4話「城路本家とさっそくモメる!」
日が沈み夜空へ段々切り替わっていく、その下で明かりを漏らす窓が並ぶ大屋敷。
そこでオレたち城路家は本家分家揃って、大魔王打倒の平和を祝う宴会を開いていた。大広間で多くの親戚たちがワイワイガヤガヤと和気藹々だ。
豪勢に寿司を入れた大きな黒い桶が長テーブルに並び、茶やビールの瓶がコップと共に添えられている。
本家の総統様直々の長い話から始まり、これまでの世間話などを繰り出しながら宴会を楽しんだ。
「なに!? お前ごときがスペリオルクラスだとッ!?」
アッキーは憤りを含む驚き声を走らせ、オレに指差していた。
……どうもオレの本当のクラスである『鍵祈手』まで本家に知られていたようだ。今までは『剣士』としか知らせていなかったんだが、まぁオレ自身も最近知ったばかりだぞ。
「まぁまぁ落ち着いて……」
「そ、そんな!! 信じられるか!? こんなチビが我々本家を差し置いて上位クラスだなんてッ!!」
興奮するアッキーをなんとか宥めているタッちゃん、すみません……。
またストレスで髪が後退しないのか心配だぞ。
そもそもスペリオルクラスは後天的に目覚める事が多い。
オレの『鍵祈手』も『運命の鍵』を所有して発現する。そして他のクラスの特徴を全部併せ持つ万能の特性……だっけ?
つまりオレは『剣士』でもあり『弓兵』でもあり『魔道士』とも言える。会得した分だけ合算していくのがこのクラスの強みだ。
……っても『運命の鍵』によって転生しまくれるから、複数のクラスを会得していけるからこそなんだよな。
それにコイツは同一の時間軸に一人いるかいないかくらい極レア。今回は夕夏家総統ヤミザキとオレで二人だったがな。
「その辺で勘弁してやれないか? この場でみっともない真似はやめてくれ」
「岐阜県の分家、城路ヨシュア!?」
クールで長身のイケメン。クラスは『侍』。髪型はオレと似ていてやや長い。腰には刀を差している。
A級創作士で一目置かれているぞ。初めて会ったけど、確かにイケメンだなぞ。
「おっぱいも触った事がない独身童貞は黙ってろ!!」
「なっ! 気にしてる事を……!!」
アッキーの一言に、ヨシュアは癇に障ったのか顔を険しくしていく。険悪だ……。
「どうしてそう面倒事を引き起こすのだ?」
なんと本家総統タツロウが割って入ると、途端に時が止まったかのように静寂に包まれた。
アッキーですらギリッと歯軋りしたまま引き下がるしかない。
「そういう血気盛んなのは嫌いではないが、そう周囲を刺激するものでもない。分家の者と険悪になっては本家として立つ瀬がないではないかな?」
「ううっ……!」
シリアスなタツロウはオレの頭をポンポンと叩く。おい!
「……しかし、新潟の分家は用事で来られないとは言え『勇者』のクニローもいる。それに引き換え、我々は未だ標準クラスの枠に収まっている身。不甲斐ないのも無理もない。今後精進せねばな」
さすが本家総統タツロウ様は謙虚で話が分かるお方。あっという間に事を収めた。
「鶴の一声で場を収めた……、凄いわね」「ああ」
ヤマミが腕に抱きついてきて、そのプニッとした感触で安心していく。おっぱい効果しゅごい!
しかしアッキーはフルフル震えながら表情をピクピク引きつらせて、すごく悔しそうだ。ついに我慢できずカッと激情をあらわにした。
「この場でもいちゃつきやがってー! 特におっぱいををを!!」
「セクハラは黙ってて!」
「…………ぐッ!」
毅然と睨むヤマミにアッキーは気圧されるが、性格上このまま引き下がれない。タツロウは深いため息を漏らす。
ヨシュアはシリアスな顔で「……あのチビがおっぱいを……うらやま」と呟いていた。モテそーなのに意外ぞ。
「本当にコイツが大魔王倒したのかよ!? じゃあセンターに来い!」
血気盛んにアッキーがオレへ指差す。
騒々しくなる一同の視線を集めてしまうオレ。大魔王を倒したという噂はみんな知っている。これまで宴会という事で当たり障りなく談笑するだけに留めていた。
しかしアッキーに名指しされる事により、当の本人と強調された形になった。
これだから嫌なんだぞー!! ひっそり過ごしたかったのに!!