259話「土星大侵攻編③ ヤバいぞ! 地球侵略!」
渦魔王オビエンゾは金輪際填星眼を開眼! ギンッ!
ズズズズズズズ……、と平たい大地が渦を巻いていって徐々に円盤を象っていく。
どんな暴風も受け流す螺旋状の円盤だ。
土星人の大勢の兵が無数の円盤へ乗り込んで、飛び立っていく。
それを見送るカグイヤーン。え?
「わらわはコミケこそが戦争じゃ。許せ……オビエンゾェ……」
ズズズズズズズ、とカグイヤーンは亜空間へバックれたぞ。
彼女の亜空間の一つ、漫画制作空間は数多の原稿用紙と筆記用具が一通り揃えていて、パソコンも兼備。
魔導エアコンもあるので快適。
ポテトや炭酸飲料とかたくさんあるから、飲食は困らない。偏ってるけど気にしない。
「年末のコミケまで間に合うか……? 否! 間に合わせるしかないのだ!」
机に向かってせっせと漫画制作に取り組んでいったぞ。
カキカキカキカキカキカキカキ……!
土星から離れて、広大な宇宙を飛ぶ大きな六機の螺旋円盤は円陣を組んでいる。
その周囲で兵士を搭乗させている小さな螺旋円盤が無数。
「いよいよ地球へ大侵攻だ……!」
目指すは地球へ!
一番大きな螺旋円盤にいる渦魔王は、搭載されている巨大な爆弾を見上げていた。
「まず6個の『時空断裂殺戮兵器』でアメリカ全土を壊滅させる」
モモシリプルは「6個もなぜ?」と聞く。
渦魔王は振り向く。
「五芒星効果だ……」
「はっ!?」
「円陣で組んだ螺旋円盤でアメリカ大陸の中心部に『時空断裂殺戮兵器』を同時に落とす。すると五芒星を描くので、中心に落とした兵器を中心に破壊力は倍増する。威力値にして約6000万だ」
「ろっ、6000万……ッ!!」
星の形が崩れるレベルの数値だ。
「恐らくそれぐらいにはなる……。いや、そうであって欲しい!」
「妄想かよ!」
「……実験してないからな」
「そんなんでよく侵略戦争する気になったな」
モモシリプルは「こいつダメなんじゃね?」と一抹の不安を覚えた。
「と……ともかく、巨大な軍事国家であるアメリカはこれで無力化する。四首領ヘインもなすすべもあるまい。そして各国の士気を落とすのだ……」
「そうなればいいがな」
身震いするほど恐るべき先制攻撃を企てていた。
「今回が初めての作戦! これが上手くいけば他惑星も降伏せざるを得ないだろう!」
「妄想じみた行き当たりばったりな作戦だな」
「止めてくれ。それは俺にグサグサ効く。止めてくれ」
つまり地球は初めての実験台でしかない。
彼ら土星人にとっては地球人が何人死のうとも心など傷まない。むしろ結果が楽しみですらあるのだ。
どれだけの破壊力になるのか。どれだけ多く殺せるか。ウッキウキ!
大量殺戮兵器こと滅亡兵器をいともたやすく投下するえげつない行為をしようとしているのだ!
「この作戦とは別に実戦訓練も大事だ。各国に侵略する事で士気を高め、我が軍の成長を促す。それに星丸ごとの資源と奴隷は美味しいからな。この戦争は一方的な略奪に過ぎん。ふっふっふ……」
「周辺の惑星国家に侵略するもことごとく失敗。逆に総スカン食らってるのは黙ってた方がいいか?」
「……おまえ遠慮ないな」
「事実だろう」
だが挫けぬと拳を震わせる!
「今度こそだ! 何も知らぬ地球が相手なら作戦は絶対上手くいく!」
「狡いな……」
滅亡兵器で地球人の士気を挫いた後、更に攻め込んで殺戮行為を存分に行う!
資源を根こそぎ奪い、地球人を奴隷にして、人身売買の需要として活かす!
これこそ凶悪で非人道的な略奪戦争である!
「はあーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
ふと我に返ってキョロキョロ見渡す。幹部はモモシリプルしかいない。
「カグイヤーンは?」
「とっくにバックれたぞ。コミケに参戦するとかでな」
不機嫌そうにモモシリプルは舌打ち。チッ!
しばし沈黙する二人。
「俺、人望ねーんかい……」
「あると思ったか?」
「これ以上傷を抉らず、ちっとは慰めてくれよぉ…………」
渦魔王は泣きそうになっている。
モモシリプルは「うわ~メンドくせぇ~」と顔を歪ませているぞ。