200話「インドピース・大決戦篇⑪ 夢ァ!」
アクトの放った黒蛇道を喰らい、ラジュタは頬を殴られて吹っ飛ぶ! 白目をひん剥き吐血ァ!
そのままバゴーンとインド門へ激突ァ!
「……確かにあの頃よりも強くなってきたがなァ、やっぱ心の芯は見る影もなく弱くなっとるわァ」
呆れるアクトは剣を肩に乗せた。
ラジュタは呻きながらもガレキをのかして立ち上がる。額からも血が流れて地面に滴り落ちている。
ふーふー息切れしてアクトを睨みつけていた。
「ダウートに頼ってばかりで思考放棄で生きてりゃなァ、夢も何もねェわ」
「なんだとォォォオオ!!?」
ラジュタは激昂し、稲光を纏ってアクトへ斬りかかる!
マッハを超えた剣戟でさえ、アクトは刀を振るい続けて捌ききっている! まるでナッセのようにしぶどく食らいつくかのようだ!
万覇羅弐でやっているラジュタにとっては信じられない!
「ぬう! 全てにおいて私が勝っているというのにィィィィ!?」
「その認識間違ってねェよ? 本当なら圧倒されて俺ァとっくにボロゾーキンになってらァ」
正々飯綱で真正面からの斬りつけをアクトは横に動くだけでかわす。大地をズッゴーンと地平線まで割る。
続けてラジュタは狭飯綱で左右からの挟撃を喰らわす。
すると逆にアクトはラジュタの前へ迫った!?
「心剣流・紅蓮斬ァ!!」
バゴォン!!
「!!!」
業火で燃える刀を振るってラジュタを力任せに地面に叩き伏せたァ!!
「が……はっ!?」
またもや信じられない! アクトに一太刀も浴びせられない!?
しかも初歩的な技で打ち負かされた!?
「奇剣流・足奪飯綱!!」
アクトの足を刈り取るかのような電撃の斬撃を見舞うが、逆に太刀筋を踏まれて止められたァ!?
ラジュタは「な……!?」と冷や汗タラタラで見上げる。
「オメェが天才的剣技ァ持っているのは認めるよ? だがなァ、弱い者イジメみてぇな事して強くなったんじゃァな……、今の万覇羅にすら勝てねェわ」
「なんだと!! 弱い敵から倒すのが戦略的に適っている! 格上と戦い、負けでもしたら全てが無意味になるリスクを背負う! 着実に経験を積んで強くなれば、格上すら弱い奴に格下げよ!」
「間違ってねェよ。それはァ」
「ぬう?」
まさかの肯定にラジュタは驚くしかない。
剣を踏まれて地べた這いずるラジュタをアクトは蹴り上げた。そのままインド門の上部へ激突してバゴーン!
ガラガラと破片とともに床へ落下していく。
「だがな、薄っぺらいオメェが語っても卑怯者にしか聞こえねェわァ!」
「薄っぺらいだとッ!?」
「強くなりたい為の夢とか信念とか、心にシッカリ据えてねェとな」
「下らん! そんなもの戯言だァァァ!!」
ラジュタにとっては心に響かない言葉。そんな下らない事に振り回されるアクトが許せられない。
なにより卑怯者と罵って自尊心を傷つけるのが許せん。
これまで一番最適で正しい道を進んだ自分こそが正義であり、真の強者として信じ続けてきた故に!
「そう思ってるんなら勝てやしねェよ! 俺にも友にもなァ!」
アクトは剣の切っ先を突き出し、ニッと笑う。
その姿がオーウデーンに重なるようでラジュタの怒りを再沸騰を誘ったぞ。
「貴様ァ!! その卑しい笑みァァァァl!! 愚弄を繰り返すなど許せんッ!!」
ラジュタは剣を掲げて莫大な雷を周囲から集めて、バリバリババアと稲光が暴れまわる!
大地を震わせ、なおも蓄電を繰り返す!
全てを消し飛ばさんとラジュタは白目憤怒の形相でアクトを睨み据え!
「黄雷奇剣流奥義・大爆雷飯綱────ッ!!!」
剣の切っ先をアクトに向けて、膨大な電撃による刀剣波を放つ!
大地を爆発させ、軌道上の床をも抉り突き進む!
「……心剣流・酒呑華!」
アクトは酒瓶を手に酒を飲み喰らいながら、なんの変哲もない斬撃を飛ばす!
「なんだッ!? そんなもの涼風も同然ッ!! かき消してくれるわァ!!」
しかしその斬撃はラジュタの膨大な雷とぶつかるや否や、喰らい尽くすように吸収して大きくなっていく!
莫大な量だけあって、極大化していく斬撃が逆にラジュタを襲う!
驚愕するラジュタを真っ白な閃光が包む!
ドゴオォォン!!
「!!!!!」
インド門をすら粉々に吹き飛ぶほどの衝撃波が荒れ狂って爆ぜたァ!!
ついでに結界の媒介である『宮殿境門』も粉々に!
「相手のエネルギーが多ければ多いほど、それを吸収する斬撃の技だァ……。酒を飲む事で、まどろむ酔いを心髄に溶け込ませて綿密にコントロールして刀に流す相当難しい剣技だから、滅多に使いたかァねェがな」
煙幕が晴れると、ラジュタが仰向けで血塗れになっていた。
「うぐ……! な、なぜだ……!?」
「この際、言ってやろうかァ? オメェはなにか信念のようなものを貫ける強さを、心に持ってねェ! 俺の友どもは『異世界へワクワクするような冒険がしたい』や『斧女子を普及させたい』と夢を叶える為に、死闘を重ねて戦地をくぐり抜けて来れたんだ。オメェからしたら下らねェ夢だろうがなァ……」
ラジュタは顔だけでも起き上がらせてアクトを睨む。
「てめぇは……一体何の夢を!?」
「こっちも下んねェ夢さ! 『夢を目指す親友を命懸けで守ってやろう』ってなァ!」
ドン!
「!!?」
滲み出す芯の強さをラジュタは感じた気がした。
アクトは刀を鞘に収め、ニッと笑う。
「オメェの夢はなんだァ?」
「……くっ!」
ラジュタは答えられなかった。
それもその筈、最強に強い四首領ダウートの『如来王におれはなる』に協力して、おこぼれをもらってるだけに過ぎなかったからだ。
それが一番安全で、一番楽で、一番何も考えずに済むのだから……。
「そうか……、私は“自分の夢を放棄した”から、弱いのだな」
「持っていたら、俺ァ万覇羅弐やっててもテメェに手こずってたわ」
「っち!」
ラジュタは涙を流し、心底悔しいと感情を抱いた。
あとがき
※ボツになったヤツねw
悔しいあまりラジュタはふよふよ浮き上がっていって体を丸めていって、木を生やす浮遊城へと変化したぞ。
ド ン!
「天空の城ラ●ュタじゃねーかァァァァ!! バルスァァァ!」