278話「リベンジクラッシュ編 ④遺伝子の秘密!」
学院の『仮想対戦』ルームは、世界で普及している『仮想対戦』センターとは繋がらない。そして学院以外の人が閲覧も不可能。
学院のみで独立したシステムなのだ────っ! (力説)
ザッザッザッ……!
薄暗い廊下を集団が歩いているぞ。
二年生が『仮想対戦』ルームへ先導する形で、後続のキュリアら人造人間たちを連れてきている。
「……聞くが、その人造人間はオリジナルの遺伝子を使っているのか?」
「ああ。そういう設計のはずだ」
イケメンリーダーのユウは背中を向いたまま質問し、キュリアがそれに答える。
あくまでオカマサとドラゴリラが主犯で、キュリアは盟友。
人造人間の情報は聞いてはいるが製作には関わってはいない。
「もっとも、その遺伝子を組み換えてブサイクに造り変えたらしいがな」
「なによ! それサイテーじゃん!」
今度はセイコが振り向いて茶髪ロングを揺らす。
シュレンザは「ホォォ~~!」とシュシュシュとストレートパンチを交互に繰り出している。シャドーボクシングってヤツだ。
「でもホント、似てるざますねぇ」
銀髪ウェーブのフレズはにこやかな顔でパンと拍手する。
「はっはっはー! そいつナッセだろ? そんでモリッカ、後の二人はオカマサとドラゴリラだろ?」
赤髪が逆立ったバレントはギザギザ歯を見せて笑う。
「……遺伝子組み換えされてはいるが、確かにその通りだ」
「で、でも、言うほど、ぶ、ブサイクじゃないように見えるよ?」
黒髪ロングのクールっぽいイケメンのモールがどもって言ってきて、キュリアは怪訝に眉を潜めた。
「……まさか本物じゃねぇのか?」
灰髪のツーブロックで毛皮チョッキとズボンのシガレは疑っている。
「遺伝子が同じだから似てて当たり前だろう。だが別人だ。生まれて数ヶ月程度の人造人間だ」
「ホントだろうな?」
「嘘つくメリットがあるか! 本物のナッセたちが俺様に協力するワケがないだろう! そもそもマイシに復讐する為に来たぐらいだからなっ!」
乱暴な物言いでキュリアは吐き出す。
しかしユウたちは疑り深い様子。
「まぁまぁ、お互い初対面ですし……止めましょうよ。騒ぎを起こすと面倒ですよ」
目が隠れる緑髪のボサボサショートで巨乳プルンプルンのシークは両者をなだめようとする。
キュリアは「悪いすまねぇ。興奮してしまった」と頭を下げる。
ユウは首を振ってため息。
「いや、疑って済まない」
向こうも大人の対応してくれた。
シュレンザは「ホォォ~~!」シュシュシュとシャドーボクシング。
「はぁ……よかったぁ……」
「ですね」
ナーセとモリオンはホッとして掛け合い。
それをキュリアは半顔で見やる。確かに言うほどブサイクじゃないように見える。
むしろイケメンだったのかってくらいオガッサとドラゴーラが多少オッサンっぽく見える。
実は気にも留めない程度の違和感を抱いていた。
ユウたちに言われて気づいた程度のな……。
「培養カプセルに入ってた頃は明らかなブサイクだったが……」
ナーセはニンジン型ブサイクからシュッとした顔になってて、モリオンはネズミ顔のブサイクから可愛い童顔になってて、オガッサとドラゴーラは逆にシワを刻んで悪人面っぽくなってきている。
数ヶ月の間で、気づかないほど緩やかなスピードで元に戻っているのでは、と察する。
そして恐らく……いずれオリジナルとソックリに戻るだろう。見分けがつかぬほどにな……。
「そもそも遺伝子組み換えクローンを長期観察してなかったからな。組み換えた遺伝子が新陳代謝を使って元に戻っている……などあり得るのか!?」
「それはありえますね」
声に振り向くと、メガネをかけた地味な女のミアクラがこちらへ振り向いていた。
「欠損部分が再生できる事を考えてみれば、新陳代謝で元に戻る事など造作もないでしょう。でも興味深いですね。大体クローン技術は違法ですからね。まぁ例の大悪党オカマサとドラゴリラなら平然とやりかねませんしね」
「再生……?」
「知らなかったんですか? 大体、HPさえ充分であれば欠損から再生など赤ん坊でもできますよ。そもそも創作士センターの回復カプセルで欠損治るの常識でしょう。むしろ気づかない方がアホです」
キュリアはピタッと足を止めた。
ユウたちも人造人間も首を傾げる。ミアクラは「どうしたんですか?」と聞く。
シュレンザは「ホォォォォ~~!」シュシュシュとシャドーボクシング。
「俺様の頭以外のサイボーグ部分を外す。オガッサ持っててくれ」
「おう! 任せてバーニン!」
キュリアは両足両腕、右肩、顔の上部分が欠損している。その為、サイボーグのように装備を付けて日常生活していた。
その装備である義手義足などをオガッサに預けて、ドラゴーラに自身の体を抱えてもらう。
「はあああああ……!」
キュリアは全身を震わせて力む。
すると切断が閉じてしまったはずの皮膚がモゴモゴ蠢いて、ギュバッと完全〇セルみてーに欠損部分が全て再生された。
頭の上も再生されたので、サイボーグ部品が剥がれた。
再生部分の肉体は粘液でビチョビチョ。手をワキワキして動いてみせる。
「ふう、待たせて悪かったな……。まさか“欠損した部位を再生できる”とは思わなかったんでな……」
「「「「「「「いや、気づけよ」」」」」」」
ユウたちが揃って右手を裏向きにビシッと総ツッコミ!
人造人間たちドン引き……。
欠損させられたトラウマ、今ここで解消されたぞ。←草生えるw
シュレンザは「ホォォ~~!」シュシュシュとシャドーボクシング。
「へっへっへ! こんなままじゃ何だから、シャワーで洗い流しておけよ」
季節にかかわらず身軽な服装の強面の青年アレックスは立てた親指で方向を指す。クイッ!
誤解されやすいが彼は親切な男である。
キュリアは頭を下げて「すまねぇ、じゃあ借りさせてもらう」と、シャワー室へ行った。
「なんか担当先生? リーダー? おもしれぇなー!」
オカッパの童顔のチビのアオは大型の犬に跨っている。
「マスターです」
「あ、はい。親のような人だぞ」
モリオンとナーセが返す。
「じゃあさ、親を大切にしろよー!? オイラ、お父さんがレイドボスとの戦いで庇った為に異世界転生されて、母さん泣きながら家を出ていってしまい、親戚からも疎まれてイジめられて、ここへ入学して住み込んでもらってるんだぞー!」
屈託のない明るい顔で重すぎる不幸話を暴露してきて、周囲ドン引き。
ユウは「知ってたか……?」と聞き、セイカたちは首を振って「いえ」と。
シュレンザは「ホォォォォ~!」シュシュシュとシャドーボクシング。
しばしして五体満足の万全キュリアは、予備の服を新たに着て現れた。
メンタルも回復してか自信満々に満ちている。
「待たせたな……。対戦を始めようか」ニヤ……!