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58話「ナッセの悪役令嬢TS転生編⑪」

 カイエンのパパさんが突き刺さった場所は邪魔にならないよう、運動場の端っこなので大丈夫だぞ。

 コイツは魔王の幹部で巨大な力を持った吸血鬼だ。

 だから飲まず食わずでもピンピン生きているので、このまま放置しても全然影響はないらしい。

 太陽は目にさえ入らなければ体全体が灰にならないらしい。(そーゆー設定だっけ?)


 その息子であるカイエンとは言うと……?


「やぁやぁ! 元気っすか!!」

「いや、なんで召使いみたいになってんだよ!?」


 なんかカイエンは手をすり合わせて、こちらにペコペコするようになった。

 後ろで控えるような形で追従している。なんというかウザい。ってかこんなキャラだったっけ?


 ゲームの話になるが、表向きでは熱血漢で気性が激しい赤髪のイケメン。スポーツ万能で女性のファンが多い。しかし裏では吸血鬼で夜な夜な主人公のシンシアを狙うダークなギャップがある。

 シンシアに迫るが、その光属性に当てられて逆に惚れてしまう。

 そうして攻略対象となって親密度を上げる事ができる……って感じ。


「重いもの代わりに持ってあげるっす!」


 オレのカバンを横取りすると、満足げに追従する。

 こんな風に「~っす」とか言うキャラなどではない。終始プライドが高く、俺様気質でシンシアの心を奪おうと積極的に攻めてくるタイプだ。

 熱血の方かダークな方か、攻略方向を変える事もできる。


「なんでこうなったんだぞ……?」

「いやぁー。超怖くて強いパパさんコテンパンっすからねー。主人があなたに変わっただけで」


 ヤマミを真似てゴスンとカイエンの頭をチョップする。

 しかし嬉しそうにニヤけて「あひぃぃ……! ありがた~いオシオキいいっす!」とか性癖目覚めた気がする。

 今度は尻をピシペシ張っ叩くと「あひっ! こ、これはぁぁ!! 気持ちいいっす!!」とピクピク悶えていた。恍惚した幸せそうな顔。なんか引く……。

 その辺に置いてあった十字型の棒を手にして、勢いよく尻にグサーッ!!


「あひぃぃぃぃぃぃんっ!! 幸せぇぇぇぇええええっ!!!!」


 天高く飛んでってカイエンは真っ白になるほど絶頂を迎えた。ドパーン!




 茶髪短身のイケメンが花園でなんかモゾモゾしてたので気になって「どうしたの?」と声をかけてみる。


「おお! エリゼ様かー! んにゃ、花の世話してっぞー」


 手袋をはめてて、なんか虫を取っていた。

 病気にならないように栄養を与えたり、虫取ったり、肥料を足したり、色々世話をしているようだった。意外な一面である。


「ウチで畑耕してたし、園芸もお手の物だぞー!」


 聞く所によると、この学校で家庭菜園を魔法でできないか研究する為に入ったらしい。

 野菜はもちろん花畑もやっているので、父を継いでもっと大きくしたいって夢を持っている。

 底抜けに明るくて奔放的なキャラ性が、ギュサーの魅力だ。


 ズンズン、小さな岩のゴーレムがやってくるのが見えた。手にはジョウロを持っている。


「おー終わったかー!」

「ウン!」


 ギュサーは魔法でゴーレムを作れるらしい。

 家系としてゴーレム生成を得意としていて、それで畑を管理したり保護したりしている。

 ここで魔力を磨けば、もっと多くのゴーレムを生成できるからなんだそうだ。


「ここに入学したおかげでゴーレムは「ウン」「イイエ」と簡単な言葉を話せるようになったんだぞー」

「……それは凄いな」

「でも、おまえの方が凄そうだけどなー? 魔王の幹部ぶっ倒してたし」

「まさか魔王の幹部とは思わなかったけどなー。ちょい強いかなって程度だったけど」


 しかしギュサーは首を振る。


「おまえがいなけりゃ、本気で学校ドカーンだったぞ? 誰も敵わなねーってくらい圧倒的な絶望だったぞ」


 ギュサーと一緒に回りながら、そんな風に会話を続けていた。

 運動場を回るついでにギュサーは栄養剤をブスリとパパさんの尻に差していった。ピクンと痙攣する。


「あひぃぃんんっ!!」


 なんか喘ぎ声を漏らしドバドバ噴水し始めたけど気のせい。絶対気のせい。


「自分の意識を分裂させてゴーレムに付加できない?」

「ん? もしかして『分霊(スクナビコナ)』か? さすがにオイラにゃできねーなー」

「そっか……」

「あれは高度な技術だからなー。あれできりゃ、自分と同じ能力を持ったゴーレムで畑を世話できるしな」


 ヤマミやノーヴェンや師匠はホイホイできてたけど、やっぱインテリ系なんかな?

 オレは全然できないし才能がないと思って諦めていた。

 今だからこそ、それができれば応用してこのエリゼに人格を残したまま元の世界へ帰れるんじゃないかって考えるようになった。


「思ったようにいかないなー」

「気長にやればいいぞー。すぐにできねーのが世の常だもんな」


 それは言えてる……。


「ギュサーありがとな」

「おう! また会おうなー!」


 互いに手を振って別れた。なんだか気持ちの良いイケメンだったな。

 だが、話して分かった事もあった。既にエリゼの肉体がオレの本体になってしまっている。だからこそ『分霊(スクナビコナ)』みたいに自分自身の魂を分裂させて、エリゼの肉体に残しつつ元の世界へ帰れないかと発想したのだった。


 元々『分霊(スクナビコナ)』は、仮の肉体を作って分裂させた自分の魂を移して分身を作るスキル。


 それを応用すれば、オレが二人になって両立できる。

 エリゼは仮の肉体ではない為、ある程度の攻撃を受けて掻き消える事はない。まぁ自害してまで離れる気はないしなぁ。それこそエリゼの家族に申し訳立たない。

 それに────────!


 外でなにかザワザワ、不穏な気配が感じられた。やっぱ来るか……。

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