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31話「月末バイオハザード!②」

 夏休み最終日で、なんと宿題ゾンビがわらわらと湧き出してきてオレとヤマミは逃げざるを得なかったぞ。

 と言うか、夏休みの宿題ができてない焦りでゾンビ化するとか何なんだよ!?

 しかも浄化力が強い妖精王に変身できなくなってるし、一体何が起きてるぞ?


 マンションをリョーコとエレナとその他ゾンビに襲撃されて、オレたちは窓から脱出して隣の屋根の上に着地。しかしそこを宿題ゾンビと化したフクダリウスが襲いかかってきていた!


 オレは「くっ!」と険しい顔で、拳を突き出して『刻印(エンチャント)』を発動しようとするが、何故か何も起きない。


「ひ、光の剣が出せない!!」

「こっちも魔法が撃てない!」


 なんと手をかざしたヤマミも焦りを滲ませていた。同じく魔法も出せないようだ。

 オレも光の魔法を発動しようとするが、何も起きない。


「娘の……娘のっ……宿題が終わらなぁぁ~いッ!!」


 宿題を手にフクダリウスが巨躯を弾丸のように突進してくる。

 オレは「ひいっ!」と飛び退くと、フクダリウスは通り過ぎて屋根の一部をドギャアッと豪快に砕く。


「早くこっちへ!!」


 ヤマミの急かす声にオレも続いて、一緒に別の屋根へと飛び乗っていく。

 フクダリウスはキョロキョロした後、こっちを見つけるなり赤く目を光らして「ヴヴヴ」とヨダレを垂らしながら駆け出してくる。

 ドスドスと大男が追ってくるその姿は恐怖でしかない。


 オレとヤマミは顔面蒼白で走り出し、次々と住宅地やビルの上を飛び移っていく。

 しかしフクダリウスはその図体ゆえに超重量で、飛び乗るたびに屋根や屋上を次々ドカン、バガン、ズガンと粉砕しながら追いかけてくるのだ。

 そんなヤツに捕まったらマジでこ、殺される!


「宿題ぃぃぃ~~!!」「宿題ぃぃぃぃ~~!!」「宿題ぃぃ~!!」


 その下の道路でも宿題ゾンビがわらわら追いかけていて、その先頭でリョーコとエレナが後続を引き連れているかのようだ。

 あっという間に距離を詰めてきたフクダリウスが「うがあああ!!」と迫ってきて、オレは死を覚悟した。


「バァァァニングッ!!」「せやぁぁぁあ!!」


 なんとタネ坊こと熱血漢オカマサと、キンタこと男色家ドラゴリラが揃って飛び蹴りをフクダリウスの顔面にかまし、屋根をぶち抜いて下の階に落とした。

「バーニング(クソ)ナパーム!!」

 更に追撃でオカマサはズボンを下ろして、グルグル巻きのウ●チを尻から撃ち出してドカーン爆発させた。

「ぐわあああああああッ!!!」

 思いがけない助っ人にオレは「オカマサ! それにドラゴリラ!! 大丈夫なのか?」と聞く。


「ああ! 俺たちは既に夏休みの宿題を終えてるからなっ!」「せやせや!」


 こんなのでも今は頼もしい。

 道路に群がって、こちらへよじ登ってくる宿題ゾンビにドラゴリラは尻を出して「気功放屁ッ!!」とシリアスな顔で放射!! ボバッ!!

 黄色い煙幕が広がり、あまりの臭さに宿題ゾンビたちは死屍累々と横たわり、ピクピク痙攣していた。

 ……なんというか気の毒だと思うぞ。


「そんな事より、逃げるんだ!! こっちへ」「せやせやせや!」


 とは言え、かつて憎しみ合った相手だけに、助けてくれるなんて心強い。

 オレはヤマミと頷き合い、彼らについていく事にした。

 走り続ける事、数十分。ようやくゾンビの姿がいない所まで来ると、人気のない静かな道路に降りた。


「もう二十時か……。すっかり暗くなってるなぞ」


 腕時計を見やり、空を見上げると月が視界に入った。


「こっちから行こう」「せやせやせやせや」


 なんとマンホールを外して、オカマサとドラゴリラは入っていく。オレもヤマミもそれに続く。

 下水道は橙色のライトで寂しく照らされていた。

 臭いは気になるが、この際言ってられない。ここじゃゾンビもいないし、入ってこれない。オカマサとドラゴリラの行く先へついていく。


「はぁ~どうなってんだよ! 妖精王に変身できねーし」

「それよりも大阪以外に脱出しないと!」

「む、待て!!」


 オカマサがなにか察知し、制止の手を伸ばす。オレたちは緊張して立ち止まる。

 向こうの交差点っぽいの、曲がり角から人影が伸びてきてるのが見えたからだ。ドクンドクン心音が高鳴っていく。


「おやおや~! ナッさんにヤマミンじゃないですかぁ~!」


 なんと明るい笑顔でモリッカが手を振ってきた。ホッとした。


「……フッ、脅かしてくれるな」「せやせやせやせやせや」

「あっ! オカマ君とゴリ君もいましたか?」


 素なのかモリッカはオカマサとドラゴリラに振り向いて、今気づいたみたいなリアクションした。

 そんな扱いにショックを受けかけた二人は「そ、それよりも地下研究所へ行く! ついてきてくれないかい!」と誘ってきた。

 オレは目を丸くした。


「逃げるんじゃなくて、地下研究所へ??」


 オカマサは半顔で振り向いて「そうだ」と答える。

 話を聞くに、宿題ゾンビは地下研究所で秘密裏に作り出されたウイルスの影響らしい。その危険性故に、保険としてワクチンもあるのだという。

 で、そのワクチンをゲットして宿題ゾンビを解除しなければならない。


「あっはっは~! そうですかぁ!!」

「……確かに逃げるよりは建設的ね」

「まだそこにもゾンビいるかもしれないけど、ワクチンさえあれば助かるんだろ!? 行くしかない!」


 オレとヤマミとモリッカは意気投合して「おー!!」と拳を振り上げた。


 歩きながらオカマサが地下研究所の細部を記した地図を見せてくれた。

 一番下の階でワクチンが保存されているらしい。ここから入っても十階ほど降りないとゲットできないなぞ……。

 安心しているのも束の間、後ろでドガアアアンと聞こえて振り向くと、マンホール下から煙幕が噴出してきて落ちてきた人影が一人!

 炎のように赤いセミロング、赤いセーラー服、げげっ! マイシだ!?


「宿題終わらないしぃぃ~~!!」


 宿題を手に、血眼のマイシが歯軋りして睨んでくる。よりによって一番ヤベーのが来たぞ!

 なんと竜を象るオーラがブワッと全身を包む。


「こっちは妖精王なれねーのに! そんなのアリかっ!」

「避けて!」

「かああああああああッ!!!」


 獰猛に吠えたマイシが地を蹴ると同時にオレとヤマミは横に飛んだ。マイシは超高速で通り過ぎて向こう側の壁へ突っ込んでドガアァァンと派手に爆砕した。掠っただけで死ぬぞ……これ!

 屈んでいるオカマサが「こっちだ!!」と手で振ってくる。

 切羽詰ってオレとヤマミはオカマサとドラゴリラの後を追いかけていく。モリッカは「あははは!」と付いてくる。


「逃げるなしっ!! 宿題ぃぃぃ一緒に手伝うしぃぃっ!!!」


 マイシが再び駆け出してきて距離を詰められる刹那、曲がり角からの扉の中へ飛び込んだ。通り過ぎたマイシが向こう側をドガァアッと破砕した。

 オカマサがスイッチを押すと扉が閉まっていく。そして床が下降していく。

 ガゴォン!! 上の方から凄い衝突音がした。


「はぁ~~! やっべぇ!!」


 オレは尻餅をついて安堵した。オカマサは何か考え事していた。

 なんと途中でエレベーターは止まり、扉が開く。確かに向こうの風景で研究所の中だと分かる。だが、目的地じゃない。


「ナッセ君、ヤマミ君、モリッカ君、ここで降りてくれ。俺たちは(おとり)になる」

「せやせやせやせやせやせや」


 戸惑ったが、この階層にはゾンビはいない。

 オカマサの言葉を信じる事にした。オレは頷き、ヤマミとモリッカと一緒に途中で降りた。

 エレベーターの扉が閉る間際、オカマサはニヤッと悪辣に笑んできた。


「これでワクチンは俺たちの物! せいぜい頑張って(おとり)になってくれ」


 なんと左右の通路から宿題ゾンビがわらわらと!! は、ハメられた~!!!

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