


 しかし黒髪の姫カットのヤツが「確かに怪しいけどシロよ……」と告げやがった。

 コイツは銀髪のガキの彼女らしいが、俺たちと同業者の臭いがするぜ。


 すると犯人の女性はキッと本性をあらわにして、オーラを全身に纏うと急にワイヤーを周囲に張り巡らせてこの場にいる人々の首に括り付けやがった。もちろん俺や黒服にもな。

 指先から放たれたワイヤーは恐らくオーラで具現化したもの。


「動かないで!! あの男のように首を跳ねてやるからっ! これがあたしの能力『死へ道連れる断頭台デス・テイク・ミー・ギロチン』よっ!!」


 いやマジでやべー!! あのイカれ大女やべー! 死んだな!

 まさか巷でウワサの創作士(クリエイター)ってヤツが犯人とは思わなかったんだぜ?

 そりゃ余裕でジェットコースター中にトリック仕掛けられるわ!


「大人しくさせっぞ!!」


 気付いたらワイヤー全てが斬り散らされ、いつの間にか現れた銀髪のガキがその女を抱えていた。既に女はグッタリ気絶中……。


 そのままソイツは警察に身柄を確保されていった。あっという間の出来事だ。

 あの銀髪のガキがやったらしいけど、マジで何したか見えねぇ。

 とはいえ、紙一重で命拾いした俺は、さっさと取引済ませて帰りたいなと思ったワケよ。




 人気のない場所で黒服たちが取引相手とボソボソコソコソやってたんだ。

 俺は誰かに見つからないように見張りしてたら、例の銀髪のガキが建物の影から取引現場を目撃してるのを見つけたんだ。

 最初はたまたま命知らずの馬鹿なガキが首を突っ込んでるんだと思って、鉄棒で後頭部を思いっきり殴ったんだ。


「あ、あぶねっ!」


 いや、お前、後頭部にモロ食らったよな?

 痛い様子も見せず振り向いてギョッとしているのは異様だったぜ……。普通気絶して倒れるトコだろ?

 そうじゃなくても額から血を流して「くっ! 貴様……」とか焦燥を帯びて俺へ向き合うだろ?


「頭打ったらどーすんだ! 死ぬぞ!」


 いや打ったじゃん! なんで平然としてるの? ねぇ?


 直感でヤベーヤツと思い、銃を向けたんだ。案の定ケロッとしててビビってねぇ!

 この俺が震えながら銃を向けているんだぜ? まるで初めて人を撃つような躊躇(ためら)いだった。だが、この状況はまるで違うね。

 銃なんかじゃ、この場を切り抜けられないって恐怖の直感が背中から囁いているんだぜ。

 見た目は素直そうな銀髪のガキなのにな。


 ワイヤー女以上の創作士(クリエイター)……って素人でも分かる……。

 下手に刺激したらミンチにされるんじゃないかって恐怖してたぜ。


「なんだテメェ……! 一体何者だ……?」(ガクブルで震えながら)

「コソコソ悪い事してるみてーだな? 覚悟しろぞ!」


「オイ!! 見つかったぞー!! さっさと逃げんかーッ!!」


 銀髪のガキが殺気放った瞬間、俺は反射的に叫んだ。現場を抑えられては敵わない。

 黒服や取引相手に知らせたつもりが、次の瞬間絶望に覆われたね。姫カットの女が現れて、両肩に黒服たちを抱えて地面に転がしたの。

 背筋が凍って足が震えたね。あの女も同じくヤベー人種だってね。


「くっ!! お、おのれぇ!!」


 命の危機に思わず銀髪のガキを撃ったんだが、目にも留まらぬ動きでパシッと手で受け止められてしまった。

 高速の推進と回転を伴う弾丸をも平然と掴むとか、もはや人間じゃねぇ。

 睨みつけてくる銀髪のガキの目線にゾッとしたね。

 何発も撃ち込んでも全て収集されて全く通じない。人間離れした動体視力に、超高速の弾丸を握っても裂傷や火傷すら負わない防御力。掠り傷一つ付けられねぇってのはマジ恐怖モンだぜ。



 俺は今まで何十人も裏で人を殺し続けてきたさ。


 でもな、コイツはまるで違う…………!


 正真正銘のバケモノだ!!


 その気になれば、この辺りを一瞬にして焦土に変え何十万人もの人間を屠る悪魔にさえなりうる。

 戦車を並べたところでどうにかなる相手じゃない。ケタが違う。次元が違う。


 ボッ!!


 気付いたら鈍い激痛と共に視界がグラついて地面が映った。


 ボディブローかまされて崩れ落ちたワケさ……。信じられねぇよな。あいつらからすればアリを摘むぐらい優しい力のはずなんだよな。

 それでもヘビー級世界チャンピオンも真っ青の重いパンチだ。


「げろっぼぼぼぼああああああっ!」ドババババビチャビチャアア!


 一昨日まで食べたモン全部吐き出してしまったぜ。




 とまぁ、残念ながら俺も黒服も取引相手も捕まってこのザマさ。

 むしろここにいた方が安全だって思うね。

 娑婆(シャバ)は人間の皮をかぶったバケモンでウヨウヨしてる。ワイヤー女も下手すれば大惨事を招きかねない。銀髪のガキも()()()()()()()()()()()さ。噂では世界大戦を勝ち抜いた猛者だって言うじゃないか!

 そうと知らずケンカ売っちまった俺は間抜けさ。

 誰がバケモノかわからねートコで暮らしたくねぇって心底思ったよ!


 こうして地道に作業をするのも悪くないかなって思う。

 単調で退屈そうだが、一番平穏で安泰している。争いと犯罪で充満している裏社会よりはずっと安心する。

 今まで会社に飼われている社畜と見下してきたが、この事で考えを改めた。

 俺は自分を狼だと思い込んでイキがっていた(ひつじ)でしかない、とな。


 もし出所したら、どこか会社に就職して静かに暮らすんだ…………。



 つー事で、あんま悪い事すんなよ? じゃあな!

 登場人物紹介!


三上(サンジョウ)ワイコ(暗殺者(アサシン))』

 栗色のロングで体操部をしていた創作士(クリエイター)。身軽で柔らかい身体に加え、驚異的なバランス感覚の持ち主。

 ジェットコースター走行中で犯行を行えるほどの身体能力と姑息さ。

 実はオーラでワイヤーを具現化する家系能力。

 技名はとある漫画の影響。

 誘導する断頭台(インバイト・ギロチン)(対象の首にワイヤーを括りつけて、他の運動力で断首させるトリック)

 死へ道連れる断頭台デス・テイク・ミー・ギロチン(周囲の人々の首にオーラのワイヤーで括って斬首する)

 咲き乱れる蔓花ブルーミング・バイン・フラワー(全身にワイヤーを巻きつけて『炸裂(バースト)』を流し込んで爆殺)

 威力値:3400


『シキ・キルテーシィオン(一般人)』

 裏社会で名の知れた男。名前はコードネーム。本名は山田(ヤマダ)タロウ。裏で何十人も銃殺してきた。凍りつくような冷徹な笑みを浮かべる癖を持つ。

 銃火器の扱いも体術も普通の人間としては一流。

 最近、組織の人間がモンスター化して過疎化している事を危惧していた。

 たまたま今まで創作士(クリエイター)に遭わなかった運のいい悪人。

 無期懲役刑だったが、模範囚で数十年もの獄中生活を経て出所した彼は、下儲けの会社へ就職して平凡な生活を送って平穏な余生を過ごした。最後まで独身だったが友人に恵まれた。

 威力値:540


『黒服の男(一般人)』

 シキの部下。絶叫系が好きで、取引現場を遊園地に指定していた常習犯。

 二人組。名前は鈴木(スズキ)ミヤゾウ。佐藤(サトウ)ヤスヒロ。

 黒い帽子に黒い服に目を覆うサングラスでいかにも怪しい風貌をしている。

 それなりに腕が立つ。

 早くに出所した後、シキを迎えて友人となり、腹を割って許せる仲になった。

 威力値:450


『取引相手(一般人)』

 シキ率いる黒い組織と取引をしようとしていた。容姿が一切描写されなかった不憫なキャラ。

 白い組織と名乗り、慈善事業の裏でクスリを売買していた女性。

 名前は美玲(ミレイ)トウミ。

 運悪くナッセたちに見つかり、組織ともども芋づる式に捕まってしまった。

 新開発の薬は『子供に若返る』という効力だったらしい。このまま進むと著作権的にヤバいのでは……?

 出所後は美容関係の会社へ就職し、シキとも友人になった。

 威力値;230

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