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242話「インドピース・最終決戦篇⑤ 老兵ァ!!」

 ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!


 ダウートが繰り出せし超大破壊力で、大陸大激震ァ!!

 山脈が粉々に、森林も剥がれ、湖も消し飛び、都市や町が吹き飛び、周囲の海が荒れに荒れた!

 そのせいで数多くの関係ないインド人も甚大な死傷者を出し、阿鼻叫喚地獄に陥ってしまった!


 オオオオオオオオオ……ッッ!!


 しばし数刻ほど煙幕がインド全土を覆い続けていた……。

 晴れると真っ平らになっていたぞ。

 そしてあちこち遠くまで人が散らばっていて、マジンガたちも八武衆(アート・ディコイト)も横たわって微動だにしない。

 アクトとコンドリオンは息を切らしながらも、屈み込んだまま堪えていた。


「アクト!? 死んでなくて……良かった……! だが! やっぱり……!」


 また以前の二の舞! 悠然と立つダウート! 無敵すぎる!



 半裸のオレは掌をかざしたまま、全身をプルプル震わせて満身創痍で立ちこらえる。

 既にヤマミ紋様が消えている。

 やがて変身が解け、ザッと片膝をつく。


「ち……ちくしょう……! めぇったな! 今ので限界きちまったぞ……!」


 ゼェゼェゼェ、荒い息が止まらない。

 ヤマミもリョーコも「大丈夫?」と駆け寄る。無事なのは良かった。


「悪い……。オレはこの通りだ。逃げる体力すら残ってねぇ……。やっぱ挑む事自体ムチャすぎたみてぇだ!」

「ナッセェ!!」

「だから言ったじゃないのー! バカー!」

「わりぃ……」


 ガクッと手で地面を付き、倒れるのを堪えるので精一杯だぞ。

 ヤマミが急いで回復魔法(ナース系)をかけてくれるが焼け石に水だ。



「ほっほ! さすがじゃの……。そろそろ儂の出番かな」

「むっ!」


 なんとダクライがダウートの前にいた! 衣服は所々破れているが依然健在そうだ!


 するとメキメキ、と影に覆われたままダクライの体が蠢き始める。

 オレはビリビリと肌に感じる衝撃に驚く。胸を締め付けてくるような重苦しい威圧。まるで数秒が数十分にも感じるくらい体感が緊張に覆われていく。

 逆にダウートは笑んでいく。


「ほう……?」

「ま、まさかっ!! アクトとやり合った、あの姿!!」


 徐々に大地の震撼が激しくなっていく。

 そう、四首領(ヨンドン)級の威圧。間違いない。


 コオオオオオ、深い呼吸が聞こえる。

 ダクライの体に活性が漲ってくるのが分かる。枯れ果てたはずの老体は徐々に筋肉隆々と往年の肉体を取り戻し始める。白髪だったオールバックは生き生きと赤を帯び、逆立っていく。

 ズン、と(たくま)しい足が大地を踏みしめる。


「それが……貴様の真の姿という事かァ……!」


 滑らかに筋肉隆々な上半身が踊り、腕が残像を伴って舞う。

 顔は若々しい漢として凛々しく引き締められている。ニイッと白い歯を見せ、狂気の双眸を見せた。

 大柄な体格が重厚な雰囲気を醸し出す。


「儂は『ガヘリス家』の末裔(まつえい)。そして一時的に全盛期の肉体へ若返る家系能力。

 それにより、真の強敵と対峙した時に己の最盛期の力で臨めれる!」


 ダクライの背後から聖剣が浮かび上がる。無数の浮く光の刃を周回させている。


「聖・剣・合・体!!」

《御意! 我が力を汝に!》


 ダクライの号令に従い、勢いよく聖剣は背中へ吸い込まれていった。そして溢れ出る膨大なエーテルの放射。周囲に烈風を巻き起こし岩飛礫が吹き飛ぶ。

 オレはハッと見開く。

 なんとダクライがスウッと浮かび、背中からアゲハ蝶の羽を模すように無数の光を伴う刃が並んでいた。

 それは大きく展開されており、まるで竜の翼のように荘厳とした風貌になっていた。


「これが我が誇る聖剣『ラー・ブリュナ』の真の力なり!」


 喜々と鬼のような形相の笑みでダクライは口から白い息を漏らした。


「そうだ! 最期にせめて“神速の黒執事”ダクライと殺り合ってから地球を飛び立つ方が後腐(あとくさ)れなくていいわァ……」

「それは光栄だわい……! だが主が飛び立つは宇宙ではなく、あの世ぞ!」


 二人はフッと掻き消えた!


 ズガゴォォン!!


 ダウートの如意棒とダクライのラー・ブリュナが激しく激突し、黒い稲光を放射状に撒き散らし、地盤が爆ぜたァ!!

 凄まじい烈風と地響きにオレたちは腕で顔を庇う!

 天災と天災がぶつかったかのような激烈な激突!


「うわァ~~~~~~!!」

「一体何モンだァ!? あのじじい!!」

「ダウートと互角に衝突とか、夢でも見てんのかァ~~!?」

 うわああああああああ!!!


 一切の遠慮もなくダクライとダウートは「ああああああああァ!!」と大気震わす咆哮のままに、格闘を繰り返す!!

 如意棒が踊り、無数の光刃が唸り、隙あらば拳が突き!


 ガガガッガガガッガッガッガガガッガガガッガッガッガッガッガガガガッ!!


 耳が痛くなるような衝撃音が鳴り響きながら、両者の激しい戦いは縦横無尽と広大な荒野を駆け抜けていた!

 あちこち大地が爆ぜ、烈風が煙幕を押し流し、稲光が迸っていく!

 ダクライの光刃が如意棒を捌き、拳による鋭い突きがダウートの筋肉隆々とした腹を穿つ!!


「ごハッ!」


 逆にダウートの太い拳がダクライの顔を砕かんと迫るが、鍛え抜かれた手腕による軽やかな捌きで逸らされる!

 ダクライは体術もバケモノだ!

 アクトでもなけりゃ誰も勝てねぇって!


「いいぞ! 互角以上に戦えてる!」

「ってか最初に全滅しそうになった時にやれば良かったのにねー!」

「ダメよ!」


 希望に湧いてきたというのにヤマミはまだ不安げな顔で振っている。


「ガへリスの家系能力って、だだで使えるもんじゃないのよ! 寿命値を減らす事で一時的に全盛期の肉体に作り上げているから!」

「そんな話……」

「えー初耳!」

「知らなくても仕方ない。友夏家(こっち)の事情だから!」


 オレとリョーコは汗を垂らしてヤマミの話を聞いていた。


 つまり、ダクライは寿命を縮めて全盛期の肉体で戦っているのだ。

 シナリ&コハク&モリッカとアクトとの戦いで遺憾無く発揮していたが、その時から命を削る覚悟で戦っていたのか。

 最初のダウート戦で全滅させられそうになった時も“なんで全盛期の肉体に変身しねぇんかな?”って疑問を持っていた。


「……本人も言っていたけど、アクトに敗れてから身体に淀みが生じるようになってる」

「淀み?」

「ええ」


 今もダクライは万全に戦っているようにしか見えない。


「あれか? これで最後みたいな?」

「……分かるの? ともかく、そんな感じ。後一回で儂は満足に戦えなくなるって」

「それが今なのか……?」

「うん。本当はあなたと私との戦いで使いたがってたみたいだけどね」

「えー……」


 リョーコは自分が対象外でホッとしていた。おい!


 縦横無尽に飛び交う光刃をダウートは如意棒を振り回して弾ききっていく!

 その隙を突いて脇に拳を突き刺そうとダクライが攻める!


 ガ ガ ン!!


 再び大地が激しく震える! 烈風が吹き荒び煙幕を煽る!


「ぬ!?」

「いいぞァ……! 愉しくなってきたァ!!」


 なんとダクライの拳を、ダウートはヒジ打ちで止めていた!

 ババッと互い離れ、再び激しく格闘を続ける!


 ガガガッガガガッガッガッガガガッガガガッガッガッガッガッガガ!!


「ダメ! 体力が落ちてきている!」

「マジか!」

「ちょっとヤバイじゃん! この後どうすんのー!?」


 依然余裕そうなダウートとは裏腹に、ダクライは苦い顔で息を切らし始めていた。

 心なしか技の精度も陰りを帯びてきている。

 そして徐々に形勢が傾き始めてきた。ダクライ押され気味。


 やべぇ! 負けちまいそう!

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