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23話「異世界……??」

 海の『洞窟(ダンジョン)』に入ってボスを倒したら奥の穴が光を漏らしてきた。ピカー!

 オレは思わず穴の方へ泳いでいく。ヤマミも「あ、待って」と付いてくる。

 股を締めてるワカメンが緩々(ゆるゆる)に……。すぽっ!


「今だ逃げろー!」ピュー!



 ザパン、と勢い任せに出ると灰色の荒野……。真っ暗な夜景……。


「お、おい!! 見ろ!!」

「なに……これ……!?」


 なんと地平線から白い斑を巻いた青い惑星がデカデカと見えているではありませんか~!?

 改めて見渡せば、灰色の荒野で起伏があってクレーターまである。ここは……。


「月!!?」


 オレたちは呆然としてしまう。


 まさか『洞窟(ダンジョン)』から月に繋がっているとは!?

 あちこち空間を歪曲して、あらゆる場所へ繋がっているのか?

 異世界だけではなく、月にも、そして他の惑星とかにも??


 ワカメン逃げてるので、月面でフ ル チ ン!! ←モザイク入り。



「ククク……、まさかこんな所に来れる創作士(クリエイター)がいるとはなぁ……」


 振り向けば、黒い魔法使いの三角帽子とローブの顔色の悪そうな猫背の子供がヒタヒタ歩み寄ってくる。

 ゾクゾクと悪寒が走る。思わず身構える。冷や汗が顎から滴り落ちる。

 

 コイツかなり強ぇえ…………。

 全力で戦ったとしても勝てるのかぞ……? ぐぐっ!


 でもフ ル チ ン!



「おっと! 止めといた方がいいぜ。別に敵対する理由なんざねぇだろ?」


 不敵な笑みで制止の掌を見せてくる。あとなんか「前隠せ」とボソッと言ってきた気がした。

 そういえば未知の相手に、ヤマミは警戒せず突っ立ったままだ。


「まさか彼氏連れ込んでくるとはよぉ……。しかもクッキーさんの息子ときた。これはまた僥倖(ラッキー)だなぁ」

「ヤマミ! 知り合いか!?」

「ええ。彼はヤミロ。漆黒の魔女の仲間。今は大丈夫と思う。たぶん……」


 半顔でヤマミは頷く。確かに向こうからは殺気も何もない。


「ついてきな。って前隠せバカ」


 ────とりあえずヤミロの後をついていく事にした。フルチンで←重要。

 そしてその(いとま)に、ヤマミが説明してくれた。漆黒の魔女アリエルはヤミロを含む仲間を抱えた裏組織のボス。

 そしてクッキーと対極する魔女。

 悪を志して『洞窟(ダンジョン)』と『魔界オンライン』を運営しているという闇の妖精王でもある。そして妖精王としてのヤマミの親でもある。

 これらは並行世界(パラレルワールド)でオレを斬り刻んだ後にヤマミを連れて行って与えられた情報である。

 …………ん? なんか股涼しいな??


「あっ! やば……!!」

 ワカメン! あんのヤロ~逃げたな~!


 オレは今フルチンに気付いたのだが、情報量多すぎてそれどころじゃなかった。

 誰も気付いてないみたいだし、このまま行くか。←おい!


 股スースーするけど。



「……運営はちと違うな。世界の法則に組み込んであるからなぁ。訂正しておいてくれや。あと堂々とすんな」

「法則に組み込む??」

「クッキー同様に『全界網羅創造陣(セフィロト)』で組み込んで、この世界の崩壊タイムリミットを延ばしてるのよ!」

「崩壊? どういう事だぞ? ってか言っていいんかい?」


 ヤミロは「彼氏の方は頭悪りぃな……。まぁクッキーが親じゃ仕方ねぇか」とククク含み笑いする。

 あんのヤロー! バカって言いやがったー!! ←フルチン。


「ナッセ。ファンタジー世界と現実世界はお互い法則が違うから、無理に融合すると対消滅みたいになって崩壊していくの。それを防ぐ為に通気口みたいなので繋いで緩和しているわ。だから互いに文化が混ざったりしてたでしょう?」


 オレはハッと思い返す。

 アクトと出会ってマイシと戦った異世界は、こちらの世界の文化も混ざってて言語が通じていた。何故か異世界人と意思疎通が自然とできてて不自然なくらい融通が利いていた。

 死んだはずのエレナも異世界転移してたし、色々おかしい事が起きていた。

 入学したての頃に『空想(ファンタジー)』が加速しているとかなんとか言ってたよな…………。


「そぉゆう事だ。感謝して欲しいくらいだぜ」

「ああ、うん。ありがとうございます」


 オレがペコリと頭を下げると、ヤミロは「素直過ぎんな……」と頬に汗を垂らす。



「あらぁ~客ぅ?」


 その声にゾワッと最大限に身の毛がよだった。ワナワナ震えていく。忘れもしねぇ……!


 漆黒のドレスを纏い、煤けた金髪に黒い頭巾。毒を含んでそうな艶かしい美人顔。滑らかに腰を揺らしながら麗しく振舞う。

 全身から黒いイバラのような邪悪な黒いフォースがズズズズと蠢いている。


「漆黒の魔女アリエルッ!!」

「はろぉ~お! いかにもぉ~」


 以前、アクトと一緒に切り刻まれてヤマミをさらわれた事があった。その私怨が湧き上がってきた。

 オレは激情をあらわに、足元から花畑を広げながら、花吹雪を伴う凄まじいフォースを噴き上げて辺りを震わせていく。ゴゴゴゴゴ……!!

 背中から展開された複数の花弁が翼のように舞う。フルチンで←重要。


「へぇ~クッキーの息子もここまで成長してるなんてねぇ~」

「ああ……、思った以上だぜ……」


 オレはアリエルを睨み、地を蹴って岩盤は爆発。ズゴッと地響き。


「あの時はッ!! このやろーッ!!!」


 嵐がごとく怒りのままに太陽の剣(サンライトセイバー)を振るう。が、鋭い剣閃がアリエルから逸れる。なに!?

 過ぎ去った衝撃波が月面を斬り裂き、轟音を伴って地平線の彼方まで飛沫と共に岩盤を捲れあげて大きな亀裂が走った。

 すかさず切り返して横薙ぎ、またもやアリエルを逸れる。

「くそ!」

 それでも苛烈な剣戟を繰り返して無数の剣閃が縦横無尽と交錯。その余波で周囲の月面が荒らされ、岩盤の欠片がズゴーンバゴーン飛び散らされていく。

 既に月の形が変わるほどに破壊し尽くされていった。ゴゴゴ!!


「おおおおおおッ!!! 流星進撃(メテオラン)ッ!!」


 背後に天の川描く夜景の造形付加と共に、一撃必殺を何十発も撃ち込む。それでもアリエルに掠りもせず、月面が滅茶苦茶に穿り返されていくだけだ。

 その時、オレは見た。アリエルの周囲をオーロラのような淡い帯の波がユラユラ囲んでいた。螺旋状に揺らめいてて美しい。


「あ、あの……ヤツを包んでいるオーロラはッ!?」

「敵のいかな攻撃をも逸らす『オーロラヴェール』よぉ」


 念力組手とはまた違う技術……??

 クッキーと同等でもあり、対極の魔女……。これはその力の一端なのか?


「落ち着きなさぁい」


 目の前にデコピンが!? オレの額がバチンと弾かれる!

 凄まじい威力に「ぐわあああああ!!!」と転がるように吹っ飛ばされ、それに伴って月面が抉れていく。

 ズザザザザザ……、粉塵を巻き上げ、破片を飛び散らせ、オレは転がり続ける。

 気付けば変身が解けてグッタリ横たわっていた。フルチンで←重要。


「ナッセ!!」


 クレーターを降りて駆け寄ってくるヤマミが微かに視界に映る。いてぇ……!



 ため息をつくアリエル。ヤミロは「ククク」と愉悦そうだ。


「あの時は謝るわぁ。まぁクッキーのバカがやらかした因子(いんし)をチャラにする為だったからねぇ~」


 アリエルが言うに、なんかメカニワトーリの件でオレが死なないままクッキーが量子世界(りょうしせかい)へワープしたもんだから、そのミスを払拭するべき改めて殺したって事だった。

 ヤマミに回復してもらって、オレは「ふう」と身を起こした。


 気付けば黒い海パンが装着されていた。ハッ! いつの間に!


「それサービスよぉ~」

「あ、ありがてぇ!! 女神さまだー!! 恩に着るぞーっ!!」

「……調子狂うわねぇ~。さすがあのバカの息子かしらねぇ」


 感激して拝み倒すオレに、アリエルはジト目でため息。

 なんかヤマミが「見納めはここまでね……」とボソッと。ん?


 しかし、やっぱスッゲー強ぇえ…………!!

 オレだって妖精王に覚醒して、かなり強くなってんのに……!

 さすが上には上がいるって事かぞ…………。


「まだ今は敵わねぇか……」

「……ここで話するのもなんだからぁ~、場所変えるわよぉ~」


 突如、灰色の地面から黒い渦潮みたいなのがバクンとオレたちを呑み込んだ。




 気付けば、基地の中みたいな金属に囲まれたようなSFみたいな世界へ誘われた。

 周囲は薄暗くて金属の壁に電子路みたいなのが屈折しながらラインを描いていて、断続的に光が走っている。太陽系を模した立体映像が上の方ででっかく映し出されていた。その更に上で時計がカッチコッチ時を刻んでいた。


「これも『洞窟(ダンジョン)』システムの……?」

「ここ来た事があるのか?」

「ええ……。でもこの場所はまだ…………」


 ヤマミは首を振る。知らない場所らしいな……。


「ふふふ。ちょうどいいわぁ~、貴方たちに『未来』を見せたくてねぇ~」


 オレたちは「ええっ!?」と目を丸くした。未来を……??

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