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29話「ガチ飯テロ大侵攻!! 美味そう!」

 特急列車で三時間くらいかかって、ようやく大阪駅へたどり着いたオレはヤマミと一緒に環状線へ乗り換えようと歩いていた。

 ごった返す人々で、オレたちと同じように帰ってきた人やどこか帰っていく人が多いんだと察した。

 時計を見れば、ちょうどお昼────。


「そこで食おっか?」「それはいいわね」


 笑むヤマミの頷き。


 そういうワケで駅内の中華料理店へ入っていった。

 すると、一転して広い空間に風景が変わった。所々獰猛な火が吹き上げる地獄絵図。

 草木も生えていない荒地にゴツゴツとした岩山があちこち聳えている。


「えっ? 『洞窟(ダンジョン)』だったの??」「まさか!?」


「ほほう! 何も知らぬバカな小僧と小娘が迷い込んだか!」


 声がする方へ視線を移せば、なんと無数の餃子(ギョウザ)が隊列を組んでいて蠢いていた。

 よく見てみれば餃子(ギョウザ)に二本のツノと厳つい目と口があり、手足が生えている。各々ライフルを構えている。


鬼餃子(オニギョウザ)】(料理族)

 威力値:4100

 餃子(ギョウザ)が意志を持ったモンスター。各々武装して兵隊を組んでいるぞ。下級中位種。


 そしてザッと隊長格が先頭に現れてニヤリと薄ら笑みを浮かべた。

 それはなんと天津飯(テンシンハン)が赤いツノを生やしていて皿部分の下方から四つの太い足が生えている。


天津巨人(テンシンギガント)】(料理族)

 威力値:19000

 巨大な天津飯(テンシンハン)そのものが巨人となっているモンスター。口から咆哮波を吐いて範囲攻撃してくるぞ。中級下位種。



 た……たまげたぞ……。


 思わず驚いたままヤマミと見合わせる。

 まさか中華料理の姿をしたモンスターが襲って来るとは思わなかったぞ。


「大阪駅に大侵攻する手前、まずはてめーらを蜂の巣にして……」


 すぐさまオレとヤマミはキッと戦意みなぎる眼光を放つ。その威圧に中華料理モンスターはゾクッと震え上がった。


 地を爆ぜるように蹴って、光の剣と杖の刃を振るって幾重に剣閃を描く。

 鬼餃子(オニギョウザ)は細切れに宙を舞い、オレと魔法少女化したヤマミが過ぎ去って着地。

「速いぃ……! が、がが??」

 驚愕する天津巨人(テンシンギガント)は既に体中を斬り刻まれていて、それぞれ部位がズレながら地面に瓦解していく。


 どががががーん! 揃って爆死連鎖。宝箱が何個か並んだ。


 中身はやはり新鮮な中華料理がほっかほっかだ。

 それらを収納本に入れていってから、再び前を向いて不敵な笑みを見せた。



「ぐぬ……!! ええい構わんッ!! なだれ込めーいッ!!」


 いくつかの部隊で隊列を組みながら、筆頭の天津巨人(テンシンギガント)に追従しながらなだれ込んでくる。

 怒涛の銃弾の嵐も、オレたちはなんなくくぐり抜けて剣を振るう。弓で射る。魔法で撃つ。多勢に無勢であれ圧倒的戦力で中華料理モンスターは次々と駆逐されていった。

 互い背中を合わせ、即座に片手を並べるようにに突き出して「ホノバーン!!」と巨大な合体火炎球を撃ち出す。


 どごごごがーん!!!


 天にも届くほど燃え盛る火炎柱が、多くの中華料理モンスターを灼熱にかき消していった。



麻婆豆腐(マーボドウフ)スライム】(料理族)

 威力値:2600

 トロットロの麻婆豆腐(マーボドウフ)がスライム化した。体内から豆腐爆弾(トウフボム)を射出して爆撃してくるぞ。下級中位種。


酢豚(スブタ)ーク】(料理族)

 威力値:3400

 酢豚(スブタ)溢れるオーク。本体の中身も酢豚(スブタ)で詰まっている。美味しいぞ。下級中位種。


華麗(カレー)スライム】(料理族)

 威力値:3570

 みんなの大好きカレーがスライム化した。いやいや、てめーは中華料理じゃねーだろ! 何しれっと紛れ込んでんだよ!? 下級中位種。


炒飯(チャーハン)ゴーレム】(料理族)

 威力値:5700

 炒飯(チャーハン)がそのままゴーレムになっている。意外と群れて襲いかかる。下級上位種。


【エビチリソルジャー】(料理族)

 威力値:1500

 エビチリのエビ部分が兵士。集団で槍で突いてくる古風な戦い方をする。下級下位種。



「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」


 大音響に咆哮を上げながらドドドドドと砂煙を起こして数万もの大軍がなだれ込んでくるのを見て、オレたちは更に士気高揚と気力を漲らせていく。


「よぉーしッ!! 本気出して暴れるぞーッ!!」


 オレは地面を蹴り、一周するように超高速で剣を振るうと、その大規模の軌跡で数百体もの中華料理モンスターが舞う。ひと振りひと振りするたびに数百単位でドッカンドッカン空へ舞っていく。

 ヤマミの『偶像化(アイドラ)』が剣を振り回し、巻き起こった凄まじい衝撃波の津波が数千もの中華料理モンスターを宙に吹き飛ばしていく。



「な……なに……!? や、奴ら何者だッ……!?」

小龍包大将軍シャウロンポウダイショウグン!! ここは我らがッ!!」

「本気でかかる!! いざッ!」


 両脇の春巻(はるま)将軍(ショウグン)麻婆那須将軍(マーボナスショウグン)が凄まじいエーテルをバーナーのように噴き上げて地面を揺るがす。

 威力値が7万級の歴戦の幹部。

 超高速でヤマミとオレへと一直線にエーテルの尾を引きながら飛びかかる。


春巻(はるま)将軍(ショウグン)】(料理族)

 威力値:74000

 春巻(はるま)きが将軍となったモンスター。魔界オンラインで猛威を振るったという将軍。中身は美味い。上級上位種。


麻婆那須将軍(マーボナスショウグン)】(料理族)

 威力値:76000

 麻婆那須(マーボナス)が人型となった将軍。魔界オンラインで武勲を上げた猛将。上級上位種。


「邪魔!」「うん!」


 オレは麻婆那須将軍(マーボナスショウグン)を斬り下ろし、ヤマミの『偶像化(アイドラ)』が春巻(はるま)将軍(ショウグン)を叩き伏せ、幹部二人は地面に打ち付けられ土砂の飛沫を噴き上げた。

 たったの一撃で歴戦の幹部を沈められた事に大将軍は絶句。


「ぐぬぬ!! たかが日本人二人に負けてたまるかぁ!!」


 しかし中華料理モンスター軍の意地にかけて負けられないと、大地を大きく揺るがすほど凄まじい威圧を放ちながら威力値10万以上のエーテルを轟々しく全身から放ち、ギッと形相を向ける。


「いでよ!! 坦々麺巨亀(タンタンメンタートル)ッ!!!」


 なんと数え切れない砲身を生やした坦々麺のラーメン甲羅を背負う巨大な亀が召喚され、その甲羅の頂点に小龍包大将軍シャウロンポウダイショウグンが立つ。

 その圧倒的巨大さに圧巻させられる。ズン!


坦々麺巨亀(タンタンメンタートル)】(料理族)

 威力値:125700

 ドデカい坦々麺(タンタンメン)から無数の砲台を覗かせる甲羅を背負う巨大な亀。超級下位種。


小龍包大将軍シャウロンポウダイショウグン】(料理族)

 威力値:114980

 小龍包(ショウロンポウ)がそのまま大きい胴体の龍人になっている。魔界オンラインで巨大な勢力を築いたトップ。超級下位種。


「運が悪かったなッ!! ボウズ、小娘!! 後悔しながら泣き喚けッ!! がはははははははっ!!!」



 しかし!


「サンライト・インフィニティドッキング(メビウス)ッ!!!」


 なんと二つの円を擁するメビウスの輪が巨大な亀ごと大将軍に炸裂!!

 オレとヤマミが突き出す得物の切っ先の遥か先で、ズンと重々しく巨大に膨れ上がった高速回転球が周囲に烈風を吹き散らしながら、轟音と共に大地を揺るがし続けた。


「ばかなああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!」


 無限に引き裂き続ける回転球の中から断末魔が響いた。


 事もあろうか大侵攻するタイミングが悪すぎた。

 ナッセとヤマミにエンカウントした時点で彼らの武運は尽きていたのだ。




「……数ヶ月は食うに困らない量だ。これ」

「うん。収納本の中は時が止まってるから、いつでも新鮮なまま食べれるわね」

「おお! どんどん食うぞー!!」「ふふっ!」


 収納本にいっぱいの中華料理。オレたちはニコッと笑い合った。


 ついに馴染みのマンションへ戻ると、部屋の丸テーブルに中華料理を並べた。ホカホカ湯気が出ていて美味しそうだ。

 オレとヤマミは和やかに合掌した。


「いただきます!!」

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