3話「城路家の創作士紹介!」
「うおあ────っ!!!」
次男ツバサは高らかに叫び、全身からオーラが燃え上がっていた。
なんか朝っぱらから瀕死になってたらしく、回復させてあげたら両親と三男よりちょっと強いオーラを放出し始めたのだ。
ま、まさか……家族全員が創作士に目覚めるなんて……!?
しかもツバサはテ●ノブレイク寸前だったが故に、より強い力に目覚めたぞ。だが、部屋に充満しているイカ臭いの何とかして欲しい。
「ナッセ!! 彼女持ちだからと調子に乗ってられるのも今の内だッ!」
なんかビシッとこちらを指差して自信満々と粋がるツバサ。あのさぁ……。
なので、昼近くになってから家族総出で近くの射水創作士センターへ登録しに行った。もちろん創作士カードも発行してもらったぞ。
父さんのカカオは地属性でクラスは『騎手』だ。
母さんのアサリは火属性でクラスは『僧侶』。
次男のツバサは火属性でクラスは『遊撃士』。
三男のヤスシは風属性でクラスは『槍士』っと……。
ちなみにオレは光属性でクラスは基本『剣士』だけど、実はスペリオルクラスの『鍵祈手』。
ヤマミは闇属性でクラスは『魔道士』だぞ。
元々、創作士として登録してるので識別はしなかったが、家族に聞かれてそう答えたんだぞ。
「ズルいッ!! 属性が光闇とかカッコいいヤツじゃんか!!」
ツバサは納得いかず不満を漏らしていた。
……属性は人それぞれに一つまでで一生変わる事はない。しかし魔法を覚える際に生来持つ属性しか使えないとかいうワケではなく、複数の属性の魔法を会得は可能。ただし、生来持つ属性と同じ属性魔法のほうが威力や精度が抜きん出て高いってだけだ。
「俺は闇属性が良かったなぁ……」「俺は光かな!」
弟二人はジト目でこちらをじーっと見てくる。
いやいやいや、別に光と闇の属性はレアってワケじゃないぞ。実は他の属性同様にありふれている。むしろ火属性や水属性などの方が汎用性あって便利だと思うがなぁ……。
とりあえず、普及し始めていた収納本も買い足して、それぞれ得意だと思う武器も買って、昼飯は外食で済ませた。
午後四時頃に家へ帰ると、スゲー高級な黒い車が近くで止まっていた。
「ほう……! 覇気に満ちていて何よりだ。そのような生き生きとした分家を目の当たりにできて嬉しいぞ」
ズシリとくる重い言葉に振り向くと、三人が悠々と歩いてきていた。
ツバサは冷や汗タラタラで「ひええ!!」と萎縮してしまう。
両親も三男も畏まって「はるばる訪問お疲れ様です……」と頭を下げる。オレとヤマミもそれに倣って頭を下げた。
ついに本家の方々が来られたぞ……!
先頭の厳つい初老の叔父は『剣士』城路タツロウ。本家として城路家総統。白髪が混ざっていてオールバックで歴戦漂う表情。着物を羽織り、杖でついている。
やや後ろで、長兄の『魔道士』城路ヒコタツは髪が後退しつつある生真面目で優しい長身の男。次男の『剣士』城路タツアキはロン毛で普通の身長と体型の男。
……いずれも威圧が重々しい。おそらく長年研鑽してきた者たちだ。面構えが違う。
「よいよい。今日は挨拶に来ただけだ。畏まらずとも良い」
「は、はい」
「しかし、全員が創作士に目覚めておるとは! さすがかの大魔王を打ち倒した息子を抱える分家か!」
もう聞き及んでらっしゃるぞ……。
両親と弟たちは冷や汗でペコペコしている。
創作士として目覚めたばかりだから、歴戦の威圧を敏感に感じ取れるようになったのだ。ビビるのは無理もない。
しかし、まさか直々に挨拶してくるとはっ!
するとタツロウが次男のツバサの頭をくしゃくしゃ撫で始めたぞ。
柔らかい笑みで「この目で見れて良かった。城路分家のカカオの息子であり長兄のナッセ。今宵の宴会に来るのを心待ちにしておるぞ」と言ってくれた。
威厳がありつつも懐の広い器を併せ持っている男だ。
「あ、あの……恐れながらナッセはあっちです…………」
恐縮とツバサがこちらへ指差す。
タツロウは「ん?」とこちらへ向く。……しばしの沈黙。
「はっはっは!! いやいやスマンスマン! 一番チビだったんで末っ子だと思ってたわ」
おおらかに大笑いしながら、オレの頭をポンポン叩く。
……なんつーかチビである事に腹を立てたのは初めてだぞ。くっ!
「撫でられたからって調子に乗るなよ! チビ!!」
「むしろ叩かれたし!」
ムッとロン毛の男ことタツアキが睨みを利かせて、こちらへ歩いてくる。
「……まさか本当に大魔王を倒したのか?」
「い、いえ……。恐れながらオレ一人で倒したワケじゃないので…………」
「だろうな!」
タツアキことアッキーはふふーんと胸を張っている。
苦手なのはコイツ。昔からいちいち突っかかってくる事が多いからなんだよな。
今までのらりくらりトラブルを避けてきたから良かったんだがぞ……。だが今回は大魔王を倒して目立ちすぎたから目を付けられたようだ。
アッキーの視線がチラリとヤマミの方へ向く。
「ふん! そこの者は彼女か? お前には不相応な美人だな……」
「これこれ、あんまり従兄弟をイジめないでくれ」
ヒコタツことタッちゃんは、血気盛んなアッキーを抑えようとしている。
ヤマミが憮然としたまま、オレの腕に抱きついてプニッと柔らかい感触を味わせ「不相応とか失礼ね……」と吐き捨てる。この必殺イチャ見せ付けに、アッキーはワナワナ震え上がっていく。
「くそ! 分家の癖におっぱいに触れるなど生意気だー! 許せんッ!!」
嫉妬のあまり剣を大仰に振り抜き、タッちゃんの後退している前髪をバサッと削ぎ取る。貴重な髪の毛がパラパラと緩やかに舞い散っていく……。
アッキーはハッと気付いて青ざめるも、震えるタッちゃんの怒りはボルテージに達していたぞ。
「てめぇ……!」
「ま、待て!! お、落ち着け!!」
「うが──!! 勘弁なら────んッ!!!」
逆鱗に触れたタッちゃんが放つ火炎龍がアッキーを呑み込んだ。グワーッ!
「ギャ────────ッ!!!」
ドガ────ンッ!!
おお……見事に黒コゲになっちゃったぞ…………。
オレはパンパンと合掌して冥福を祈る。
「安らかに成仏してくれ」「死んどらんわ──いッ!!」
本家の黒い車がブロロロロ……と去っていくと、弟たちは緊張が緩んで尻餅をついた。はぁ~……!
だがオレはブルッと戦慄を感じたぞ。
もしやタッちゃんはアッキーのせいでハゲかけておるのでは…………?
くわばらくわばらぞ!