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268話「初のクリスマスパーティー!」

 二〇〇九年一二月二五日! クリスマス!


 キッチンとセットになっているリビングダイニングでのファックスが鳴り始めた。

 母が受話器を手に取って「もしもし、あ、はいはい」と頷いて応えている。



 午後四時を過ぎた辺りから薄暗くなっている。

 実家の前で、オレと不機嫌なヤマミが立っていて、後方には母さん。


夕夏(ユウカ)家からクリスマスパーティー招待されたんだろ?」

「全くなんのつもりかしら……」


 するとズズッと目の前に黒い渦が拡大してきてコクア王子や幼女ヨルが飛び出してきた!?


「待たせしましたね! さぁ、いらっしゃい!」

「ナーにいちゃん、ヤマねえさん、きて────!」


 それぞれ対照的に手を差し出して、にっこり嬉しそうな顔してるぞ。

 思わずヤマミと顔を見合わせる。

 後ろにいる母はニッコニコで「いってらっしゃい~」と手を振ってる。




 なんと、オレとヤマミは時空間魔法で夕夏(ユウカ)家総本山へワープしたのだ!


「いやはや急な事で申し訳ない」


 二代目総統ダグナが頭を下げる。

 オレとヤマミはコクアとヨルに連れられて、豪勢なパーティー会場へ入場されて、最初にこれである。


「しかし……ここまで豪勢に……?」


 塔のように何段もの高いホールケーキ。

 レタスを下に七面鳥の骨付き肉、ウィンナー、トマト、エビチリ、唐揚げ、他にも美味しそうなの多い。

 更にカットケーキが店のようにたくさん並べられている。

 イチゴ、チョコ、チーズ、なんでもござれだ。

 ドリンクもレストランなどで見かける装置があって、どんな種類もボタン押してコップに注入してもらえるぞ。


 ポカーンとしているとヤミザキが和やかな顔でプレゼントを持ってきてた!


「初めてのクリスマスパーティーようこそ!! ゆっくりしていってくれたまえ!」


 ヤマミドン引き……。

 オレも「あれ? やらないんじゃなかったっけ?」と思ってたぞ。

 どうやら、クリスマスとか全く全然やってなかったから、これまでの分を埋める為に豪勢なパーティーを企画してたらしい。


「お父さん、どういうワケ……?」

「ずっとヒカリを追い求めてばかりで、家族に何も奉仕せず奴隷のようにこき使っていた故、その罪は決して許される事ではない」


 しんみりとヤミザキは首を振る。

 ヤマミを見ると、訝しげな顔をしてて「大丈夫なんかな?」と思ってしまう。


「だが、今からでも楽しい事を娘にしてやらねば何も変わらない。これから変わろうとする為に、クリスマスとは何かを一から学んだ」

「それで今までが許されると思う?」

「思わん。だが、何もやらずして放置というワケにはいきますまい」


 ヤミザキも色々悩んで考え抜いて、このような企画を立てたんだろうか。

 これまで娘としてではなく道具として育成してて、勉学のみをやらせるという愛のない事を強いられてきた。なのでヤマミ自身も丸く許せるほど納得はまだしていない。

 例え、世界大戦で大魔王を祓って、和解したとしても……。


 だからヤマミはできるだけオレの家族に()()関わっていこうと決めていた。

 そういう言葉をオレは聞いていた。

 そしてこちらからは「なぁ、夕夏(ユウカ)家と仲直りを~」とは言わなかった。



「今からでも遅くないだろうか……?」


 ヤマミは見開く。そして少しずつ震えていって、床に涙が滴り落ちていく。

 なにか込み上げているものがあるだろうか、嗚咽していく。


「遅いわ!!」


 ヤマミは突然大声を張り上げた!


「もっと早くしてよねっ!!」


 まるで駄々っ子のように泣きながら!


「学校でだって、盛り上がる中で一人だけ孤独だったの、忘れてないからっ!!」


 これまで言わなかった辛い記憶を叫び!


「このバカ~~~~!!」


 目の前の父さんを思いっきり罵倒した!

 ヤミザキは優しい顔で「すまなかったな……」と、嗚咽するヤマミの頭を撫でる。

 初めて親子としての優しい触れ合い。


 オレと他の王子たち、そして幼いヨル、ダクライはそれを静かに見守っていた……。



 この日、初めて楽しいクリスマスの夜をオレたちは過ごした。

 みなで乾杯して、笑い、美味しいものを好きなだけ食べ、ゲームで盛り上がり、他愛のない会話で笑い、楽しい時間が流れていった。

 やけにマミエが絡むのを、ヤマミが邪魔して姉妹ゲンカしてたり、なんてことない家族の情景をオレは見た。


「ヤマミ良かったなぁ…………」


 安堵して微笑んでしまったぞ。





 一方で、城路(ジョウジ)家でのクリスマスパーティーでは父、母、ツバサ、ヤスシがホールケーキを分けて食べていた。

 しかも七面鳥の骨付き肉、ウィンナー、唐揚げとひと皿分。

 一般家庭ではそれでも豪華なのである。


「あああああ!! 彼女の実家で豪勢なパーティーとかうらやまああああ!!」

「彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女おおおお!」


 ツバサとヤスシが発狂しまくってて、両親は後頭部に汗を垂らした。

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