261話「えっ! 突然の変貌!? スミレとブラクロ!」
二〇〇九年十二月十二日。
土曜日……、オレはヤマミと一緒にマンション一室でゲームやってたぞ。
Wooってゲームハードと一緒に『スーパーマリオブラザーズ.Woo』も買ってたので、二人プレイでコントローラー握って奮戦!
「やべ!」
「来るわよ!」
「あー!」
……今までぼっちでゲームやってただけに、二人プレイは楽しいぞ!
しかも美人な彼女と! 最高だぁぁ!! イエー!!
「やったー!!」
「うん!」
協力プレイでやっとクッパ倒してヤマミと拳を突き合わせた。
今月三日から協力プレイ始めてセーブしながらで、今やっとクリア。
長かったなぁ……、としみじみ。
なにより彼女の嬉しそうな顔がたまらない。
……そういや、元の並行世界じゃあオレは買わずにドラクエⅨしてたっけな。
彼女いないし仕方ないけどぞ。
「飲むけど、何がいい?」「緑茶」「おけ」
魔導冷蔵庫から飲み物を取り出してヤマミにも渡す。
ゴクゴク喉を潤してから、他愛のない話を交わす。
昼飯はヤマミが焼きそばを作ってくれた。腕が上がってて良かったぞ。美味い!
午後は学校の課題、ヤマミがいるから楽勝だぞ。
「終わったー!!」「ふふ」
その後もゲームしたり、漫画を読んだり、リア充満喫したぞ。
なにより彼女の愛らしい顔と仕草は眺めてても飽きない。抱きつきたくなる可愛さで胸いっぱい。幸せすぎ。
「っと、気づいたら夕方だぞ」
「ホントね。早いわ……」
橙色に滲む景色が窓から窺える。
夢中になってると、あっという間に時間が過ぎた気がするぞ。
テーブルを見やると、終わってる課題に安心する。二人でやると捗るいい例だ。
「散歩でもすっか?」「ええ」
二人で並んで歩道を歩いていく。
高く聳えたビルが並ぶ。信号機が色を変えて、交差点の自動車の流れが切り替わる。夕日の長い影がそこかしこにある。
橋へ向かうと大きな川が雄大だ。
環状線の電車がガーッて隣の橋で通り過ぎていく。
「この川、亀が多いんだよなぁ……」
「ホントね」
見下ろせば、川辺に亀がたくさん寄っていた。
「あ────────────────────ッ!!!!」
大声にビクッと振り向けば、エレナが大きな口を開けて驚いていた。
ウンザリ顔でヤマミは目を細める。
「静かにしてよ……」
「ジャマミ────ッ!! あたしのカレシを────────ッ!!」
「寝取ったみたいに言わないで」
「むき────────────────ッ!!」
飛びかかるエレナとヤマミが組み合う。ぐぎぎ!
オレは「たはは……」と首を傾けて苦笑い。
「こんな所でやるなよ!!」
青年がエレナをグイと羽交い締めして引き離す。
「なにすんn……」
なんとイケメン!! エレナもドキッと赤らめる!! ヤマミも驚く!
水色のロン毛で整った顔立ち。けっこー背高い。ジャンパー着ててジーパン。
……でも、どこか雰囲気が?
「俺はスミレだ!!」
オレとヤマミとエレナは「ん?」と揃って首を傾げる。
ハッと、女スミレの面影を見て……。
「「「ええええええええええええええええええええっ!!?」」」
あのポワポワした可愛い系のアイドルみてーな美少女が、長身イケメンにっ!?
しかもジーパン下ろしてアソコをポロン!
エレナが「チ〇コしまえーッ!!」と拳を振り上げー!
なんかヤマミが冷淡に「小さいわね……」とボヤいてたぞ。
「文明開化したろ? それで魔法による性転換手術がカンタンにできるようになったからな。ちょっと値が張ったけど、前々から男になりたいって思ってたワケだし」
「あ、ああ……たまげた……」
「私も……」
エレナは「えー……」と肩を落として呆れてる。
魔法による性転換手術は、従来の手術と違い、本物の異性に変えれるらしい。
本来は三ヶ月かかって、感覚が蘇るのに一年かかる。
しかし、魔法技術なら何時間かけるが一日で済む。
「これで俺はずっと男だぜ!」
性転換魔法には「永遠コース」「お試しコース」「1日コース」がある。
一日コースは一日だけ異性になれる。お試しコースは期間を決めて異性になれる。そして永遠コースはずっと異性のまま。
スミレは永遠コースを選んだようだ……。
「親を説得するのが一番苦労したわ。あんの頑固親父め」
説得するのに苦労してたのか、チッと舌打ちしてた。
父は落胆し母は悲しんでたけど、スミレとしては後悔はないってたぞ。
「って事で、異世界行こうかなと……」
「なんでまた急に??」
「いきなり何なの?」
スミレ、なんかソワソワしてねぇ?
「逃さないわ!」
声がするとスミレは「げっ!」と青ざめて竦む。
なんと幾重もの呪符が飛んできてスミレをグルグル巻きに!
向こうを見れば黒髪ロングの美女が優雅に歩んできていた。まさか……。
「ぶ、ブラクロなの……?」
「うふふ、その通りよ。スミレ同様に性転換で本物の女性になったわ」
「マジかぞ……?」
ナイスバディな女体。胸が大きくウェストが細く尻がでかい。
ブラクロと知らなければ、驚く程の美女だと思う。
「だーかーらー逃げたかったんだよっ!!」
縛られてもがくスミレに、ブラクロは怪しげな笑みで寄り添っていく。
「ジャマミみたいッ」
「一緒にしないでよっ!」
憤慨したヤマミはエレナの頭上をガッと掴む。
なんか、女ブラクロがヤマミっぽく見えなくもない。姉妹だからか。
「って事で失礼しますね」
「たっ、助けてくれ────────────っ!!!」
悲鳴を叫ぶスミレを抱えて、ブラクロはニッコリと手を振る。
去っていく時にスミレが「薄情者~~!!」「いやだ~~!!」「誰か助けてくれ~~!」とか喚き続けていたぞ。
エレナは「安らかに成仏してねッ」としんみり合掌……。死んでねぇ!
「嫌々も好きの内ね……」
「そういう事にしとくかぞ」
ヤマミと同じくねっとり執着してそうだからなぁ。
狙った獲物は逃がさないって執念を感じるから、邪魔する方が悪手。
それにブラクロはグラマーな美女だし、むしろ羨ましいとさえ思えるんじゃないかな?
「さ~~てと! ジャマミ~~!!」
エレナは邪険な笑みで振り向く。が、ナッセとヤマミは忽然と消えていた。
慌ててキョロキョロ見渡すも影すら見えない。
フルフル怒りを漲らせていく。
「おにょれ~~~~ッ!! ジャマミ~~~~ッ!!」
コミカルな怒りでプンプーンと両拳を突き上げた。
日が沈んで薄暗くなっていく夕景が窺える窓。
オレとヤマミはマンションの部屋に戻っていた。そう時空間魔法で。
「なぁ、あれでいいんか?」
「……うふふ。そろそろ楽しみましょ……」
「え? ちょっ……」
覆いかぶさってきているヤマミは艶かしい流し目で顔を近づけてくる。
ガシッとオレを押さえつけて、有無を言わさず唇でオレの口を塞いだ。んぐっ!
ベッド上で激しく温め合って、おいしくいただきました。ふう……。