表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/300

30話「月末バイオハザード!①」

 この月末シリーズはタイトル名に因んで、月末まで毎日連載でーす!

 夏休みの最終日っ!!

 それでも青空の眩い太陽が燦々と都市を照らし続けるっ!


 無事大阪へ帰ったオレはヤマミと一緒にマンションの部屋でゲームをしていた。ずっと留守番してた白猫のウニャンはベッドの上で丸まって寝ている。

 もう宿題は帰郷している時に終わらしたし、もはや憂いはない。ん~いい気分だ。これもヤマミのおかげだな。


「ん?」


 こちらの視線に振り向いてくるヤマミ。

 黒髪姫カットのお嬢様みたいな風貌なのに、そのあどけない顔が愛しい。

 普段はクールで他を寄せ付けないような態度が多いが、オレにだけは心を許してくれる。幸せ。


「もう! 見つめられると恥ずかしいわ……」

「ヤマミのおかげ宿題終われたし、感謝でいっぱいで好き」

「はわっ!」


 ドカーン! ああ……ヤマミの自機死んだ。


「突然“好き”だなんて不意打ちすぎるわ……」


 不機嫌に頬を膨らましてオレの胸元にドンドン拳を叩いてくる。かわいい。

 オレの自機全滅してるから暇で眺めてしまって……、でもヤマミがゲームしてる最中は止めといた方がいいかな。


 ドン!


 なにか壁を叩く音がして、思わず身が竦んだ。

 オレはヤマミと顔をゆっくり見合わせる。壁ドンは隣の部屋からかなと思ってたけど、方向からしてドアの方からだ。


 ドン! ドンドドン!


 なんか乱暴なノックだなぞ……。

 オレは恐る恐るドアへ近づいて、そのドアスコープで向こう側を見る。なんと凶暴になってるリョーコが「うがああああ~~!!」とドンドン拳で叩いてくる姿が見えた。ヒッ!

 腰を抜かして尻餅をついたオレに、ヤマミは不審に思い、同様に覗いてみるとビクッと後すざりした。


 なんか寒気が催してきてブルっと身震い。


「どういう事?」

「し、知らないぞ。なんかゾンビみてーだ……」

「とにかく妖精王で浄化したら?」

「あ、ああ……」


 なおもドンドン叩いてくる。徐々に乱暴にエスカレートしていくような……。

 オレは浄化せねばと「はあっ!」と叫ぶが、何も起こらない。


「ナッセ……?」


 オレは戸惑いながらも再び「おおおっ!!」と叫ぶが、妖精王に変身ができない。

 怪訝なヤマミに振り向いて「で、できなくなってる?」と恐る恐る告げた。ヤマミは顔を曇らしながら「ん!」と踏ん張りの一声を出すが、それきり。


「……どうなってるの? 私も妖精王になれない」

「お、おいおいおいおい!! マジかよ!? どうなってんだぞ??」


 汗にじりでオレとヤマミは慌て始めた。更にドンバンドドン、とドアが振動するほど叩かれ続ける。

 焦って「くっそ! 電話で……」オレは携帯電話を手に、警察へ緊急連絡しようとしたが繋がらない。仕方なく他の友人にもかけてみたが繋がらない。

 ヤマミも同じ事してたらしく、こっちに振り向いて首を振る。


「ど、どうなってんだ??」

「それよりドアが!」


 なんか隙間ができるほどに曲がりかけているドア。オレとヤマミはタンスやら椅子やら重いものを運んで塞いだ。ふう、と息を切らす。

 しかしなんか重くなかったか?

 いつものオレたちなら、タンスなんてひょいひょい持ち上げられるだろ……。


「宿題ぃぃぃ~~……!」


 ギョッとドアを見ると、隙間から凄い形相のリョーコがギロリと血眼で睨みながらなんか呟いてきたぞ。

 オレもヤマミも冷や汗いっぱいで、背中が濡れてる。


「リョーコ!! 宿題がどうしたんだ!?」

「宿題ぃぃぃ~~! まぁだ、できてないよぉぉ~~……!」


 なんかドアの隙間から強引に宿題の束をねじ込んでくる。ヒイッ!

 乱暴にねじ込んでくる宿題の中身が見えるが、確かに何も書いていない。夏休み最終日で宿題が全くできていないのだ。

 時計を見やると、何故か今晩の十九時に!! ウソだろ! さっきまで十五時……!


 ガンガンとドアを叩いて更にドアが曲がってきて隙間が大きくなる。

 リョーコの顔と肩が抜け出して、手に持つ宿題をオレたちに向けてバサバサ振ってくる。


「宿題ぃぃ~~!! 手伝ってよぉ~~……!」


 その剣幕にオレも戦慄するが、ヤマミの手が肩に触れてくる。


「大丈夫よ! 入ってくるまで時間はまだかかる!」

「ああ! 窓から出よう!」「うん!」


 切羽詰まったまま窓の方へ向かうと、その光景にギョッとする。

 何故か荒廃した建物だらけで、傾いているのもある。道路はヒビが入っていて草が所々生えている。そしてなによりも、群れるゾンビがわらわらマンションを取り囲んでいた。ヒイッ!


「こ、これは……!?」

「夏休み最終日に発生するゾンビ! その名も『宿題ゾンビ』よ!!」くわっ!


 マジ顔でヤマミが語るが、なんつーか緊張削がれるなぞ……。

 つまり、要約すると夏休み最終日まで宿題が全然終わらないと焦った生徒が、徹夜で手伝ってくれる仲間を求めるべき徘徊するゾンビだそうだ。

 オレたちは宿題が終わってるのでゾンビにならなくて済んだようだ。

 ……ってか何で会社員や業者までいるんだ?


「と、ともかく! リョーコたちが入ってくるまで、窓から別の場所へ飛び乗ろう」

「そうするしかないわね……」


 すると、ドガシャーンとドアがタンスもろとも吹っ飛んできて部屋に転がった。

 なんとエレナがかかと落としのまま出てきて「宿題ぃぃ~~やろうよぉ~~!」と、リョーコと共にこちらへにじり寄る。しかもそれに続くように多くの人がゾンビ化してて押し寄せてくる。


 慌てて窓を開けて、抜け出て、ひょいひょい飛び回って隣の屋根に着地。

 オレたちがいた窓から、身を乗り出したエレナとリョーコとゾンビが恨めしく形相でこちらを凝視しながら宿題を伸ばしてくる。ひええ!


「だ、大丈夫よ……! ここまで登ってこれない!」


 しかしなんか飛んでくる巨大物に、オレとヤマミは咄嗟に飛び退いた。

 ドゴオオオォォン!

 破片を散らし煙幕を立てるそこからは、大男がぬうっと現れた。なんと赤いメイプリルリーフ仮面の大男だ。そして手には宿題が!


「娘の宿題ぃぃ~~手伝えぇぇぇえ!!」

「げげっ! フクダリウスまで宿題ゾンビにっ!?」


 血眼のフクダリウスが唸りを上げてドスドスにじり寄ってくる。ひえええ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ