26話「ヤマミと母アサリの嫁姑関係!?」
ナッセが昔のイジメっ子セシュウと会う時間帯、ヤマミは母と一緒に近くのスーパーで買い物をしていた。
バナナとかほうれん草とかレタスとか魚とか買い物カゴに色々入っている。
「助かるねぇ……」ほほ!
「いえ、お義母様……」
ちゃっかりお義母さん呼ばわりしているヤマミは頬を赤らめながら、買い物カゴを乗せたショッピングカートを押していた。
ナッセの母ことアサリは上機嫌で買う物を定めていた。
「ナッセにこんな素敵な彼女がいるとはねぇ」ほほ!
「そう言ってくださるのは光栄です」
「夕夏家の長女でしたっけ? お父様はお許しになさって?」ほほ!
「いえ、大丈夫です! 例え万が一異議を唱えようとも力尽くで父さんを打ちのめしますので!」
キリッと物騒な事を言い出すヤマミ。
「万が一って事はOKなのねぇ」ほほ!
動じる事もせず察する母にヤマミも満足気だ。
かつてはナッセと夕夏家総統ヤミザキは対立していたが、世界大戦で色々心情をぶつけ合って戦い、共に和解する形で終息した。
もはや父としてもヤミザキは、ナッセとヤマミの恋愛に文句を言う事もない。
ナッセは大魔王化をも浄化した功労者なので、逆に異議を唱える方がおかしいくらいだ。
「ナッセって昔から創作士だったんだねぇ……。私は創作士じゃなかったから不思議っ子にしか見えてなかったよ」ほほ!
「師匠クッキーについては?」
「家庭教師って事だったんだけど、そんなに費用がかからない上にナッセが精神的に成長していたから大いに助かったもんだねぇ」ほほ!
師匠であるクッキーはナッセの家族に家庭教師と誤認させて、長らく師事してきた。
元々は以前の並行世界からずっと師事し続けていた。
そして今回の並行世界では、魔王化を防ぐために記憶喪失したナッセを一から師事してきた。今では失った記憶も取り戻して万全になっている。
この事実はナッセを始め、ヤマミと師匠クッキーなど限られた人のみ知っている。
「ナッセねぇ……先生に出会う前はひねくれてて素直じゃないから、いつも一人ぼっちだったんだよ」ほほ!
「……そうですか」
「ええ。でも先生のおかげで少し明るくなったし、あの子も目標を持てたので」ほほ!
創作士としてナッセは鍛えられ『異世界へ行って、師匠のような偉大な創作士になりたい』と言う目標を持てた。
もし、そういうのがなければ暗い人生を歩まざるを得なかったのかもしれない。
師事する師匠と目標がなければ、人は真っ直ぐ突き進めないものなのかも知れない……。
「先生の事も知ってるんでしょう? そして同じ創作士だとも」ほほ!
「前からそれを?」
「ううん。私自身が創作士に目覚めた時から全てを悟ったからかもね」ほほ!
創作士に目覚めた事で、物事を察する能力を身に付ける事もある。
母としてのアサリは息子のナッセの事情を察する事ができるようになったのだろうか。
「先生……いえ師匠にも感謝したいねぇ」ほほ!
数個入れられたみかんの袋を買い物カゴに乗せて、母は感慨深そうに笑んでいた。
ヤマミもしっとり笑顔で、未来のお義母さんに和やかだ。
「目標もあって彼女もいる、これほど嬉しい事はないよ……」ほほ!
「それは良かったです」
和やかなままのヤマミはプチトマトをカゴに入れていく。
「後の楽しみは孫に会う事かねぇ……」ほほ!
思わずヤマミはボッと赤面して湯気を立てた。
母は優しくヤマミの背中をポンポン叩いて「頼んだよ」と大らかに笑う。今更ってくらいにヤマミは赤面動揺してモジモジしている。
ナッセと子作り…………!!
本でしか知り得なかったけど……、あんな事やこんな事ッ…………!
嬉し恥ずかしでナッセとの全裸で抱き合いシーンを妄想して、赤面湯気満載で混乱しそうになっていた。
母は若い頃の自分と重ねて、そういう頃もあったんだなぁと懐かしんでいた。
愛する父と初々しい恋愛を重ねて体も重ねて、その上に今の家族ができて……そしてまた次の世代に息子があんな事して孫を産んで繋いでいく……。
その孫もまた誰かと恋してあんな事して、ひ孫を…………。
その頃はもう母としてのアサリは年老いて亡くなってるかもしれない。
だけど亡くなる前に、別れを惜しむナッセとヤマミとその孫の顔を見れられたらこれほど贅沢はないのかもしれない。
「ナッセと上手くやっていきなさいねぇ」ほほ!
「ええ! もちろんです!」
意気投合する母とヤマミ。良い嫁姑の関係になってくれるであろう……。
二人は会計のレジへ進んでいった。
その数ヶ月後に母のおめでたが発覚されるのは、また別の話だった────。
「って、そっちかいっ!!?」