38話「オレが新しく漫画を描く目的!」
月曜日、オレたちはいつものアニマンガー学院で授業を受けていた。
今回は漫画学科で、ヤマミと一緒に机へ向かって執筆していた。本来なら、創作士として自分の様々なスキルの志向と鍛錬を行う修行をするべきなのだが、オレは敢えて漫画を描く授業を受けていた。
以前はフェイクの為に授業を受けていたが、施設を独占していた藻乃柿ブンショウが解雇されて以降、漫画やイラスト関連の創作と冒険や戦闘関連の創作と二つに分けられたのだ。
「……おやナッセ君、こんなに上手かったんですかね?」
先生が感嘆漏らすような顔で、オレの原稿用紙を拾い上げてまじまじと見る。
そしてみんなも興味を引いたのか、集合してきて「うおー!」と驚いていく。
「マジかよ!」「夏まではヘタクソだったのに!?」「うおお! すげー!」「このトーンのフラッシュすげぇ!」「線も綺麗に引いてるぜ!」「アクションの躍動感パネェ!」
なんか照れくさいなぞ。
みんなの反応に気恥ずかしく思いながら、本当は記憶を取り戻すと共に漫画の経験まで戻っただけなんだよなと。
元の並行世界のオレは絵を描くしか、やりたい事はなかった。
今の創作士のようにクラスやスキルなんてなかった。だからこそ絵を描く事に時間をつぎ込めた。その分だけ上手くなっていったのだ。
「相変わらず上手いね……」「せや……」
なんかオカマサとドラゴリラは落ち込んでる気がする。
最初は入学したての頃、みんなから上手いって言われてたんだよな。でも実は劇薬でドーピングしていたらしい。
脳に刺激を与え、一時的に芸術脳と呼ばれる右脳の領域を拡大する効力……。
つまり意図的にサヴァン症候群みたいな状態に一時的になれる。するとどんなに才能がなくても、天才レベルの才能に引き上げられる。
それでズルをしてたんだが、人造人間侵略戦争で敗北を喫してから劇薬に頼る事を止めた。
今は自力で描いているが、以前ほどうまく描けなくなっていた。
だから落ち込んでいるようだ。
なんとか励まさないと!
「オカマサさんは熱血滾らせて邪気眼全開のロボット系やガンアクション系漫画を描いてたじゃないか! ドラゴリラだって楽しそうにブサイクオッサンだらけのBL(?)恋愛(?)漫画描いてたじゃないか! あの時の情熱を見せてくれ!!」
「止めろォォォォォ!!! その黒歴史を言うなァァァァァ!!」
「せ、せやせあせやせやせやせやせやせせやァァァァァ!!!」
なんか顔真っ赤で湯気立てて、発狂しながら慌てまくってるぞ?
オカマサとドラゴリラはゲッソリ痩せこけて、ヨロヨロよろめきながら自分の机に戻っていった。しばらく沈んでいた。ずーん!
「ねぇ、なんでまた漫画を描くようになったの?」
「ああ、うん……。異世界行くから、その冒険譚を漫画にしたいかなと」
オレは確かに絵は上手かったかもしれないけど、物語のつくり方は上手くなかったなぁ。
ちなみに小説も書いてたけど大した評価じゃなかったなー。しょせんは趣味の域を出なかったんだよな。くっ!
「……私にも読ませてね」
「ああ。一番に見せる」
「ふふ」
今は異世界での冒険譚を漫画にするという目的ができた。
それにヤマミが楽しみにしてくれるだけでも嬉しくて、もっともっと描きたいなってモチベーションが上がりまくってるぞ!
ヤマミの原稿用紙を見やると、不慣れな絵心……、何度も描き直しの苦労を感じせた。
「み、見ないで!!」
赤面しながら、サッと自分の原稿用紙を腕で隠す。
オレに付き合ってくれてるので、得意というワケじゃないんだよな……。すまん。
「ジャマミ~~~~ッ!!」
ドガガーン、とカカト落としのままでエレナが天井をブチ破って落ちてきた。
しかしヤマミは白羽取りのように両手でガシッと挟み込んで受け止めた。ギリギリ、力比べだ。バッとエレナは離れて着地。
またかよ…………。
「ヤマミって言ったでしょう」
「ダーリンとイチャイチャすんなー!!」ぷんすかぷん!
しかし先生がエレナの頭を鷲掴み。ガシッ!
「…………授業中ですよ? 天井どうしてくれるんですかねぇ?」
先生は笑っていたが、表情にピクピクと怒りマークが浮かんでいるぞ。
エレナは青ざめて「ひっ!」と涙目になっていく。
ぎにゃ────!!
その帰り道、夕日で橙に滲む都市風景。
九月だからか、なんとなく夜が長くなった気がする。
ヤマミと一緒に歩いていると、ザッとエレナが立ち塞がった! なんか怒ってる!?
「ジャマミ!! 仮想対戦センターでソロ対戦で勝負しろ────ッ!!」
ビシッと指差して激情を叫ぶ。
ヤマミは冷めた感じで「嫌よ」と言い捨てる。エレナはムッカーと頭上から湯気を噴き出す。
拳を振り上げて殴りかかろうとするエレナを、間一髪スミレが「止めろよ!」と手首を握って止めた。エレナとスミレが揉め始めるのを見かねてヤマミは溜め息をついた。
「……じゃあ行ってみれば分かるわ」
「な、何言ってんの?? ジャマミのクセに?」
オレの手を引いて、ヤマミは「センターへ行きましょう」と歩き出していく。
嫌だって言ってる割に積極的にセンターへ向かう彼女の矛盾とした動向に、エレナは怪訝に眉を潜めた。スミレは「ああ言っているんだし、行こか」とエレナの背中を押す。
「あー奇遇ね!! ナッセこっちこっちー!!」
なんと仮想対戦センター前で、リョーコが元気良い笑顔で手を振ってくる。しかもアクトまでいるぞ。
それでもヤマミは「スター新撰組だっけ? 行ってきなさい」と積極的に促してくれた。
「あ、ああ?」
オレは不思議に思ったまま、リョーコとアクトと一緒にセンターへ入っていく。
そしてヤマミは「エレナも来るんでしょ? 私も行くけど」とエレナへ見やる。
「へっへー!! ナッセにいいところ見せよーたって、そうはいかないからねッ!!」
スミレはなんとなく違和感がしていたが、黙って様子を見る事にした。
ブ────────ッ!!!!
「誠に申し訳ございませんが、ナッセ様、ヤマミ様、エレナ様の三名は仮想対戦センターでの対戦はご利用できません!」
オレもエレナも、更にリョーコも目を丸くして、間を置いてから「ええええええっ!?」と驚いたのだった。
ヤマミはさそも分かってたかのように涼しいカオで「やはりね」と呟いた。




