32話「月末バイオハザード!③」
何故か都合よく地下道に繋がってた地下研究所へ向かって、宿題ゾンビを解除できるワクチンを手に入れる事にした。
オカマサ、ドラゴリラ、モリッカと一緒にオレとヤマミは同行。
マイシの襲撃をかわして無事エレベーターに乗り込んで、途中の階層にオレたちは降ろされた。
扉が閉まる間際にオカマサは「囮になってくれ」とほくそ笑んで、ドラゴリラと共に更なる下へ行ってしまった。
そしてこっちの通路で挟み撃ちするように宿題ゾンビがわらわら歩いてきた。
絶体絶命のピンチでオレは「くそ!! あんのヤロ~!!」とハメられた事に怒りを滲ませた。
このままでは先にワクチンを独り占めされちゃう!
「あー、大丈夫ですよ! 降りて良かったんですよー!」
妙にモリッカはにこにこ笑顔だ。
すると閉じられたエレベーターの扉からドゴンと何か落ちた音がしてバキバキ破く音がした。
「う、うわああああ!! こ、この!!」
「せやせやせやあああああ!!! ぎゃああああ!!」ガブッ!
「や、やめろ!! やめろおおおおお!! ぴぎゃああああああ!!!」
なんかドッタンバタン阿鼻叫喚と共に衝撃が床から伝わってきた。
「ねぎぁぁぁ…………!」ガブッ!
なんか意味不明な断末魔(?)を発した後、落ちてきたマイシにやられた事を察し取れた。
フツー追いかけてくるよなー! マイシなら鋼鉄の壁も破ってくるし!
あいつらの言う通り囮になってくれたようだ……。ざまぁ!
「全くゾンビものにありがちな展開ね。見捨てたら逆に食われるヤツ」
「あ、ああ……。だがあのまま一緒だったら全滅だったなぞ」
「あっはははは~!! でも今度はこっちですねぇ~」
左右から「宿題ぃぃぃ~~!!」と連呼しながら迫ってくるゾンビの群れ。
「宿題やらせるのですー!!」
なんか聞き慣れてると思ったら陽快バージョンの五等身コハクがノリノリで槍を手にブンブン振っていた。
「ってちょっ待て待て!! お前も宿題やってなかったんかい!!」
「キャハ! 修行に没頭しすぎて忘れていたのですっ! なので陽快となって現実逃避中なのですーっ!!」
「おい!」
うわぁ……。天才コハクも案外抜けてるよなぁ。
それどころじゃない! 逃げよう!!
コハク(陽快のすがた)を筆頭に左右から攻めて来る宿題ゾンビに、オレたちは真ん中の正面扉へ逃げ込んだ。バタンと扉を押し付けるように閉めた。バタンバタン押しかける振動が響くが、そこら辺の机とか器具とか運んで塞いでおいた。
ふー、と息をつく。
すると研究室にはガラスのカプセルが五つ並んでいた。
中になにか入っていた……。海にいる獣で名は確かトド……。ずんぐり太った胴体。なんか濃い目でギンと睨んできた。
「なんだあっ!? これはっ!!」
「…………単に飼育してたみたいね。それより早く下へ行かないと」
なんだよトドを飼育とか、一体どんな研究なんだ!? ウイルスと全く関係ねーだろ!
「ユーたち、何故ここまで来たのデスカ?」
声に気づくと、メガネをキランとさせた白衣のノーヴェンがいた。後ろで同じく白衣のコマエモンとミコトがいた。
まだ無事な人がいた! 知的なノーヴェンなら宿題なんて終わってる!
「それより外がとんでもない事になってるんだ! 宿題ゾンビが大量発生して……」
「だからここの研究所のワクチンを手に入れたいの!」
「あっはっはっは~!」
「……そうですカ」
冷静なノーヴェン(白衣のすがた)はメガネをクイッと押し上げている。
「その前にまず間違いを正しまショウ」
「ま、間違い??」
「そんな事よりワクチンはどこ? 案内しなさい!」
しかし不穏な気配のノーヴェンたちはゆらりと歩み寄ってくる。
オレたちは不安の影が差して、あとしざりしていく。
「宿題ゾンビではありまセーン!」
「は? はぁ?? 違うのかぞ??」
「イエス!」
ノーヴェンはコクリと頷く。
「……ミーは確かに夏休みの宿題はとっくに終わってマース」
「だよな? 違うのか?」
するとコマエモン(白衣のすがた)が不意に抜刀して、オレは思わず後ろへ避けた。机が斜めに切断されてズズンと崩れた。ミコト(白衣のすがた)もカードを腕のディスクにはめ込んでアンデットモンスターを具現化させる。ドン!
「こっちは月末までの研究の課題が終わってないのデース!! つまりミーたちは課題ゾンビ!! そして会社員と業者は納期ゾンビ!! 課題ぃぃぃぃ~~~~~!!」
「拙者手伝っているも不覚にも間に合わぬでござる!! 課題ぃぃ~~~!!」
「オレもデュエルし過ぎて普通に宿題やってないんだZE!! 宿題ぃぃ~~!!」
なんとノーヴェンたちが豹変して襲いかかってきたぞ!! ヒイッ!
するとモリッカがその辺の椅子を手に振り回し、バゴガッとノーヴェンたちを殴り倒していく。なんか歯がいくつか飛んだが気にしない事にしよう。
だがこれでよく分かったぞ! なぜゾンビに生徒たちだけじゃなく、会社員までいた理由が!
つまり月末までの宿題、課題、納期が終わらないがゆえにゾンビ化しているのだぞ!!
でも逃げ場はもうない!!
「僕についてきてくださーい!!」
なんかウキウキなモリッカは出入り口へ戻ると開けた。なんとゾンビがいっぱい!?
しかしモリッカは自ら丸まってゴロゴロと高速で転がってゾンビどもをペチャコンにして進んでいったぞ。オレたちもそれに続く。
ごろごろごろごろごろろろーん!!
「ぎええ!」プチッ! 「ぴぎゃあ!」プチッ! 「がふぉっ!」プチッ! 「ぎはあああ!」プチッ! 「ぶげっ!!」プチッ! 「おぼああ!」プチッ!
コハク(陽快のすがた)共々、ペチャコンと床にうつ伏せ。すまぬ!
モリッカはいつも奇妙だけど頼りになるよな……。
魔法が使えないからこそ、モリッカの機転でゾンビの襲撃を跳ね除けてきている。現に前から来るゾンビは次々と潰されていく。
ようやく非常用の階段が見えた。交互に折り重なるように階段が上下に続いている。これも映画でありがちだなぞ。
丸まっているモリッカはそのまま階段を転げ落ちていく。ごろごろー!
オレとヤマミも慌てて降りていく。確か最後の階層にワクチンが保存されていたと聞いている。
ようやく一番下まで来ると下への階段はもうない。扉を開けると人気のない研究室がガラスの壁越しに見えた。なんかガラスケースが多くカプセルも沢山並んでいる。
ドガアアアアッ!!
なんとドラゴンゾンビと言うかマイシが壁をぶち破って四つん這いで現れたぞ!!
くそ! 今のオレたちは普通の人間も同然……ッ!!