254話「インドピース篇 ついに日本へ帰還ァ!!」
なんか世界中を巻き込んだ騒動は、インドのカレーフェスによる演出という事で片付けられてしまった。
実際『幸運神』によって何もかもなかった事にされてるからなぁ。
オレたちは終戦後から三日間休暇を取った。毎日カレーだったぞ。
二〇〇九年十二月四日……。
────魔導飛行機でオレたちは日本へ帰還すべき航行中。
オレはヤマミとリョーコと並ぶ席にいるぞ。
「なんつーかアクトが全部片付けた気がするぞ」
「策も練ってたし間違いじゃないわね……」
「あーもー、全く大騒がせだよ! 勝手に巻き込んでおいてー!」
色々あったが、インドでの出来事は映画の世界へ入ったかのような鬼気迫るものだったぞ。
絶望的なまでに強すぎる四首領ダウート、マジでヤバかった。
……正直、アクトがいなかったら勝てなかったぞ。
隣の席でぐっすり寝ているアクトが気になった。
「アクト?」
ダウートを倒した後に死んだように寝てたけど、すぐ回復したし問題ないように見えた。なんか引っかかるぞ……。
城路本家の総統タツロウと次男アッキー。
「ふう……さすがに大変だったわい……」
「ですね。化け物合戦で俺ら完全に足手まといだったし」
燦々輝く太陽、澄み切った青い空、そして真っ白な雲海の上が覗く窓をタツロウは見やる。
「いつまでも分家のナッセ殿にばかり押し付けるものでもないな」
最初っからナッセは強いワケではなかった。
度重なる障害や強敵を前に、幾多の絶望を突きつけられながら仲間と共に乗り越えていったからこそ、あの強さになったのだろう。
だが、裏を返せば分家一人に無茶な事をさせていた事になる。
「……そうだな」
「珍しいな。否定するものと思っていたが……」
神妙に同意するアッキーにタツロウは少し驚く。
「あいつ……四首領に立ち向かってたんだぜ…………」
「うむ。結局勝てなかったが、臆もせず持てうる限りの全力をぶつけていた。……恥ずかしい話、私はびびっていた」
「俺も……」
実際、相対する四首領ダウートは迫力満載で、ガタガタ震えるほどだった。
絶対勝てねぇだろって思うほど絶望が底知れない。
「アクトだけ残って、ようやく勝てたが……」
「ってもナッセたちが後押ししたおかげだろ? それがなきゃ勝てなかった……」
「うむ。分かるようになったな」
アッキーは悔しいのか涙があふれていく。
「俺……何にもできんかった…………。後押しすら…………」
そんなアッキーをタツロウは微笑ましく思い、撫でた。
自分で弱さを認め、それを悔しく思える人は強いと言える。これから人生の指標となって伸びていくだろう。
逆に認めもしなければ、いつまで経っても人は変わりはしない。
「これから強くなれ。私も付き合うぞ」
「はい……!」
アッキーことタツアキはもっと強くなれるだろう。
ジャキガン学院のマジンガ及び、ジャオウ、スピリア、ソージ&ウミノ、カイガンも一緒に航行中だ。
「フハハハハハッ!! この戦いで己の非力と未熟さを思い知ったわい! 世の中は広い! 本当にな!」
マジンガは終始おおらかに笑っていたが、四首領ダウートを相手に何もできなかったのは心底悔しかったはずだ。
それでも表には出さず、豪胆に笑えていた。
「必ずや鍛え直して……成り上がってみせるぞ! フハハッ!」
ジャオウは全身包帯巻いていて、辛うじて両目と逆立つ黒髪が見えてるだけだ。
黒龍を何十匹も吸収合体してたりで色々無茶な事をして、今も癒えていないようだ。
「チッ! くだらん! もう懲り懲りだ」
スピリアはワナワナ震えていた。悔しくてたまらないみたいだぞ。
「この十手指十足指・鎖縛天罰が効かぬとは……。くっ!」
「相手が悪いだろ。こっちの眼力も全く通用しなかったし」
「貴様と一緒にするな!」
「……何言ってんだ? 四首領から見れば同じだろ?」
ジト目のカイガンがため息。
スピリアは「貴様!!」と、重傷ジャオウを踏んでカイガンを縛り上げる。
ドッタンバッタン騒いでいる最中で、ソージとウミノはハートマークの嵐を吹き荒れるぐらい濃厚なベロチューを繰り返していたぞ。
ベロベログチョグチョチュパチュパスポポポポ!
「止めろォ!!」
レキセーンモサ学院のオオガとチササ兄妹、カレン。
「あああああああ!!! 女とイチャイチャねーじゃねーかよぉぉおお!!」
「うっさいだ! しばらく眠っとくだー!」
ギュバババババババッ!!
「グボボバァァッ!」
絶叫するオオガを、イラついたチササが強烈なスクリューボディブローで地獄の睡眠を与えた。ビクンビクン痙攣しているぞ。
「あぁーァ!! アクトかっこよすぎだーァ!!」
カレンはアクトの写真に夢中で目をキラキラ。
なんか知らん内にナッセからアクトへ乗り換えたようだ。
そうなっても不自然じゃないくらい、アクトは本当にカッコいいしな。
ナッセたちが表向きダウートと対立している最中で、策を弄して今日までの結果を導き出した。
一見目立たないようにする冷静さもあるが、相棒の事で激情する熱さもある。
そして誰もが到達し得なかった『万覇羅参』に覚醒し、それは四首領ダウートを打倒するまでに至った。
それにアクトは割とモテる。
……後日、カレンはアクトに告白したが振られたそうだ。
この腹いせでオオガをボッコボコにしたとかしてないとか。
「なんでワシが殴られんだよおおおおおおおっ!!!」
エレーシャと鬼狼クロウ、クリシュナ(城路ギンジ)。
「全てが終わった以上、キロウと一緒に日本で永住できますね」
「おにいちゃん! 楽しかったよー!」
「そうですね。ふふっ」
象の頭をしたエレーシャと狼少年クロウは親子のように微笑み合った。
「……フッ」
クリシュナことギンジはクールぶって笑む。
モテそうな風貌の割に独身童貞。本人は気にしてるとか気にしてないとか。
ちなみにダクライは治ったものの、更に淀みが酷くなったらしくて戦えない体になったみたいだ。
全盛期の肉体に戻れるガヘリス家系能力も万全ではなく、ダウート戦の時点で7割出せたか怪しかったそうだ。
「悔いがない、といえば嘘になるがの……。まぁ、それもまた定め」
弟子を取ろうかな、と前向きに笑ってたようだぞ。
ちなみにリテムは以下のカードを発動して、エジプトへ帰還したZE!
【王の帰還】(速攻魔法カード)
①「リテム」はエジプトへ帰る。
②墓地のこのカードを除外して発動できる。「リテム」はエジプトへ帰る。
③除外ゾーンのこのカードを墓地に戻して発動できる。「リテム」はエジプトへ帰る。
④手札からこのカードを捨てて発動できる。「リテム」はエジプトへ帰る。
夕日で美しく沈む太陽に目が覚めたアクト。
黄昏てて気分的に落ち着く情景。反対方向へ振り向けば、ナッセとヤマミが寄り添って寝入っているのが視界に入る。
「あァ……おやすみだったかァ…………」
相棒に多くの言葉はいらない。
これまで一緒に旅したり戦ってきたり、楽しんだりしてきた。
……それにヤマミとかいう彼女のおかげで、俺がいなくても大丈夫だと安心ァ…………。
二〇〇九年十二月五日……。
日本へ帰った後、アクトに異変が生じたぞ。
「がああああああああッ!!」ゲボゲボゲボアアアア!!
「アクト!?」
「早く回復魔法を!!」
唐突に盛大な血を吐いた後、ぶっ倒れたぞ。
実はダウート戦後から回復はしていなかった。回復したフリをして、でも我慢しきれなくて倒れてしまったのだ。
どうやらアクトは『万覇羅参』に覚醒した反動で再起不能なダメージを全身に受けていた。
こうなっては創作士センターの回復カプセルでも治せなかった。
なので病院へ長期間入院して自然回復を待つ事にしたぞ。
医者はこうも言っていた。
「本当なら、とっくに死んでもおかしくない状態ですよ!」
「まぁ、そうだよな……」
永遠の入院生活も覚悟せねばならない……。
オレは落ち込みまくっていたが、当のアクトは気にしないようだった。
「心配すんなァ……! 相棒さえ無事なら、俺ァ二度と戦えなくなってもいい覚悟だァ……」
ベッドで寝たきりの本人は辛い素振りなど見せず、笑って済ましていた。
そんなアクトを、心身ともに強い男だったと敬意を払わずにいられなかった。
だからこそオレは自分の事のように歯軋りする。
「あの男を……ここで終わらすワケには行かねぇぞ……!」
異世界へ行けば、治せる方法が見つかるかもしれない。
「ヤマミ! 異世界へ行く目的が増えた! 付き合ってくれ!!」
「うん! 喜んで!!」
必ずアクトを治してやっからな、とオレはヤマミと一緒に決意したぞ!
一方、ヤマミの亜空間で……。
「むーッ!! なんで忘れられてんのッ!!」
ヤマミが貯めていたであろう何年分ものスイーツやジュースを食い荒らして、エレナは膨れた腹をさすりながらゲプッと横たわっていた。
~インドピース篇・完~
あとがき
まさかインドピース篇が102話も続くなんて思っても見ませんでしたw
つーことで「~ァ」とか「ドン!!」とか「!!!」とかのネタは終わりですw
最後、アクトが再起不能になったと書かれてるけど、ハイファンタジー編でさくっと復活しちゃってるんですよねぇw
大丈夫w 大丈夫w
そーいや残りの四首領・ローマの教皇エレサどうすっかなw
ではまたまた~!