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22話「海の『洞窟』へいざ!」

 ただっ広い海上でポツンと海丘があって、更に洞窟(ダンジョン)の穴が空いているぞ。


「こんなところにあるとは思ってなかったわ」

「ああ……」


 見たところ、(きり)状の岩山が突き出たみたいな感じで水面続きの穴が空いている。

 近付いてみると一階建ての小屋くらいの大きさだ。

 改めて周囲の風景を見渡すと、砂浜というか陸地は遥か遠い。あとは広大な海面と入道雲の青空だけだ。


「入ってみるか?」とチラッと目配せ。


「誰も入った事なさそうね……」

「たぶんな……」

「入ってみましょ」


 おしきた!! 二人で探検デートだ──っ!


 穴へ差し掛かると水面に沈むかのように波紋が広がる。空間の境界を潜ってるって感じだぞ。

 内部はやや広いブロック状の内部空洞を基本に無作為の岩壁とかで自然を(よそお)ってる感じ。そして出入り口続きで水面が続いている。しかしこの一つの広間(フロア)だけで終わっている。


「どこにも通路とかないなぞ?」


 隠し扉とかないかと思って、その辺の岩壁をコツコツ小突く。

 しかしどこにもその気配はない。


「そこから潜るんじゃないの?」


 ヤマミが下の方へ指差している。

 確かに中心部に広い湖のようになっている。それ以外は岩壁しかない。


「テキオーラ使いましょ」

「ああ、確か『生物が生存できない環境でも適応できるようになれる魔法』だったな」

「良かった忘れてないわね。……そう、極寒で気圧低い高山、息ができない水の中など、極端に言えば宇宙空間でも普段通りに生存活動が可能な効力よ……」


 なんか壊れ魔法な気もしなくないが……。


 オレとヤマミは「テキオーラ!」と唱え、暖かい光が全身を包んで染み込んでいく。互いに頷いて、足からズブズブと水面に沈んでいく。腰、胸、首と沈んでいって顔まで潜っていく。ゴポゴポ気泡を巻き起こしながら水の中へ入り切ると肺の中の空気が全部出ていってしまった。

 でも息ができる。海水が肺に入り込んでも異物感で(せき)したりはしない。……不思議だ。


「ってか海水って塩辛いはずなのに、全然塩味とか何も感じないぞ」

「過剰塩分で死なないのもテキオーラの特徴ね」

「すっげぇな!?」


 ってか水の中で視界良好で普通に会話できてるし!

 やっぱ壊れ魔法じゃんか!! 一体どんな理屈でそうなってるんだよ!


 洞窟(ダンジョン)の中の水中は、なんと妙に明るくて青くてカラフルなサンゴ礁が岩壁にこびりついていた。何故か野生の魚が泳いでいるぞ。

 ……そういやサメ君に食わせたクラゲも普通にエンカウントに巻き込まれてたっけ?

 創作士(クリエイター)しかエンカウント空間には入れないと思ってたけど、入れる判定分かんない。


 なんと殺意が明確の魚の群れが襲って来るぞ。

 イワシぐらいの小魚だが数百匹もの大群。まるでひとかたまりで大きなモンスターにも錯覚させられる。


【ギョギョギョ】(水族)

 威力値:240|(集団では約1000~2000)

 単体では屈指の最弱。特記すべきは数百匹もの大群で出てくる事。侮るとチクチク蓄積してくるダメージでやられるぞ。長引かせず範囲攻撃でしとめよう。下級下位種。


「ふんっ!」


 居合抜きのようなワンパンで巻き起こした物凄い海流に呑まれて「ギョギョギョギョォォー!」と全滅。

 ヤマミが「きゃー」とこっちへしがみついて、こっちも海流に巻き込まれそうになった。収まるまでサンゴ礁に掴まってやり過ごした。


 ……やっべぇ。こっちまで流されかけたや。


「か、隠した方がいいわよ!!」


 顔を赤らめているヤマミがやや下へ指差しているので、視線を追いかけたらオレすっぽんぽん!

 思わず顔が熱くなって股を両手で隠す。

 さっきの海流で海パンが脱げたらしいな。畜生どこだ!


「や……ヤマミッ! どこかへ流れたか見たかッ!?」

「さ、さぁ? どこかしらね」


 なんかヤマミが妙に目を泳がせているが、今はそれどころじゃねぇ!

 見渡すも海パン見つからない!! まるで異次元へ吸い込まれたかのように、忽然と消えたみてーだぞ!! ぐわー失敗したー!!


 なんとヒラヒラとワカメが流れてきたぞ。

 いやモンスターだ!!


【ワカメン】(水族)

 威力値:300

 普段は海の底でワカメに紛れて待機している。獲物が来ると俊敏に飛び出してグルグル巻きにして砕く。ユニークな目と口が特徴。弱い。下級下位種。



「よし!! だいじょうぶ!」


 捕まえたワカメンをオレの股にふんどしのように締めて装着!

 殺すと煙になるので、強引に縛ってるぞ。前垂れには顔面に当たる部分で目と口があるぞ。なんかジタバタしてるけど気にならない。

 なんか「男はイヤだー」と喚いてたようだけど、キュッと軽く締めて分からせた。



 その後、探索していくと内部の構成が分かってきた。

 ほとんどは水中フロアが多いが、空洞フロアもちらほらある。安全地帯(セーフティゾーン)は必ず空洞フロアだ。


 サンゴ礁だけじゃなく、水没した沈没船など装飾が細かい。


【ヤドウバイ】(水族)

 威力値:3000

 ヤドカリっぽいモンスター。気に入ったカラを見つけると強引に奪う。鈍重だが、グイーンと伸びる腕に無骨なハサミによる攻撃は強い。下級中位種。


【ヒェラタイ】(水族)

 威力値:3400

 青いタイ。氷のトゲを飛ばす氷魔法ヒェラを使ってくる。集団で行動する事が多い。下級中位種。


【おばけイソギンチャク】(水族)

 威力値:4100

 イルカをも丸呑みできるほどの巨大なイソギンチャク。普段は触手をユラユラさせているが、獲物が近づくと触手をグイーンと伸ばして絡め取ってくるぞ。下級中位種。


【タココゴン】(水族)

 威力値:6500

 海底を這う巨大な赤いタコ。目が前後左右に複数あるので死角がない。黒墨を吹っかけて目くらましする。強力な触手に捕まると絞め殺される事例多し。名付け親はふざけてるとしか思えない。下級上位種。


【エビメーン】(水族)

 威力値:5600

 エビがそのまま人型になった感じ。人間と同じ大きさで二足歩行で立つ事もできる。主に集団で行動する。知能が高く魔法を使うのもいる。両ハサミと尾で攻撃する。下級中位種。


 ザコモンスターは全然問題なかった。

 やはり下手に衝撃波を巻き起こさず『弓兵(アーチャー)』のフォトンアローなどで射抜く方がやりやすかった。接近戦は光のナイフで。

 ヤマミは水中という事で黒い小人が縦横無尽に泳ぎ回って敵を仕留めていくから、一番戦いやすいなぞ。



 なんか広大なフロアまで行くと、大きな海賊船を住処(すみか)にすっごく巨大なイカがボスとして現れた!

 海底には巨大なイカを中心に骨がいっぱい散らばっていた。数百人ぐらいは食ってるかも知れないぞ。

 ってか、ここに人が多く来てるみたいなミスリードだなぞ。これも装飾(かざり)


【残虐王イカ】(水族)

 威力値:27000

 クジラのように超巨大なダイオウイカ。全体的に赤みを帯びている。無数の触手は素早く力が強い。クジラさえ一瞬にして絞め殺す事ができる。性格はとても残虐で女好き。男は即食い殺し、女は骨砕いたり手足をもいだりでジワジワ弄んで殺す。中級上位種。


「ギヘヘヘ! 久々に来たのが二人だけとは……いささか物足りぬな! 男の方はすぐ食って、女は水着引っペがして人形遊びするぞぉ~」

「おまえ喋れるのかぞ?」

「は? 男は黙って死ねよ! 不愉快だ! 万死に値する!」


 丸太ほどの太い触手をドババババと嵐のように振るってきた。しかし突如ヤマミの『偶像化(アイドラ)』が恐ろしい威圧を漲らせて割り込んできて、瞬時に残虐王イカの顔面に杖でバキャッと殴りつける。

「はごっ!?」

 その強烈な一撃で残虐王イカは後方へ吹っ飛ばされて海賊船をボカーンと大破させた。それを追いかけてヤマミは『偶像化(アイドラ)』でボコスカ殴り始める。苛烈なフクロ叩きだ。


彼氏(ナッセ)に『死ね』言うの、どの口────ッ!?」

「ギャエ────ッ!!!」


 流石に堪らず、残虐王イカは涙目で「助けて助けてーもうしませんもうしません」と必死に命乞いするが、構わず杖でガンガンタコ殴り止まない。


「ナッセはその銀髪と可愛いイケメン童顔は、日中見ててウットリして飽きないスマイル! 更に青年ながら無垢な少年のようなショタの体付きは欲情を唆らせてくれる魅力が輝く! それでいて素っ気ないやる気のなさそうな性格に見えるも、いざという時は強気で頑張る一途な面でギャップ惚れ惚れするしかないっ! いつもいつも抱きしめて寝てキスをしちゃいたいくらい渇望が押し寄せてくる、この私の気持ちも知らないでっ!!」


 恐ろしい剣幕のヤマミの熱弁とタコ殴りに、やがて残虐王イカの触手ピクピク痙攣。ほどなくグッタリ。


「あ……あの……ヤマミ……?」

「フン! それに懲りたら猛省する事ね……」


 息絶えてプカプカしてる残虐王イカ、ばぼーんと大爆発。



 ヤマミの怒り怖ぇえ……。

 つか、いつもオレの事そう思っていたのかぞ? ってかこれほぼストー……、いや何も考えない事にするぞ。思考放棄放棄。

 元が極悪人とはいえ、これ絶対トラウマになっただろうな。くわばらくわばら。


「もう終わらせたわ!!」キリッ!

「お……おう……!?」


 すると奥の穴がピカーと光を漏らしてきた!? まさか異世界??

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