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299話「念願の異世界へ……!」

 意を決してオレとヤマミは扉を開けた。


「……ようこそいらっしゃたな。ナッセ君とヤマミよ」


 すると裏庭のテラスガーデンでヤミザキがゆったり座していた。

 澄み切った青空に、瑞々しい緑と花々で彩る裏庭。ヤマミと共に踏み入れた。


「久しぶりです」

「うむ。ちょくちょく会ってくれるのは嬉しいぞ。では椅子に掛けてくれ」


「では言葉に甘えて」とヤマミと一緒に椅子に座る。しばしの沈黙。


「卒業したそうだな」

「はい。二年間色々なものを学べました……」「ええ」


 ひゅうう、春の涼しい風が撫でてくる。


「その後、異世界へ行くのだな。(さび)しくなる……」

「ああ。一年前に敵対してたのが不思議なぐらいだなぞ」

「ええ……」

「ははは。すまなかったな。だが、あの戦いがあったからこそ分かり合えた。ナッセとヤマミの本気が心に響いてきたぞ」


 (なご)やかに話し合えるのっていいな。

 ヤミザキは嬉しそうだ。


「異世界……。ヒカリと一緒に行った時は地獄のようだったがな」

「今は大丈夫っぽいかも」

「うむ」


「……目処(メド)は立ってないけど、ヒカリを元に戻す方法を探してみる」

「っても過度に期待しないでね」

「うむ。なかなか難しいとは思うが、よろしくお願いする。例え叶わぬとしても……」


 あのヤミザキが神妙に頭を下げてくる。

 本当にヒカリは大切な人だったって分かるぞ……。


「それとナッセ君!」


 ヤミザキは真剣な眼差しを見せる。


「な、なにぞ?」

「……もしかしたらだが、お主は異世界の人間かもしれない」

「え?」

「根拠あるわけ?」


 ヤマミは目を細める。

 ヤミザキは静かに首を振った。


「そんな雰囲気がした。違ったとしても、合っていたとしても、きっとそういう運命的なものを私は感じるのだ……」


 オレもなんとなく感じていた。

 今は分からないが、異世界へ行きたいって強い気持ちは別の意味も含まれているような気がしてならない。


「きっとナッセ君なら大丈夫だと、私は信じているぞ」

「ああ。お義父(とう)さん……」


 するとヤミザキは吹き出す。


「はっはっはっは! 気が早いな。だが結婚するのも楽しみにしておるぞ」

「たはは……」

「もう」


 ヤマミも満更ではないようで、ちょい目を逸らして頬を染めて照れている。


 チューリップやヒヤシンスを眺めながら色々話を交わした後、夕日を背景にオレたちは「じゃあこれで」と席を立って、間を置いてから覚悟を決めた。


「……これからオレたちは異世界へ行きます!」


 ヤミザキは「うむ」と穏やかな顔で(ほころ)んでいた。


「気を付けて行ってきなさい。私はここで積もる話と土産(みやげ)を心待ちにしておるぞ」

「はい!」


 (きびす)を返そうとすると、ヤマミは意を決してヤミザキへ向き直る。


「お父さん行ってきます!」


 ヤマミは柔らかい顔で笑んで、頭を下げた。

 二人歩き去っていくのを見送りながら、ヤミザキはご満悦と微笑んだ。




 この後、オレとヤマミは世話になったマンションを退去して、数日かけて『洞窟(ダンジョン)』をくぐり抜け、出口前にいるボスを難なく撃破。ついに輝きが漏れる出口が目の前に……。

 オレはヤマミと顔を向き合った。


「行くぞ!」「うん!」


 晴れ晴れとした顔で足を踏み出す。



 澄み切った青空に白い雲。木々や岩山が点在する広々とした大草原は通り抜ける風で波打つ。そして海の代わりに見渡す限りの広大な雲海を、悠然と大きな浮遊大陸が大小バラバラの郡島を伴って浮かんでいる。

 地球のどこを探しても決して見られぬ景観。


 そんなワクワクしそうな未知な異世界に心奪われる────!



「ついに異世界なんだぁ────────!!!」


 両拳を振り上げて有頂天のままにジャンプし、ヤマミもにっこり笑う。

 胸が弾む想いで「あははははは」とオレたちは広い草原を駆けていった……。


 念願の異世界へ着いても、オレたちの冒険はまだ終わらないぞ──!!



 ハイファンタジー編へ繋がる新たな冒険へ! To Be Continued

 次はエンディングロールです。

 特別に最後となる300話は今日の23時に流します。

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