439話「火星総力戦⑩ 正義と悪!!」
五領主コブラッシの噛み付きと、四首領エレサのストレートパンチが衝突し合って、広範囲の地形もろとも爆ぜさせるほどの衝撃波が吹き荒れた。
後退していた六聖騎軍も「うわあああ!!」と煽られて流されていく。
なおも大地が震撼し、吹き飛んだ破片が烈風に流れる。
「ぐっ!」
コブラッシの鋭い二つの牙がエレサの拳に食い込めない。
続いて憤怒の形相でエレサは反対側の拳を振るう。コブラッシは顔を殴られる寸前、しなった尾で弾く。
それだけで大気が爆ぜるほどの轟音が全てを震わせた。
まるで怪獣の戦いだ。
「はああああ~!! おおおおおおおッ!!!」
エレサは気合いを発して溜めてからの、連続パンチが繰り出される。
熾天使らしからぬ荒々しいステゴロがコブラッシを襲う。
やはり五領主だけあって、しなる尾を巧みに振り回して連続パンチをことごとく叩いていく。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!
それだけで周囲にドンドンドンッと衝撃波の噴火が連鎖されていく。
もう地盤はメチャクチャに荒らされて破片が飛び交う。断続的に衝撃波の波紋が数十キロに渡って広がっていって百キロを越えるほどに余波が吹き荒ぶ。
「三十五キロで聖風バリア張って耐えるのが精一杯みたい!」
リッブカは球状の竜巻のように聖風で包み込んで、他の六聖騎軍を守りきっていた。
なおも地響きは耐えず、破片を運ぶ獰猛な烈風が吹き荒れ続ける。
ゴゴゴゴッ!!!
「こ……これが……威力値一〇〇万オーバー同士の戦い!!」
「近くにいたら全滅しますよ!」
「エレサさまと渡り合えるなんて……五領主はヤバいよ!」
大噴火のように衝撃波が大規模に噴いて、キノコ雲のように煙幕が立ち上っていく。
それだけ尋常じゃない破壊力が荒れ狂っているんだ。
「エレサさんと言いましたかしぃ!! 正義を振りかざす綺麗な天使だと威張りたいなら、もうちょっと気品溢れる攻撃をした方がいいんじゃないですかしぃ!」
「ごあいにくさま!!」
エレサのフックが大気を切り裂きながら振るわれると、コブラッシは長い身で素早く絡みついて背負い投げのように巨体をブオンッと放り投げた。
水切り……川を跳ねる石のようにエレサは飛沫を噴くほど大地をバウンドしながら大きな岩山に激突した。岩山さえ粉々に砕け散って四散。
ゴゴゴゴゴ……!!
「それとも天使のボスとあろうものが、それしか芸がないんですかしぃ!? そうだとしたら失礼したしぃ!」
すると立ち込めていた煙幕から、エレサが飛び出してカカト落としを見舞う。
咄嗟にコブラッシは瞬間移動のように走り去る。
ドゴゴオッ!!!!
大地にカカトが打ち下ろされ、数十キロ規模で巨大なクレーターに窪んでいく。
波紋のように衝撃波が荒れ狂って岩の破片を巻き込んで、キノコ雲として高々と噴き上げられた。
エレサのカカト落としは一五〇キロ範囲にまで陥没させるほどの破壊力だぞ。
「コブラッシ殿、失礼じゃあないさ!!」
エレサは四メートル強の大女ながらも、音速を超える速度でコブラッシを追いかけて縦横無尽に格闘を始めた。
あちこちで乱打による衝撃波の連鎖が繰り広げられ、鼓膜どころか脳まで破壊してしまうような轟音が鳴り響いていく。
もし常人がここにいたなら、人体が内部から破裂するだろう。
ガガッガガガガッガガガガッガッガガガガッガガガガッガッガッガッガ!!!
空中でエレサのアクロバティックな蹴りと、コブラッシの尾が斜交い!
その衝撃だけで空の雲が爆ぜた!
ドッ!!!
コブラッシが強靭な筋肉を活かして連続噛み付きを繰り出し、エレサは凄い形相で拳のラッシュを繰り出して大地に巨大な亀裂が走る!
ゴゴッ!!!
エレサのエルボーとコブラッシの尾が激突!!
土砂が噴火のように高々と噴き上げられる!
ズオッ!!!
「最初っから私は正義を振りかざしちゃあいないからね!!」
「なにっしぃ!?」
コブラッシがエレサの体へ絡みついて締め付けようとするが、怪力で無理やり剥がされて、今度はジャイアントスイングでブンブン振り回す。
地面に一度叩きつけ、今度は反対側へ叩きつけ、交互にバッタンビッタン叩きまくっていく。
ドッ! ドドッ!! ドッ!! ドドドッ!! ドッ! ドッドッ!!
叩きつけられるままじゃないと、コブラッシは長い身を翻してエレサの首へ噛み付く。
更に濃度の高い毒液が溢れた。
しかしエレサは「はっ!」と気合いを発するだけで毒液が破裂。パァンッ!
「天使族は人間から進化した上位生命体! そりゃあ自惚れるヤツが出てもおかしくないからねぇ! 元は業の深い人間だもの! 例え上位生命体へ進化したとて根っこの部分はそう変わりゃしない!」
「自覚してるんですかしぃ! 偉い偉いしぃ!!」
「皮肉らなくてもいいよ! 人間の本質は性悪説!! 私がステゴロをするのは正義を振りかざして悪行をしない為の戒めさ!!」
加虐的な悪意を込めた拳に握って、見開くコブラッシの頬を殴る!
ドゴッ!!!
吹っ飛んだコブラッシが遠くの大地へ突っ込んで、勢いよくキノコ雲を噴き上げた。
遅れて大地の震えと烈風が届いてくる。ゴゴッ!!
「そうですかしぃ!!」
「そうさ!!」
向こうで立ち込めていた煙幕からコブラッシが高く飛び上がって、同時にエレサも飛び上がって、太陽の下で激しい格闘を繰り広げた。
ガガガッガガガッガガガッガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!
相手を叩きのめしたいという加虐でもって攻撃を繰り出す!
その結果、命を奪う事になろうとも敵を潰したというカタルシスを生む!
人間の歴史は戦争によって血塗られてきた! いかに破壊できるか! いかに大量殺戮できるか!
それはこれまでも、そしてこれからも連綿と続く争いの宿命!!
「では平和は望まないとしぃ!?」
「当たり前だよ!!」
「なんとまぁ物騒だしぃ! 邪悪そのものじゃないかしぃ!! ししっ!!」
「否定はしないよ!! 平和ってのはねぇ、自分が痛ぇ目に合いたくないから望むものさ!!」
コブラッシの噛み付きと、エレサの拳が真正面から激突!!
それだけで滅亡兵器クラスの破壊力で衝撃波が爆ぜる!
ゴゴッ!!!
「同じムジナってわけだしぃ!! じゃあ手を組もうじゃないかしぃ!!」
「ありがたい誘いだけど遠慮するよ!! この私の正義を騙る悪は、あんたら気に食わねぇ連中を駆逐する為にあるんだよおおッ!!!」
ドストレートをかますエレサの信念に、コブラッシは目をひん剥く。
彼女は自身が悪と自覚していながらも、正義として道を歩む為に血に塗れた武力で敵を叩き潰す気概なのだ。
「くっ!! 普通に正義を気取って難癖つけて敵を叩き潰して正当化を図るより、タチ悪りしぃッ!!」
「お褒めに預かり光栄よッ!!」
格闘の果てに、弾かれるように双方が間合いを離れていく。
コブラッシは舌を伸ばして地面に突き刺し、膨大な高密度の毒を注入!! ドッ!!
すると広範囲に渡って毒の噴火があちこちで幾重に噴き上がっていく!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!
環境を汚染するかのように凄まじい毒が蔓延し、毒沼に染めていく!
エレサが嫌うように、周囲を汚して他人を巻き添えにするつもりの悪意を撒き散らしたのだ!!
「巻き込むんなッ!!!!」
エレサは六枚の白翼をメキメキ蠢かして内側へ囲む、その中心で光子が収束していく。
キュイイイイ……、聖なる光球が膨らんでいって眩く輝きだした。
それを見てオレとヤマミは絶句した。
「まさか!? エレサさんも三大奥義をっ!?」
「賢者の秘法っ!?」
オレたちのように自然霊と協力して完成させるのではなく、自力で収束させたエネルギーを超圧縮してる。
それだけ制御力がはんぱない。
これが四首領の実力!?
「たっぷり受けなさいな!! 私の三大奥義『賢者の秘法』!! アンジェルス・ディパラ・イラエッ!!!」
眩い聖なる光球をエレサは握り締めて、そのまま毒沼へ殴りつけた!!
波紋のように神々しい光の輪が高速で広がっていく!!
一瞬にして毒が残らず蒸発していくぞ!!
「なっ、何しぃぃぃッ!!?」
コブラッシは真っ白の光へ呑まれて、毒々しい体が白く染まっていく。
「あぎゃああああああああああああああああ…………ッ!!!!」
たまらずコブラッシは絶叫しながら粉々に消し飛ぶ!
極大化された破邪力が広範囲に浸透させられて、天地を震わせるほどに眩く輝く巨大な光柱が遥か天にまで噴き上げた!!
ウ オ ッ!!!!
宇宙でもよく見えるように、火星から十字の光を象って輝いた!
「正義は勝つ!! 敵を蹂躙するほどの殺戮まみれた武力でね!!」
エレサは悪意殺意戦意を肯定しての言葉で勝利宣言した。
オレはそんな彼女の信念にゾクッと竦んだ。




